JAの活動:しまね協同のつばさ
【レポート】しまね協同のつばさ[2] ベトナムの農業を学ぶ2013年3月21日
島根県JAグループが県内の若い生産者とJA職員を対象にした「JAしまね青年研修事業」(愛称:しまね協同のつばさ)に参加した約40名が、3月3日にベトナムの首都ハノイに到着し、北部ベトナムからカンボジアへの研修の旅にはいったことは先日伝えたが、その後の研修内容を報告する。
胡椒・米・コーヒーの輸出は世界一
ベトナムの農業を学ぶ
◆北部と南部では異なるベトナムの農業事情
前回で、3月4日にハノイ郊外の水田地帯を見た印象として「ベトナムでは日本のように農業機械を使った農作業はほとんどされず、昔の日本のように人による農作業が普通だという。…この地域は平場だったが、水田そのものは日本のように圃場整備されているようにはみえず、比較的小規模な区画となっていた」と書いた。
しかし、翌5日に訪れた日本大使館や「ベトナム農業研究所」での説明によると、ハノイ近郊の紅河デルタと南部ベトナムのメコンデルタでは、農業の姿がことなり、「メコンデルタではほ場の区画も大きく機械化もされている」(日本大使館)という。農業研究所でも南は1戸あたり平均1haだが、北は0.3haの規模だとの答えだった。
南部の水田面積は約200万ha、北部は170万haで、南部では年に2?3回、北部では年2回収穫するが、最近は「いい味のもの、いい品質のものが求められ」3毛作の米は食味が落ちるといわれるので、南部でも2回にするところが増え平均すると「2.5回」くらいの収穫だという。
◆25年間で倍近く増えた米の収穫量
米は1986年には1ha当たり2.81tしか収穫できず米を輸入していたが、2005年にはそれが4.93tとなり、2011年には5.3t収穫できるようになり、700万tを輸出する国となっている。
農業研究所によれば、この20年間にわたって新品種の開発をしてきたが、そのうちの「45%はベトナムのオリジナル品種」だという。
現在ベトナムの農業就業者率は労働人口の約5割で胡椒、米、コーヒーの輸出は世界第1位(2012年)だという(日本大使館説明資料による)。しかしベトナムとしては工業化を目指しており、農業主業人口は減少傾向にあるので、水田の大規模化や機械化をして実際に農業をになうであろう「女性や老人のための軽労化を実現する必要がある」と農業研究所では考えている。合わせて1haあたり収穫量を増すことができるハイブリット米の開発もしているという。
現在のベトナムの農業の状況は、日本が高度経済成長に向かい始めた1960年代初め(昭和30年代半ば)のころに近いという印象を受けた。
(写真)
ハノイ食品スーパーの米売場
◆フォーや生春巻きの皮など米原料の食材が
生産された米は、農家から商社(実態は不明)へ売られ、そこから国内の小売りや輸出に回される(ガイドの説明)という。流通している米は50種類くらいあり価格も1kg7000ドン(30円前後)から1万ドン(50円前後)だが「おいしいのは3万ドン(150円前後)」だとガイドはいう。
実際にハノイの食品スパーで売られている米を見たが輸入のタイ米が5kg23万9200ドン(1090円位)、ベトナムの米が産地は分からないが、同じ5kgで「真珠米」13万9000ドン(630円位)、「春娘米」11万ドン、「北香米」8万6000ドン(390円位)とかなり価格に差があった。ちなみに同じスーパーで売られていた米粉の値段は、ベトナム産は400gで1万4000ドン(64円前後)で、タイ産米粉は3万ドンとなっていた。
このスーパーで売られていたのは日本のように5kgできちんと包装された米や米粉で、こうした食品スーパーの利用者はハノイでも収入が良い層だと想定できるので、これが一般的な米の価格なのかどうかは分からない。 これもガイドの話だが、南部の米は「大量生産(3毛作)されるのでおいしくない。美味しいのは北部の米だ」という。ガイドはハノイ人だから身びいきもあるのだろうが、北部の人の一般的な評価だという。
ガイドは夫婦と子ども1人の3人家族だが、米を買うのは月に5kgだという。「少ないのではないか」と問うと朝は町の屋台で「フォー」(米粉を原料とした麺)を食べるし、仕事柄外食が多いからだという。
ベトナム人の朝食は屋台でフォーが多いという。フォーに限らず日本人がベトナム料理の代表として思い浮かべる生春巻きの皮も米粉が原料というように、主食として米を食べるだけではなく、米を原料とした食材が多いのもベトナムの特徴といえる。そのことが米の消費を拡大している大きな要因ともいえる。
(写真)
上:ハノイの路上カフェ
下:信号待ちするバイクの群(ハノイ)
◆日本大使館や農業研究所、農協を訪問
3月5日は、朝食後ホテルで福間莞爾鯉渕学園栄養専門学校客員教授による「農業・JAの未来を切り拓く」をテーマとした座学が1時間強あり、その後、ハノイ市内の食品スーパー視察、日本大使館表敬訪問をし、昼食後農業研究所を訪問してベトナムの農業事情を学び、さらに研究所の近くの「ヴァンニン農業協同組合」(ベトナムでは「合作社」といっている)を訪問し、説明を受けた。
残念ながらここでの説明は通訳が不鮮明で正確には理解できない部分があったので、後日、正確な情報が分かればお伝えすることにして省略する。
その後、空港に移動して、カンボジアのシェムリアップへ空路移動した。(カンボジアについては次回)
(写真)
ヴァイニン農協近くの商店
●しまね協同のつばさ
正式名称は「JAしまね研修事業」。
JAグループ島根県五連の萬代宣雄会長が、若い時に「青年の船」で旅をした経験から「世界をみることで視野を広げられる」、同世代とと旅をすることで「友人・知人ができる」ことから、若い生産者やJA職員に同様の経験をと提唱して始められた取組み。
JA全青協を中心に全国レベルでの取組みも検討されている。
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