JAの活動:JA 人と事業2014
【JA 人と事業2014】本田誠次・JAいわみ中央組合長 女性部の活動で地域を元気に2014年9月4日
・漬物コンで商品開発へ
・適地適作に地域マップ
・シェアより利用率向上
・常に挑戦へ意識改革を
・本部の支援、有効に活用
島根県のJAいわみ中央は同県西部、石見地方の中心地浜田市と江津市の一部をエリアとするJA。高齢・過疎化が顕著な地域で女性部を中心とした地域活動、加工を軸とした果樹・野菜の産地化による地域農業の確立を目指す。島根県のJAは来年3月、全国で4番目の県単一JAとなる。これまでのJAは地区本部として一定の独立性を持った組織としてスタートする。統合JAの中で、各地域・JAの特徴をどう生かし、発展させるか。本田誠次組合長に聞いた。
加工を軸に産地化へ
◆漬物コンで商品開発へ
――組合員の高齢化が進む中で、農協組織の活性化にどのような取り組みをしていますか。
農協は人の組織です。生産者や青年部・女性部などいろいろな組合員組織がありますが、一番人数が多く、影響力の大きいのは女性部で、この活動に期待しています。女性部の活動は、農協職員にとって教育の場でもあり、職員と女性部員が一緒になってものごとに取り組む形が生まれつつあります。
農協では年1回「JAふれあいの集い」を催していますが、参加者は女性部員と職員が一体となった活動を見て、感動して帰られます。また食の文化や食の大切さを伝える「うまいもん祭り」を開いています。地元の人に地元のものの良さを知ってもらおうというもので、女性部が腕を振います。これが大変好評です。
管内には、浜田漁港があり、海や山の産品に恵まれています。かつては「山彦・海彦 食の集い」としてやっていた祭りですが、漁協が合併して県一本のJFになり、残念ながら共同開催ができなくなりました。
祭りでは女性部が伝統の雑煮を提供。同じ浜田市内でもこんなにも種類があるのかと感心しました。地元の野菜の漬物コンテストもやっています。そこから商品化し、直売所に出すものも生まれています。
こうした活動の参加者のアンケートのなかに、60歳代の員外の女性から「農協は大きな家族ですね」との感想を書いたものがありました。地域のためにという私たちの思いが伝わり、こちらも感動しました。
◆適地適作に地域マップ
――農産物の加工にも力を入れていますね。
これも女性部が中心ですが、山間部にある弥栄支部の女性部が頑張っています。そこの「母ちゃん漬」は色素を使わず、ウコンで色付したたくあんです。やはり女性部と農協の職員が一体となって3年前から試作してきたものです。
「母ちゃん漬」が成功して売れるようになると弥栄支部だけでは生産・製造が追いつかなくなる。そうすると、これを拡大して産地化する必要が出てくる。こうした加工を基本とした産地づくりを進めたいと考えています。そうすることで農協の営農指導も効率化できます。
今のように各地でばらばらな品目をつくっていては産地化はできません。弥栄の例はそういう仕掛け作りのための一石を投じたものです。こうした活動は女性部にとっては農協活動への参加・参画でもあります。弥栄支部では一時30人まで減っていた部員が、今では100人近くに増えました。
こうした取組みは農協が提案し、仕掛ける必要があります。その一つとして今、地域マップづくりを進めています。その地域の土壌を分析し、気候を調べて、そこに適した作目を探すのです。
いま必要なことは、営農面でのそうした指導力ではないでしょうか。そこで、これから取り組むべきことの一つは契約栽培だと考えています。作りたいものを作りなさい。できたものはできただけ売ってあげますという営農指導ではなく、作目を決め、できたものは責任を持って販売するという仕組みづくりです。そのため乾燥野菜にも試験的に取り組んでいます。
市況が高くても安くても、農家には生活設計ができる所得を保証する。それが6次産業化であり、生産・加工・販売の循環型のシステムを確立し、農家所得の安定をはかる。これが農協の使命だと考えています。
また付加価値を高める加工では、特産の西条柿の加工施設づくりの構想を持っています。西条柿は米・畜産を除き、品目ではJAの販売額のトップです。産地も比較的まとまっており、現在2か所の選果場を1か所にまとめる構想ですが、その際、加工施設もつくろうと思っています。
(写真)
JAいわみ中央の位置
◆シェアより利用率向上
――このような投資を可能にするには経営の安定が不可欠です。JAの事業のあり方をどう考えていますか。
農協は組合員の組織です。農協のものは高いという組合員もいますが、経済担当の職員には、農薬・肥料で利益を挙げなくてよい。組合員すべてがすべて農協を利用すると、安く供給できるとともに、それが全ての農協の事業につながるのだからと言っています。併せて、「農協は自分たちの組織である」との認識を深めるため、組合員には全利用を訴えています。
これまで農協の事業は地域でのシェア拡大が目標でした。しかし重要なのは利用率です。組合員が100%利用すると、結果として地域のシェアは上がります。管内6万人の1割は組合員。それが100%農協を利用すると信用も共済事業も楽になります。
そのためには組合員にとって魅力ある経営でなければなりません。魅力とは組合員の期待であり、それは組合員の意見を聞くことで、いかに組合員目線でものごとを見て、組合員との絆を大切するかです。
絆という意味で『家の光』の利用があります。普及率48%ですが、それが組合員に対する農協の意識づけになっています。そのための材料であり、普及率60%をめざしています。それだけあれば、農協の存在がその家庭内に自然と生まれる。この面でも、女性部が一緒になって頑張ってくれています。
◆常に挑戦へ 意識改革を
――これからJAにはどのような人材が求められますか。
職員の教育、意識改革に取り組んでいます。特に営農経済部門の職員は、作られたものを売ればよいという従来の感覚から抜けられない面がありました。そこで信連の支援で、金融渉外の職員を徹底的に教育しました。これに刺激されて、現状に満足せず、常に新しいことに挑戦するという感覚が職員のなかに生まれてきました。
また、農林中金のモデル農協の指定を受けてCS活動に取り組んでいます。当初は信用窓口を中心に取り組みましたが、今年度から経済部も含め、農協全体に広げています。
◆本部の支援、有効に活用
職員教育は、教科書での座学もありますが、それよりも実技が大切だと思います。組合員と話ができるかどうか、組合員の中にいかに溶け込んで入り込めるかです。かつては農協の幹部が地域の会合に加わり、地域の農業のあり方などを話し合った。しかし広域化でそれがいまなくなっています。
それに会合が農政や農協の方針の説明が中心でトップダウンになってしまった。このため組合員の意見は、職員にとって文句(苦情)になった。だから心に残らない。そこに問題があります。ボトムアップにもっていかなければなりません。
生産者の会議や会合には、役員が出席するのも必要ですが。部長・課長クラスが出席し、組合員の声を肌で感じるようにしなければならないと思っています。
――来年3月、島根県のJAは単一JAに統合しますが、それぞれのJAの特徴をどう生かしますか。
統合後も今の農協は、独立採算を基本とした地区本部になりますが、今後、今まで以上に、地域で生きていくために、いかに組合員を地区本部に結集するかが重要になるでしょう。このためには、統合するのですから、本部の支援を有効に活かし、さまざまな事業に挑戦したいと思っています。基本的には組合員の営農の確立と生活の向上を考え、地区本部の中で、農協が地域農業の方向性を示し、実行するという基本は変わりません。
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