農政:農業協同組合研究会 第13回研究大会
所得増に重点7品目【JAおちいまばり・宇髙秀志常務理事】2017年4月27日
直売所通じ情報発信
JAおちいまばり管内は、瀬戸内の温暖な気候で、台風被害が少ない環境を活かした少量多品目農業で、JAの農畜産物販売高は平成28年度約68億円である。島嶼部はかんきつ類、陸は米と野菜に偏っており、この両極端な農業をまとめることがJAの大きな課題だ。
管内の農家は小規模で、この数年、戸数の減少は激しく、平成17年度の4279戸が22年3962戸(当初比92%)、27年度3086戸(同72%)と、10年で3割減った。このため平成28年度から3か年の農業振興計画をつくった。これが管内20か所で組合員と意見交換会を開き、課題を整理してつくった、所得増大に向けた7つの方針、レインボープランだ。
目的は、生産者とJAが共に70億円を目指すための指標を見える化すること。(1)指導体制の強化、(2)販売戦略、(3)生産資材の安価供給体制構築と農機事業の充実、(4)農業経営支援体制の確立、(5)農業ファンづくりと労働力支援、(6)地域における課題解決、(7)担い手の育成と活力ある産地づくりの7つである。
これをJAのTAC(担い手農家に対応する営農指導員)が農家の要望を聞いて支援策を提案し、「心耕隊」(農業支援グループ)や「ファーム咲創」(農業法人)が労働力・作業支援する。指導は総花的ではなく重点事項を絞った。キュウリ、サトイモ、はれひめ(中晩柑)、紅まどんな(同)、甘平(同)、キウイフルーツ、花木の7つを重点品目として推進している。
この7品目の現状・課題・基本戦略・具体的な実施項目を定めたビジョンシートを作成して進めている。
キュウリを例に挙げると、基本戦略は、(1)面積の拡大、(2)部会とJAが一丸となった栽培技術の推進、③生産支援に向けた補助事業の活用で、JAは新規栽培や増反分の苗代金100%、生産資材は25%を助成し、30年度の生産量、販売金額の目標を具体的に明記している。
ビジョンシートに基づいて検証・実践しPDCAサイクルを回すことで実情に即した戦略立案できる。合併後、人件費やコストの抑制、事業効率化優先で進めてきた結果、若手の指導員が育っていないことが問題になった。このため、毎月の定例会などで積極的な提案を促すなど、若手指導員の育成に力を入れている。高齢化による農業労働力の不足は深刻だが、心耕隊のほか、人材派遣会社と提携して未経験者や中高年齢者の就農を促している。
サトイモの「伊予美人」は期待の品目の一つだ。水稲の代替作物として提案している。比較的価格が安定しており、10a33万円ほどの販売も可能で、やはり種子代や生産資材には助成している。県内の4JAと一緒の施設で集出荷しているが、もっと伸ばしたいと考えている。
果樹の「はれひめ」は糖度12度以上にするための栽培講習会の開催、心耕隊による栽培管理の労働力支援などを行なっている。「紅まどんな」は全農えひめのブランドで、12月出荷の高級ギフト向き、「甘平」は1月出荷で、ともに愛媛県オリジナルブランドの果実である。
販売については、「おちいまばり」のブランドで全国発信したいと思っている。JAの直売所「さいさいきて屋」は、地元で大きなブランド力があり、このネームバリューを使い、イオンモールへの出店などを通じて、おちいまばりの情報を全国へ発信をしていきたいと考えている。
生産資材は期間を決めて特売も行うなど、価格面でもホームセンターに負けないようにしている。農機は、小規模経営が多いので大型は売れない。長持ちさせるため、コストはかかるが、点検修理に力をいれている。
積極的なアピールで、おちいまばり産の農産物への期待が高まっているものの、生産が追いつかない悩みがある。管内はもともと基盤整備率が低く、米だけで所得をあげるのは無理があり、営農モデルを示すことで、重点品目で掲げた「はれひめ」「紅まどんな」「甘平」、サトイモの「伊予美人」などの生産を振興し、70億円の販売目標を達成したい。
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