「合理的価格形成」で農協系統に期待 農水省経営局・新川元康協同組織課長講演 新世紀JA研究会(上)2024年11月7日
新世紀JA研究会は10月31日、11月1日の両日、東京都内のJA東京アグリパークで秋季セミナーを開いた。講演した農水省経営局・新川元康協同組織課長は講演前半で、農協改革の経緯をたどり、収支改善の課題と、「合理的価格形成」に向けた農協系統への期待を語った。
講演テーマは「JAの事業・経営の現状と課題」。新川課長は、農協改革(自己改革)の経緯、足元の情勢(食料・農業・農村基本法改正法と系統への期待)、総合農協の現状と課題、JAグループのみなさまにお伝えしたいこと、という流れで講演を進めた。
系統の自己改革を前提に指導監督
2014年6月、政府・与党とりまとめがなされ農協改革が打ち出された。JAグループは15年10月のJA全国大会で「創造的自己改革」を決議し、農協系統の自己改革がスタート、16年4月改正農協法が施行された。19年5月まで5年間の「農協改革集中推進期間」を経た21年、閣議決定された規制改革実施計画のなかで、JAグループの自己改革の取り組みが評価された。
新川課長は経緯をこのようにまとめ、「農水省はJAグループによる自己改革実践サイクルを前提として指導監督をしていく」とし、「『協同活動と総合事業の好循環』という第30回JA全国大会決議の内容に沿って、自己改革を着実に進めていっていただければ」と述べた。
自己改革の実践サイクルについて新川課長は、規制改革実施計画を踏まえた農水省の農協監督指針では、①農協が自己改革を実施していくため、組合員との徹底した対話を通し組合員の意見・要望をしっかり踏まえていく、②農業者の所得向上に必要な具体的KPIを定める、③中長期の収支シミュレーションをして健全で持続性ある経営を確保していく、としていると説いた。
経済事業改善、どう進めるか
2008(平成20)年と22(令和4)年の農協の部門別損益をみると、「傾向としては信用・共済事業で利益を上げ、経済事業の赤字をカバーしてトータルで収支を保っている」。信用は伸び、共済は利益が減り経済事業は赤字が増えている。
「20年後くらいを想定すると、信用は利益を維持できるが共済は収益としては厳しくなる。経済事業の赤字を改善し利益の方にもっていくことが大事ではないか」。新川課長はそう説き、農産物の取扱高、生産資材の購買供給高、施設利用高を伸ばし、事業総利益を安定的に確保し事業管理費を抑制していく。「特に農産物販売、買い取りによる直接販売など売り方の工夫による利益率確保は、その地域の農業をどうしていくのかと切っても切れない課題だ」と述べた。
山梨県・笛吹農協の好事例
新川課長は、山梨県の笛吹農協を好事例として紹介した。桃の産地だが、選果場の老朽化が課題だった。農家とよく話し合い、四つあった選果場を一つに集約。高度なセンサーを入れた。
組合員には異論もあったが、他JAの先行事例を集めシミュレーションを示すことで意見をまとめた。高糖度の桃をブランド化し単価向上に成功、荷下ろしや仕分けも効率化した。
生産コストを「見える化」
新川課長は、「農協との関係では『合理的な価格形成』という部分でJAグループに期待している。国内農産物は、全産品でも米でも半分近くがJAグループで取り扱っている。多くのシェアを持っているので、販売力が価格決定に大きく影響し、ひいては農業者の所得向上につながる」とした。
昨年の『農業白書』で取り上げた事例だが、全農茨城県本部では、価格転嫁の理解促進に向け、生産コスト上昇を品目ごとに「見える化」し実需者・取引先に示した。この取り組みは全国に広げるという。新川課長は「JAグループ全体でこうした取り組みをしていただけるといいのではないか」と述べた。
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