JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
第47回 全国農林水産物直売所実態調査から見える直売所の今。-全国農林水産物直売所実態調査の中間報告(そのIII)-2018年3月10日
〈課題への対応法〉
このアンケート調査の第4の柱として「課題への対応」を問うている。読者の皆さんもこの点に非常に大きな関心を持っていると思うので、やや詳しく紹介しておこう。
(1)出荷会員に対する支援策
いずれの直売所も、この課題に対して全力で取り組んでいるが、第4図に示したように、全体として方向性を示すと「出荷量・品目の拡大と品質向上に向けた、会員支援が進んでいる」と要約することができるであろう。
そのためにどういう支援策を講じているか、具体的にみると(複数回答)、(1)売上情報メール配信(53.7%)、(2)先進地視察研修(47.6%)、(3)クレーム内容の共有(45.1%)、(4)栽培技術講習(43.9%)、(5)食品表示講習(38.4%)などが上位を占めているものの、共同で研修、研究する分野に力を注いでいることが判る。とりわけ生産者会員個人では対応できにくい課題に直売所が積極的に多彩な分野で取り組んでいることが読み解けるであろう。
(2)商品不足解消に向けた工夫
商品不足に見舞われている直売所が多くなったという問題に対処するためにどういう工夫をしているか、というのが全国各地の直売所で取り組まねばならなくなっている状況にかんがみ、その対策への工夫について聞いてみた。
アンケートの回答全体を通して判ったことは「電話やメールの呼びかけに加えて、店と生産者との連携を進めている」ということであった。それを具体的にみると(複数回答)、(1)電話による出荷呼びかけ(63.6%)、(2)売上情報の発信(メール等)(43.4%)、(3)年間作付計画の提出(12.4%)、(4)生産者との個別面談(11.8%)などが主な方法だが、「時差出荷の奨励」(11.7%)、「重点生産品目の設定」(9.8%)などと多様な方法にわたっていることが、この図から読み取れる。いずれにしても商品不足解消のために、いろいろと智恵をしぼり会員とのコンタクトを密にしていることが、この図から読みとれるであろう。
(3)人材確保・活用の工夫
ついで大きな課題は「人材確保」ならびに「人材の活用」ということであるが、それを4-3図でみておこう。
その回答を要約して示しておけば、「多様な人材を活用し、労働内容に見合った対価をきちんと支払う」というように集約できよう。
その回答の多い方から見てみると(複数回答)、(1)定年退職者の雇用(34.6%)、(2)賞与等各種手当金の支払い(28.1%)、(3)勤続年数による賃上げ(22.8%)、(4)社会保険等の加入徹底(19.6%)、(5)スタッフ研修の充実(16.2%)ということのほか、「土・日繁忙期の賃金割増」(15.7%)や「学生の雇用」(11.8%)、「各種資格取得への支援・補助」(10.8%)など多岐にわたっている。
労働力不足とりわけ能力の高さを求められる人材をいかに確保するか、そしてまた直売所の活動の推進のために、いかに人材を活かすか、その労働内容に即した処遇にいかに配慮するかということが、いま直売所に求められていることが判る。
ついで、「課題への対応法」のなかで、非常に重要な課題である「お客様対応の工夫」について問うてみた。
その結論を先取りして述べれば、「多品目・多品種を取り扱う直売所では、試食と食べ方提案が大事てある」という回答が多かったということが判る。
それを具体的にみると、4-4図に示したように、(1)試食の実施(売り場)(54.7%)、(2)レシピ(調理法)等の配布・掲示(51.5%)、(3)商品POPの充実(42.9%)、(4)チラシの発行・配布(30.4%)、(5)独自のホーム・ページの開設(28.9%)というように直売所に来る、特に主婦・女性をターゲットにさまざまな工夫とそのための努力が必要だと、多くの直売所関係者は回答してきている。このようなアンケート結果を踏まえて、それぞれの直売所でお客様対応の工夫をしてもらいたい。
(関連記事)
・第46回 全国農林水産物直売所実態調査から見える直売所の今--全国農林水産物直売所実態調査の中間報告(そのII)(18.03.03)
・第45回 全国農林水産物直売所実態調査から見える直売所の今-全国農林水産物直売所実態調査の中間報告-(18.02.24)
重要な記事
最新の記事
-
果樹産地消滅の恐れ 農家が20年で半減 担い手確保が急務 審議会で議論スタート2024年10月23日
-
【注意報】野菜、花き類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年10月23日
-
【クローズアップ】数字で見る米③ 委託販売と共同計算2024年10月23日
-
【クローズアップ】数字で見る米④ 委託販売と共同計算2024年10月23日
-
千葉県で高病原性鳥インフルエンザ 今シーズン国内2例目2024年10月23日
-
能登を救わずして地方創生なし 【小松泰信・地方の眼力】2024年10月23日
-
森から生まれた収益、森づくりに還元 J‐クレジット活用のリース、JA三井リース九州が第1号案件の契約交わす2024年10月23日
-
食品関連企業の海外展開に関するセミナー開催 関西発の取組を紹介 農水省2024年10月23日
-
ヒガシマル醤油「鍋つゆ」2本付き「はくさい鍋野菜セット」予約販売開始 JA全農兵庫2024年10月23日
-
JAタウン「サンゴ礁の島『喜界島』旅気分キャンペーン」開催2024年10月23日
-
明大菊池ゼミ・同志社大上田ゼミと合同でマーケ施策プロジェクト始動 マルトモ2024年10月23日
-
イネいもち病菌はポリアミンの産生を通じて放線菌の増殖を促進 東京理科大2024年10月23日
-
新米「あきたこまち」入り「なまはげ米袋」新発売 秋田県潟上市2024年10月23日
-
「持続可能な農泊モデル地域」創出へ 5つの農泊地域をモデル地域に選定 JTB総合研究所2024年10月23日
-
「BIOFACH JAPAN 2024」に出展 日本有機加工食品コンソーシアム2024年10月23日
-
廃棄摘果りんご100%使用「テキカカアップルソーダ」ホップテイスト新登場 もりやま園2024年10月23日
-
「温室効果ガス削減」「生物多様性保全」対応米に見える化ラベル表示開始 神明2024年10月23日
-
【人事異動】クボタ(11月1日付)2024年10月23日
-
店舗・宅配ともに前年超え 9月度供給高速報 日本生協連2024年10月23日
-
筑波大発スタートアップのエンドファイト シードラウンドで約1.5億円を資金調達2024年10月23日