行政も巻き込み地域全体で厚生連病院を支える 経営改善には診療報酬引き上げが不可欠 JA全厚連・歸山好尚理事長2025年12月23日
農村など地域医療に欠かせない厚生連病院の経営が厳しくなっている。さらに、厚労省は病院を機能別に再編する「地域医療構想」を進めており、今後は地域医療そのものの維持・存続さえ危ぶまれる。全国厚生農業協同組合連合会(JA全厚連)の歸山好尚理事長に、厚生連医療の課題や今後の展望を聞いた。
JA全厚連の歸山好尚理事長
17厚生連が赤字で総額は約150億円に
JAの厚生事業は約80年の歴史があり、私が知っている中では一番苦しかったのがコロナ禍で、その次がここ2年の病院の大幅赤字ではないかと思います。33ある厚生連で病院を持つ21厚生連のうち、2024年度決算では17が赤字となり、赤字総額は約150億円を計上しました。日本病院会等の調査でも約70%の病院が赤字と言われていますが、100ある厚生連病院も84病院が赤字です。コロナ補助金で息をつくことができたこともあり、すぐに閉院するような状況にはありませんが、かなり逼迫した状況です。
厚生連病院の約半分は人口5万人以下の市町村にあり、医師や看護師の確保が難しく、患者も減っています。このように条件が不利な地域では、医業に対する高い志を持った医師や看護師など医療従事者によって病院が成り立っています。人材確保のためにも賃上げが必要ですが、賞与を削らざるを得ないような状況で、これ以上、赤字縮小を努力する余地がありません。
最大の問題は物価上昇です。2024年の診療報酬改定は0.88%の引き上げにとどまりました。医薬品や医療材料費、委託費、入院の給食費、水道光熱費はコロナ前より2~3割上昇しています。病院経営は、およそ半分が人件費、半分が医薬品などの必要経費です。医薬品や医療材料を使わないわけにはいかないので、人件費を削るしかなく、賞与を削るなどして赤字縮小に努めています。
新しい医薬品は高価で、感染症対策に必要な材料の値上がりなど、経費は上がる一方です。コロナ下よりは患者数も増え、収入も増えていますが、費用がそれ以上に増える増収減益の構造です。大量購入により医薬品等を低価格で提供している日本文化厚生連(日本文化厚生農業協同組合連合会)の役割も大変大きく、私たちと車の両輪のように事業を進めています。
補正予算の効果は一時的
厚生連の施設・従業員の現況
経営改善には診療報酬の引き上げが不可欠です。政府・与党に要望も出しており、これが一番の本丸です。補正予算では、一床当たり約20万円の補助や無利子無担保の貸付制度、これまで適用されなかった病院への資本性劣後ローンの話もあり、効果は認めますが、補正予算はあくまでワンショットの一時的なものにすぎません。
特に経営が悪化している厚生連病院があり、原因は建て替えです。多くは昭和時代に建築され、建て替え時期に来ています。次いで、高額機器や設備、電子カルテなど情報システムへの大規模な投資です。いずれも多額の初期投資が必要で、減価償却費の計上が必要になっているところに診療報酬の不足が追い打ちをかけ、赤字が表面化します。
保険診療は非課税取引ですが、機器などの購入には消費税を支払っており、患者からは回収できません。厚労省は、診療報酬点数に投資分を含む実質的な消費税分が上乗せされているという考え方ですが、建て替えや大型機器の消費税まで十分に見込まれていないのが実態です。診療報酬への上乗せ方式では問題が解決せず、限界があるように思えます。
出生率低下や、地方からの人口流出により、地方は折り紙を折るように急速な人口が減少しています。農村に人が住まなくなり、農業の担い手がいなくなることは大きな問題で、患者の減少で病院が維持できない土地には人が住めなくなります。
厚労省「地域医療構想」では、患者が減る中で病院が多すぎる、大きすぎるのであれば、病院が共倒れになったり、存続し得なくなることから、競合する病院の機能を分けての再編や、地域に見合った入院病床数への削減が掲げられています。病院が存立し続け、きちんとした水準の医療を地域に確保していくためには、時には苦渋の決断をしていかなければならなくなると考えています。また、医師不足も深刻であり、医師の確保のため、専門医だけでなく、地域総合診療専門医のように広範な治療を行える医師の育成も必要な時代になっています。
自治体の支援で地域の活力を維持
市町村人口階層別の厚生連病院設置割合
JA全厚連は、各厚生連全体の課題解決を支援したり、指導する役割があり、特に中央行政や国会議員への働きかけが期待されていますが、個別病院の経営改善、指導は各厚生連が担っています。各病院の置かれた環境は現場に近いところでなければわからないためです。行政支援も同様に、各都道府県の自治体に任せられている部分が多くなっています。したがって、各厚生連は置かれた厳しい状況を発信し、地域の人々にも厚生連病院の大切さを伝え、病院を支え合う形にしていく必要があります。その中で自治体への支援を求めていくことが経営改善のためには必要です。
分娩などの周産期医療を担う産婦人科や小児科は採算が合わず、特に存続が危ぶまれています。補正予算にも支援が盛り込まれましたが、これらの維持には複数医師の確保や、不採算でも維持するための自治体の支援が必要不可欠です。次代の労働力を確保し、地域の活力を維持していくためにも、自治体を巻き込みながらの経営を考えていく必要があります。
また、高齢化や病院再編に伴い、遠方への通院が難しくなり、訪問看護や遠隔での医療・介護も増加が見込まれます。交通機関の確保も重要で、ライドシェアなどの自治体の取り組みも期待されるところです。長期的には、病床削減によりベッドがない病棟もうまれるので、空きスペース活用も課題の一つです。さらに全国厚生連として、100ある病院や12の健康管理を中心に行っている厚生連のボリュームというメリットをどう出していくかという課題にも、取り組んでいく必要があると考えています。
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