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JAの活動:活力ある職場づくりをめざして

【JAは地域の生命線2013 活力ある職場づくりをめざして】JA周桑(愛媛県) 直売所『周ちゃん広場』が営農振興の起点2013年7月12日

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○農業者のやる気を生み出す
・年間販売高20億円、出荷登録者、1千人
・常連の声で意欲出る
・厳しく品質チェック
・ファンづくりが鍵
○人づくりを止めればJAは止まる
・直売所は消費者目線で運営
・全職員で先進JAを視察
・外部の「目」、研修に入れる

 JA周桑は[1]営農振興[2]経営基盤の強化[3]職員の資質向上の3本を柱に、地域から信頼され続けるJAづくりをめざしている。
 経営理念は「全ての事業は、地域のために」。豊田明夫代表理事組合長は「地域あってのJA」と強調する。今回は年間20億円の売上げを誇る営農振興の起点でもある農産物直売所「周ちゃん広場」を訪ねるとともに、豊田組合長に「人づくり」を重視するJAの取り組みを聞いた。

農業者のやる気を生み出す

◆年間販売高20億円、出荷登録者、1千人

 JA周桑は、平成16年の合併で誕生した西条市のうち、旧東予市、丹原町、小松町が管内。耕地面積は約2800ha、うち水田が約2300haを占める。米麦を中心に果樹、施設園芸にも力を入れている。
 平地がほとんどの管内のほぼ中心に、平成18年、農産物直売所「周ちゃん広場」を開設した。
 敷地は約8ha。開設から8年めに入った4月には、店外にあった鮮魚コーナーを売り場内の一角に移設したり、軽食や飲み物なども購入できる休憩コーナーを設けるなど売り場面積を拡大してリニューアルオープンした。残留農薬検査施設も設置、出荷農産物の安全確保にも万全を期す。
 24年度の「周ちゃん広場」の販売高は約19億円。人口5万人ほどの地域に、年間100万人が「周ちゃん広場」を訪れる。四国最大級の直売所だ。豊田明夫組合長によると「土日は県外からのお客さんも多く、地元の人は買えないほど」とその賑わいぶりを話す。
 出荷登録者は1000名を超えた。販売高のうち約8.5億円が出荷者の直販品だという。
 単純に平均すると1人年間85万円の売り上げということになる。もちろん1000万円を超える販売高を上げ経営の柱にしている生産者もいる。「周ちゃん広場」を起点とした「多様な販売体系の確立」もJAの営農振興方針だ。


◆常連の声で意欲出る

seri1307120204.jpg お昼過ぎの店頭でナスを並べていた鎌田竹広さん(46)。この日は4回目の出荷だという。公務員から専業農家に転じて4年。両親と妻の4人でトマト、ナス、ネギ、ホウレンソウ、家庭用野菜苗など多彩な農産物を作り出荷している。4人のパートも雇っているという。
 「販売高の7?8割は周ちゃん広場での売上げ。日曜日には10回出荷に来ることもあります」と語る。販売状況は携帯メールで配信されるほか、店員から棚が空になったと電話がかかってくることも。収穫した先から出荷、それが売り切れるからまた出荷、なのだという。
 「新鮮なものを、というお客さんに応えたい。でも、荷造りと搬入が自分の仕事になってしまって…。これではいけないんですが」と苦笑い。それでも「お客さんが声をかけてくれたりします。それで食べきりサイズのミニ白菜にチャレンジしたり。直売所で経営にやる気が出ます」。若い農業者も増え、JAによると最近も新規就農者から出荷登録者になりたいとの希望が寄せられたという。
 今後はこれだけ多彩な農産物が地域にあることをもっと発信するため、鎌田さんは学校給食への供給や大都市に向けての販路拡大などをJAに期待したいと話す。

(写真)
店頭に野菜を並べる生産者の鎌田さん。この時、4回目の出荷


◆厳しく品質チェック

鮮魚店とも提携 周ちゃん広場運営協議会は、15の集落(=JAの支部)代表者と3つの生産者クラブの代表で構成されている。栽培講習会や他産地の視察計画などは集落単位で作成するほか、集落の農産物をみんなで店頭販売するイベントなども行っている。
 集落や農家の特性に応じて営農振興を図ることもJAの方針で、「周ちゃん広場」はその実現への起点でもある。
 業態が好調なのは、鮮魚や精肉、生産者が作る惣菜や加工品などがそろっていることも理由だろう。精肉は4月からのリニューアルで店内で加工調理する対面販売に切り替えたところ、さらに売上げが伸びているという。
 こうした品揃えの工夫も好評の原因だが、何よりも野菜や果樹の品質の良さが支持されていることが大きい。それを維持しているのが運営協議会が行う月4回ほどの早朝売り場巡回だ。目的は商品と陳列方法のチェック。 毎回3人の役員が見回り、あまりに品質が劣るものや、買う側や隣の出荷者への配慮がない陳列方法が見られれば注意するという。これをJA職員ではなく生産者代表が行い、この直売所の狙いを出荷者に周知することを開設以来続けているのも特徴だ。
 JAは周ちゃん広場を「農家の店」と位置づける。が、それは農家の庭先で作ったものを出すとか、規格外品も売れるという意味ではない。鎌田さんは「良いものを出荷するのが直売所、という意識が大切です」と語る。

