JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
第45回 全国農林水産物直売所実態調査から見える直売所の今-全国農林水産物直売所実態調査の中間報告-2018年2月24日
前回紹介したように、サミットの総会の一環として「全国農林水産物直売所実態調査の中間報告」が行われた。報告者は(財)まちむら交流きこうの地域活性化チーム長の森岡亜紀さんであった。全国の直売所の実態を知りたいと考えている方々が多いと思うので、中間報告ではあるが(なお、最終報告は本年4月の予定)その要点を紹介しよう。
<調査の目的ならびに方法等>
まずはじめに調査の目的や対象、方法など約束事項について記しておこう。
1.調査目的
(1)常設・通年営業を行う全国の農林水産物直売所の運営実態の把握
(2)全国の直売所が抱える課題及び課題への対応策の把握
(3)直売所を取り巻く環境の変化を知り、持続的な経営に役立てる
2.調査対象
全国の常設・通年営業を行う農林水産物直売所 4250店(※)まちむら交流きこうのデータベースに名簿登録されている店舗
3.調査期間
平成29年9月11日~10月20日(締切)
4.調査方法
(1)配布方法 ダイレクトメール(郵送)による個別店舗送付
(2)回収方法 FAX・mail送信による回収
5.調査票回収数
1150店舗(回収率27%) ※平成29年12月時点
6.設問内容
開設目的、運営組織、営業内容、事業内容、経営内容等、約100問
7.最終報告
平成30年4月頃に公表予定
以下、調査の概要ならびに要点について、そのポイントとなる点を紹介しておこう。
まず、直売所の開設目的については複数回答ではあるが、図-1に示したように、第1位が「生産者の所得向上のため」(74.8%)、第2位が「地域農業振興のため」、第3位が「地域活性化の拠点づくり」というように、地域の農業や生産者の所得向上あるいは地域活性化の拠点に直売所がなるようなねらいで設立されていることが判る。これに加えて、「消費者との交流の場」あるいは「高齢者の生きがいづくり」が3割から4割を占めていることも近年の特徴を反映していると言ってもよいであろう。
もちろん「地域経済の活性化」や「女性の活躍の場づくり」も2-3割を占めていることにも注目しておきたい。
このアンケート結果をみて本稿の読者の皆さんはどういう感想を持つだろうか聞きたいものだと、私は考えている。
次に「直売所の動向」のうち、まず、(1)経営主体ならびに、(2)売り場面積について問うてみた。
全体として見るならば、(1)JAその他、多様な経営主体が増加し、1店あたりの売り場面積は広がってきていることが判る。
まず、直売所の経営主体についてみると、量的にもっとも多いのがJAの27.4%、ついで生産者主体の任意組織(22.7%)、次に公社とか第3セクター(15.3%)、民間企業(11.9%)、生産者主体の法人(10.5%)、行政(9.5%)、その他(2.8%)などとなっている。しかし、JAと生産者主体の任意組織で半ばを占めており、近年JAが経営主体となるものが増えてきているようにみられる。
なお、前掲図の脚注に示しておいたが、平成18年度に、まちむら交流きこうが行った調査との比較が示してある。調査対象や調査方法が異なるので、単純比較はできないが、脚注に示してあるように、その比較を行うと、
(1)18年度調査との比較では「生産者主体の任意組織」が36%から23%に減少、「生産者主体の法人」が13%から10%に減少している。
(2)他方、伸びているのが、JAで、22%から27%に増加、民間企業も5%から12%に増加している(但し若干調査方法が変更されている)。
(3)今回の調査によると[その他]の経営主体は、JF、NPO、個人、観光協会、商工会の順に多い回答になっている。
<1店当りの売り場面積>
1店あたりの売り場面積は、2図をみていただければ判るように1500平方メートル以上36.2%、1000~1500平方メートル未満2.6%、500~1000平方メートル未満10.8%、300~500平方メートル未満14.5%というようになっている。これを18年度調査と比較すると、300平方メートル以上の売り場面積の店が13%から31%に拡大し、1000平方メートル以上の大型店も増加し、大
型化が進んでいる。しかし、もっとも多い回答は「100~300平方メートル未満」(36%)であった。また、18年度調査では、100平方メートル未満の店は全体の約5割であったが、今回の調査では約3割(33%)に減少しており、大型化が進んでいるようにみられる。
(関連記事)
・国民の食料つくる誇りをバネに【染谷茂・柏染谷農場代表】(18.02.21)
・農業6次産業化の旗手-3か所の直売所を拠り所に(18.01.19)
・【JA菊池】「農協改革」は販売事業の強化(前編)(17.10.20)
・支店を「農と食の協同組合」の入り口に(17.05.09)
・所得増に重点7品目【JAおちいまばり・宇髙秀志常務理事】(17.04.27)
・JAの直売所 販売総額3266億円-農水省統計(16.07.05)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日