JA幕別町など農業分野は3事業に助成「農林水産業みらい基金2020年度」2020年12月17日
農林水産業みらい基金は、2020年度の助成対象事業として8事業を決定。農業分野からは、(株)さかうえ、農匠ナビ(株)、JA幕別町の3事業が選ばれた。
助成の対象となったJA幕別町のレタス生産のほ場
「農林水産業みらい基金2020年度」は、農林水産業と食と地域のくらしへ貢献しようと、前例にとらわれず創意工夫ある取り組みで、課題の克服に挑戦している地域の農林水産業者を後押しするための助成活動を行っている。
今回の募集は、6月3日から7月31日にかけて一般公募を行い、全国各地から計147件が応募。その中から厳正な審査の結果、2020年度の助成対象事業として計8件、助成総額7億6052万円が選ばれた。
農業分野で助成対象となった事業は次の3事業。
◎2020年度助成決定事業
■助成先1(農業)
事業主体:株式会社さかうえ
プロジェクト名:地域の未来を支えるアグリバレー構想
事業地:鹿児島県志布志市
・ピーマン等の野菜や牧草飼料等の生産を中心に行っている農業法人。これまで、ピーマン栽培についてビジネスモデルを構築し、就農を希望する人材を社内で育成し独立支援も行ってきた。
・プロジェクトは、地域で課題となっている耕作放棄地を肉牛の放牧地として活用するため、技術の活用により、低コストで黒毛和牛を育成する新たな畜産ビジネスモデルを構築。また、同社内で人材を育成し、ピーマン同様、モデルの横展開も図る取り組み。
・放牧は、牛舎での肥育と比較して、必ずしも肥育の効率が良くないこと、細かな生産性の管理がしづらいこと等が課題だったが、同事業では、大学と連携し、胎児期や新生児期の栄養管理により体質を制御する「代謝プログラミング」を施すことで、肉質・肉量の向上を図る。また、IoTを活用した飼養管理の効率化を図る。
・同社が中心となり、放牧による肥育牛生産だけでなく、健康志向による嗜好性の変化も捉えた赤身肉のマーケット拡大や人材育成についても取り組むことで、地域の新たな産業づくり、耕作放棄地解消、そして地域や世代を超えた波及をめざす。
■助成先2(農業)
事業主体:農匠ナビ株式会社
プロジェクト名:農匠技術開発プラットフォーム構築-農家目線の次世代稲作イノベーションを目指して-
事業地:滋賀県彦根市、茨城県龍ヶ崎市ほか
・水管理の改善に繋がる自動給水機の開発等を農家目線で行うため、大規模な稲作農業法人を中心に立ち上げられた株式会社。
・稲作における水管理の重要性は知られているが、全国の7割が、パイプラインのない開水路水田となっており、用水路の形状や給水方法が地域によって区々であることや、自動給水機の導入コストがボトルネックとなり、普及が進んでいない状況。
・同プロジェクトは、当社が全国の稲作経営者をはじめ、大学・行政・JAと連携して、全国の多様なほ場の状況に対応できるような自動給水機の汎用化・低コスト化を図る。また、自動給水機使用や水管理のノウハウを全国から集積し、可視化することで、「農匠技術開発プラットフォーム」を構築する。
・今後、担い手への集約化や生産委託が進むと、分散した多くのほ場を管理する必要性が増し、水管理の省力化・高度化の重要性はますます高まることが想定される。自動給水機の普及に加え、「農匠技術開発プラットフォーム」の構築により、水管理にかかるノウハウを共有できるようにすることで、次世代の後継者育成にも貢献することをめざす。
■助成先3(農業)
事業主体:JA幕別町
プロジェクト名:レタス生産から販売までトータルリモートモニタリングを実現し、高品質・安定出荷による所得向上実証プロジェクト
事業地:北海道中川郡幕別町
・同JA管内では、葉物野菜をはじめとした多品目の作物が生産されている。
・同JAは、沖縄の販売先に対し、レタスなどの葉物野菜を出荷しているが、輸送には6日間を要す。同地域では、厳密な出荷ルールを定めて品質を吟味したレタスを出荷しているが、それでも着荷後に商品とならないロスが発生し、費用をかけて廃棄されるレタスもある状況。
・同事業は、「トータルリモートモニタリングシステム」を活用し、生産者とJA、販売先を繋ぐ取り組み。同システムにより、販売先にとっては、産地から播種・定植の状況や生育予測等の状況など、青果流通に有益な情報を得ることができるようになるほか、生産地においては、販売先から着荷時の品質情報のフィードバックを受け、販売先の実需に応じた品質管理を行うべく、PDCAを回すことが可能になる。
・生産者、JA、販売先がそれぞれ必要な情報を共有しつつ、目線を合わせることで、より高品質な農産物の安定供給を可能にし、ロスの削減や生産者所得向上に繋げることをめざす。
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