(写真)
鮮魚店とも提携


◆JA間提携も進めて

 他のJA直売所との産地間提携も積極的に進めてきた。
 たとえばJAおきなわからは、バナナ、マンゴーといった果物が供給され、JA周桑は米(ヒノヒカリ)を提供している。そのほか東北、関西、東海のJA直売所など7店舗が主要な提携先だ。「周ちゃん広場」の毎年の周年祭には7店舗からスタッフが駆けつけ、イベント開催に協力している。
 この提携は、地域にはない農産物をお互いに提供するだけではなく、他産地が端境期のときに周桑地域から出荷することで生産拡大、経営安定につなげる面もある。たとえばジャガイモやタマネギなどだ。
 白石正司副店長は「この品質なら間違いないと思う生産者には、こちらから産地間提携で出荷を、と声をかけます。私たちも自信を持って売り込めます」と話す。店頭に並べるのとは違って、30kg単位のバラ詰めにするほか、送料も負担しなければならないが、他産地で売れれば、生産者は自分の営農計画に組み込むこともできるようになる。
 そのほか、昨年度からはインターネット販売も始めた。地産地消とともに全国に販路を拡大していくことも目標にしているが、白石副店長は「出荷受付は7時からなのに、もっと早くから農家のみなさんは集まってます。仲間との会話が楽しく、“周ちゃん”に来ることが、地域の農家の生きがいになっていると思います」と話している。


◆ファンづくりが鍵

JAは「JAのファン」づくりをめざしている 一方、こうしたJAの事業展開を担う職員には「組合員との絆づくり、JAのファンづくり」を徹底しているという。
 廣田光俊参事は「JAのファンだけではなく、自分のファンを作れと強調しています」と話す。
 そのファンづくりに欠かせないのは「しっかりした知識をもって組合員と話ができること」。こうした考えから、農業経営アドバイザーやフィナンシャルアドバイザーなど資格取得も重視している。
 また、階層別研修を毎月1回実施している。講師はJA系統以外の他業態に精通したコンサルタントなど。
 「JAのライバルはJAではありません。地域ではそれは銀行や保険会社などです。だから他業態が何を考えているか、われわれは学ぶ必要があります」。 新規採用職員への研修は金融共済部が担当し、金融・共済はもちろん仕事の基本からJA、協同組合とは何かまで講習する。最後は農業体験も含めて1泊2日をとる。
 最近では、組合員の声をどう事業を進化させるかをさまざま部署、階層から少人数で集まりディスカッションするプロジェクトも検討しているという。
 「若い職員でも自分の意見が通れば意欲が出ます。人を育てていかないとJAは伸びていかない。そう考えています」と廣田参事は話している。seri1307120205.jpg

(写真)
JAは「JAのファン」づくりをめざしている

【JAの概況 24年度末】
○組合員数:1万2793人(正組合員:6961、准組合員:5832)
○職員数:343人(正職員:223人)
○販売事業実績:約29億7000万円
○購買事業実績:約28億4000万円
○貯金残高:約1220億円
○長期共済保有高:約3460億円

 

人づくりを止めればJAは止まる

インタビュー 豊田明夫・代表理事組合長

 JA改革の取り組みでは、全職員で先進JAを視察したという。「コストはかかりましたがそれで職員がやる気になってくれればいい」と豊田組合長。職員教育の継続がJAづくりに欠かせないと強調する。


◆直売所は消費者目線で運営

 豊田明夫・代表理事組合長 平成16年度の第1次中期3か年計画以来、今年度からの第4次計画まで、一貫して第1に営農振興、第2に経営基盤の強化、第3に職員の資質向上を掲げています。
 営農振興では、予算を組んで組織育成に充てています。担い手が不足するなか、集落営農や法人化など営農集団づくりを促進するため、具体的には組織化する際の農業機械購入をJAが助成するものです。営農集団と認定農業者を合わせて50ほどの担い手による利用権設定などの農地カバー率は3割程度ですが、今後、ほ場整備事業も予定されており、米麦を柱に営農集団がもっと規模拡大できることが期待されています。
 『周ちゃん広場』も営農振興の重要な拠点ですが、ここまで業績を伸ばしてこられたのは、農家の目線ではなく消費者の目線で運営してきたからだと思っています。一般の商品以上の農産物を出荷している場で、それが消費者に支持されているのだと思います。今では品質が信頼されて生産者名で購入する人も増えてきています。


