JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
第42回「JA人づくり研究会」第28回研究会の報告と紹介2018年1月20日
「政府による農協改革とJA自己改革の課題と対応」
JA人づくり研究会第28回研究会は次のような課題設定のもとで2017年10月27日に開催された。
「政府による農協改革をうけて、JAおよびJAグループにおいては自己改革の取り組みを進めているところですが、組合員の世代交代、公認会計士監査の導入に基づく内部管理体制の強化、情報技術革命の急速な進展など、JA事業の根幹に関わるいくつもの問題に直面する中で、全体を見通した中での明確なビジョンと戦略を見出しえていない状況があります。
農家組合員の営農と暮らしを守り、豊かにするためには、JAを基盤とするJAグループの組織・事業・経営が必要不可欠です。このことを認識したうえで、現下の危機的状況を乗り越え、使命を遂行するためには、まずはJAのヘッドクオーター(司令塔)である常勤役員が、現下の情勢を正確に読み解き、自分の言葉として理解し、その上で、地域およびJAグループの経営資源を総動員して、使命遂行に必要なビジョン・戦略を構築し、実践することが必要です。
今回の研究会では、情勢認識、現場の取り組みの実態、現場で奮闘する仲間たちからの実践報告をもとに、これからJA常勤役員が何を考え、実行していくべきかを話し合い、今後の方向を探ることとしました。今回の研究会を起点として次回以降も議論を深め実践路線を明示していく必要があります。これからも引き続き、研究会メンバーの参加と積極的な意見交換を期待しています。」
このような開会趣旨とあいさつのうえで、小林元氏(広島大学助教)の「自己改革にむけた取り組みの実態と課題」、岩佐哲司(JAぎふ常務理事)「都市近郊農業地帯のJAからの報告」、仲澤秀美氏(JA梨北常務理事)「中山間農業地帯のJAからの報告」、という三人の方々からの報告をいただきそのうえで討論を深めた。以上、御三方の報告は鋭くかつ示唆に富むものであったが、その詳細のすべてを紹介することは容易ではないのでホームページを読んで頂くこととし、その核心部分の要点のみを、以下、紹介することにせざるをえない。
1.小林報告の要点
(1)短期的には平成31年4月の全組合員調査に向けて、1年余で何をしていくかを考える必要がある。その上で中長期的には地域農業や地域再生のグランドデザインの創出や組合員の運営参画の仕組みなどを鋭意再検討することが不可欠である。
(2)今年「農業競争力強化支援法」ならびに関連8法が成立・施行された。農業・農政が本格的に変わらざるをえないと言える。そういう中でなにをすべきか、全力をあげて取り組んでほしい。
(3)全国どこのJAに行っても、おしなべて同じ形の自己改革の工程表があって重点目標があるという金太郎飴のような状態だが、これでは駄目だ。先進的な農協は10年、20年、30年前から取り組みをはじめ「いわゆる自己改革を入れたとは書いているけれども昔からやっていることをしっかりやって、いまの環境に合わせてこういう新しい方向もやっていくのだ」と語っている。
(4)全国にわたり調査に伺った特徴の一つが「役職員の現状認識が極めて希薄である」ということだ。
(5)営農面でとりわけ重要なことは「私たちの地域は10年後、20年後、30年後にこんな農業をやり、農村になっている」というグランドデザインが必要だ。優れたJAに共通するのは、地域の農業全体を「こういうふうに考えているのだ」という大きな絵があり、地域農業のグランドデザイン(日本型農場制農業)があることだ。そのために「こういった事業や支援策をやるのだ」という構想の提示が必要だ。そのためには役員と職員の人材育成は欠かせない課題だ。
(6)そのためには「営農経済事業の見える化」が必要だと思う。そのためにはこのような研究会に出て自らも研くことから始めてほしい。
(7)JAのことを知らなくなった組合員が多いことは大きな問題だ。また、JA側も組合員のことを知らないということも問題だ。短期的には広報力や発信力を強化していかなければならない。情報発信をどれだけしていくかということが、平成31年5月までのポイントになる。
(8)短期的な目標としては、役職員による訪問や意見交換は当然必要だ。また、営農経済事業を「見える化」して「地域農業をこうしていきます」ということを組合員に知ってもらい、「こんなことを私たちはやっています」ということを直売所や支店活動、広報誌などを使って多くの人に知ってもらい、准組合員にJAのことを知ってもらって「ファン」になってもらうことが喫緊の課題だ。
(9)JAが広域化する中で、ガバナンス、つまり組合員が運営参画するような仕組みが確立していないままでいることは、大きな問題だ。解決するためにはこれまでの基本ルートを再検討し改革しなければならない。
(10)そのためには、いかに組合員の声が聞ける仕組みや組織を作ることができるか、組合員が主人公になるために、いろいろな人が参画する場を組合員教育を含めてどのように作っていくか、ということが重要だ。すぐれた農協になるためには組合の運営方法というものを組合員目線でもう一度組み立てなおすことが必要だ。
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