【中西庄次郎JA徳島中央会会長】農業・JA再興へ3つの風吹かす<JA全中会長候補者所信説明会>2020年6月18日
JA全中会長候補者の所信説明会が6月18日に開かれた。立候補者は五十音順に所信を話した。以下は中西氏の所信。
中西庄次郎JA徳島中央会会長
農業、JAを取り巻く内外の環境情勢は大きく変わり、現下の農業、JA経営は大変厳しい状況だ。JAグループは変化に機敏に対応し、危機を乗り越えていかなければならない。日本農業の再興とにぎわいのある地域社会のためにJAグループはどこよりも汗をかかなければならない。
そのためにも全中には現状突破の旗を高々と掲げる責務がある。私はその旗を力の限り振り、風を起こすべく立候補を決意した。
「常に何事にも挑戦と改革、尽きることなし」、これが私の行動の原点であり、揺るがぬ信念でもある。これからの3年間、積極果敢な挑戦によりJAの存在価値のさらなる向上と農業所得の増大、豊かな地域社会の実現に取り組む。そのために農業、JA再興に向けて3つの風を吹かす。
◇ ◇
第1の風は農業に国民世論の風を吹かす、である。われわれJAグループは国民の食卓に安全で安心な農畜産物を子どもや孫の代々まで安定的に届ける使命がある。そのためには国民のみなさんに今一度食の大切さ、生産者の苦労、収穫の喜びを訴え、農業の現状や課題についてさらなる理解をいただく必要がある。
また、新たな食料・農業・農村基本計画ができ、これより日本農業の実現、食料安全保障、食料自給率向上について国民的課題と認識していただく必要がある。われわれが言い続けてきた、日本農業を支えてきた中山間地域や家族の重要さが基本計画に盛り込まれた。北海道から沖縄まで全国津々浦々の中山間地域によって国土と環境とふるさとが保たれてきた。そこをしっかり守っていかなければ地方は元気にならない。今後、10年間の取り組み如何にわが国の食と農業と農村の将来がかかっていると認識している。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により多数の海外諸国が食料の輸出を止めた。国民の心のなかには自給率37%の日本が本当に国民の食料を賄うことができるのか、そうした大きな不安が生じたことは間違いない。
日本農業を再興するためにはJAグループの力だけでなく広く産官学の上に林業、漁業、生協、医療、そして消費者団体が一体となって考える場所が必要だと感じている。このため各界各層の参画を得て「協同の輪フォーラム」を設立し、農業や食料問題、そして食農教育について議論を進めたいと思っている。あらゆる業界が一体となり国産の農畜水産物愛用運動を含め、広く国民的運動として展開していく。日本全体で農業を盛り上げていく攻めの広報運動に取り組む。
◇ ◇
農協改革に現場の風を吹かす、これが第2の風だ。全国584JAの声を全国組織に送り込み、事業運営に反映させる。そのため全国のJAで規模を問わず自己改革を実践し先進的な取り組みをしている代表者に集まっていただける場を作る。率直な批判も含めてさまざま提言や要望を賜りたいと思っている。
たとえば長野県のJA上伊那では、他業態との提携によるインショップを展開し、幅広く組合員のニーズに対応できる業態を構築している。兵庫県のJA兵庫みらいでは施設アスパラガスの産地化に向けて5ヘクタール、1億円の目標にJAの職員自らが研究、普及を進めている。そのほかJA岩手ふるさと、JA清水、JAながさき県央、JAあいらなど多くのJAで汗を流し特色ある自己改革が実践されている。全国各地のJAの英知、ノウハウ、アイデア、人材を集積し共有できる場を設け、自己改革実践へのエネルギーとしていく。
JA経営は今後、信用共済事業の一層の減収、減益が現実的になってくる。営農経済事業によって農業経営と組合員対策を強化しなければJAとしての役割を発揮できない。第一線の現場で苦労している全国のJAのみなさんとともにしっかりと組合員の声に耳を傾け改革を着実に前進させていきたいと思っている。
◇ ◇
第3の風は、農協組織に刷新の風を吹かす、である。このたび全中を皮切りに全国連組織の役員定年年齢が引き上げられた。全中の理事会でも納得する説明もなく不透明感が残っている。今一度、全国のJAから幅広い声を聞き、ゼロベースで丁寧かつ慎重に審議する場を設ける。そして次の世代を担う有為の人材に広く門戸を開きJA組織が常に刷新される道筋を示していく。また、全中のガバナンスについても見直しを行う。有能でもっともっと改革を前に進めたいという職員も数多くいる。積極的な登用や役員理事選出方法の見直し、外部有識者の活用も含め新しい機構体制の確立に取り組む。
一方、准組合員の問題については与党公約で組合員の判断によるとされた。准組合員を地域のパートナーであるとの位置づけを丁寧に説明するとともに、協同組合のあり方や意義についても認識を広げ政府・与党の理解を得て事業利用規制を阻止する。
農業、農村、そしてJAは多くの課題を抱えている。全国584JA、そして系統組織一体の新たな発想、工夫を取り入れた挑戦が地方を元気にしている。そういう風を起こすことが私に課せられた使命である。3つの風を農業とJAに吹き込む。そのために立候補した。全中は変化しなければならない。このままではますます求心力が低下する。全中が改革の最前線に立って全力で旗を振らなければならない。現場の第一線で活躍している全国584JAと一緒になって前へ前へ進もう。
(関連記事)
・【速報】JA全中会長候補者所信説明会(20.6.18)
・【中家徹JA和歌山中央会会長】現場実態をふまえ不断の自己改革<JA全中会長候補者所信説明会>(20.6.18)
・全中会長 中家氏へ JA全中役員推薦会議が推薦(20.07.03)
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