◆全職員で先進JAを視察

 平成17年からJA改革に取り組みました。 このときに5出張所を廃止、1支所を統合し、支所を金融店舗に、営農経済事業は本店と4つのサブセンターに集約しました。
 同時に全国の先進JAを4年間かけて全職員で視察したんです。結論は、組合員宅を回って対応しているJAが優れたJAだということでした。金融、共済だけでなく、やはり営農でも、今で言うTACのように農家巡回をしていた。
 視察は1泊2日でしたからコミュニケーションがなくなっていた職員同士のつながりもできました。
 視察で得た結論は組合員を回るしかないということですが、もちろん訪問するだけではなく、組合員と面談をしなければなりません。しかし、日中に組合員が在宅していることは少ないから、今では夜間に回って日中に代休をとるなどの仕組みも入れています。また、月に1回は土曜日を家庭訪問日にしています。支所によっては支所長の考えで土曜、日曜を訪問日としているところもあります。支所ごとに地域特性を考えるということです。ただ、まだまだ組合員との面談は不十分だと思っていますし、この仕事がおもしろいと思えるようにならなればと考えています。


◆外部の「目」、研修に入れる

 当初から、職員の資質向上を一貫して柱のひとつとしてきたのは、JAの職員は組合員に対して甘えがあると考えたからです。規制緩和によってあらゆる事業が競争になった。それに対応できる職員をつくっていかなければなりません。
 意識改革をするための職員教育では、外部講師を招いた階層別研修をずっと続けています。これは毎月1回実施です。
 こうした研修を継続させて意識づけをしていくことがやはりいちばんの道だと思います。本来であれば毎月全職員を対象にした研修であればいいのですが、なにしろ300人を超す職員がいますから、そこは限界があります。それでも職員教育はずっと継続して行うことが大切で、止めたらそれで終わりです。
 これがJA改革に取り組むなかで大きく変わってきたことです。計画を上回る実績も出るという目に見える成果も上がってきました。
 「全ての事業は、地域のために」を2年前から経営理念として掲げています。やはり組合員あってのJAですし、地域あってのJAだからです。地域の活性化、そのため農家の利益が上がるようなことをJAはやっていかなければなりません。

 

JAの人材育成・人材配置を考える
東京大学名誉教授 今村奈良臣

 かねてより、私は「JAほど人材を必要とする組織はない」と考え、かつ、説いてきた。今回、JA周桑の豊田明夫組合長にお話を伺い意見交換するなかで、人材育成とその人材配置、活力あるJAの推進体制の方向がさらに明確になった。
 私は人材育成とその配置については、判りやすく、サッカーの陣型にたとえて説いてきた。
 サッカーの陣型でもっとも重要なポジションはミッドフィルダー(MF)である。勝つための戦略、戦術を策定し、実戦の司令塔である。フォワード(FW)は、MFと連携しつついかに得点をあげ勝利に導くか、その俊敏さが基本である。ディフェンス(DF)は防御を基本とするが攻撃への起点となる。特に両サイドバック(SB)は適機に攻め上がりMFやFWと連携する。ゴールキーパー(GK)はチームの守護神である。
 JAにおける人材配置をサッカーの陣型に当てはめれば次のようになると私は考えている。[1]MFは営農企画部門に当たる。[2]FWは農畜産物販売部門に当たる。[3]DFは資材購買、金融・共済、財務管理部門に当たる。?GKは管理・総務部門に当たる。いかに失点を防ぎ次の攻撃に転じるかという役割を担う。
 さて、これらの布陣の中で、最も重要であり勝利の鍵を握るのはMFで、JAの生命線は営農企画部門にあると、私は考えている。農業生産や農畜産物加工を進める組合員を巧みに指導・組織し、地域の農業の在り方、農業生産の方向づけ、技術革新の推進、さらには多彩な農産物加工なども含め「農業の6次産業化」を推進し、いかに活力ある地域農業の姿を創り出すかにある。
 そして、FWは販売戦略・戦術の実践担当部門であり、いかに得点して勝利を得るか。 さらに重要なことは、サポーターをいかに増やし組織するかにある。強いチームには必ず強力なサポーターが組織されている。言うまでもなく組合員たる農業者、そして准組合員、とりわけ次代を担う青年、さらに元気に充ちあふれた女性、元気をとりもどしてきている高齢技能者の皆さんたち。さらに管内の住民・消費者。いかに組織し、活力を高めるか。
 JA周桑の直売所「周ちゃん広場」の活況と20億円に達する売上げ高。そして店内の光り輝く出品の数々。直売所に買いに来る消費者の笑顔。これらを見ているとJA周桑の人材育成、人材配置など勝利を積み重ねてきた歴史が手に取るように判る気分になった。

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