JAの活動:緊急寄稿-平成の農協合併を考える
【田代洋一・平成の農協合併を考える】会津はひとつ(1)2018年6月18日
【還元利率引下げの衝撃】
2017年10月上旬から隔週で連載を始めた「守られるのか? 農業と地域-1県1JA構想」は2018年4月に中締めした。
しかしその直後、農林中金が県信連等への還元利率を3年で0.6%程度から0.4%程度に引き下げるとの日経報道があった(4月27日)。これでは官邸農政が強いる信用事業の代理店化の場合の貯金手数料の水準と大差なくなり、「結果的に政府の農業改革の目的と合致する」(同)。日経は見出しで「大規模化で体力強化必要」ともしている。つまり「代理店化か合併か」の二者択一というわけだ。しかし還元利率の引き下げは代理店手数料にも連動するだろうから、事はそう単純ではない。
むしろ還元利率の引き下げは、課題の再検討を提起したとみるべきだ。これまでの「平成の農協合併」は、一口で言えば「信用事業を守るための合併」(第一テーマ)だった。そして、そのしわ寄せの営農経済事業への波及をいかに防ぐかに合併の工夫があった(第二テーマ)。
ところが還元利率の引き下げは第一テーマの合併効果を大きく削ぐ。とくに営農経済事業に重点を置いてきた産地農協としては、第一テーマそのものの見直しが求められる。あるいは第二テーマのより積極的な追求が求められる。
そのような観点から「平成の農協合併」を改めてトレースしてみたい。今回はJA会津よつばを報告する。
◆大震災がきっかけ
福島県のJAは東日本大震災、東電原発事故を受けるなかで4JA構想の実現に至った。会津地域も2016年3月に管内4農協が「JA会津よつば」に合併した(組合員46,611、正組28,293、准組合員比率39%)。「よつば(四つ葉)」とは象徴的で良い名前だ。会津は、他地域と異なる歴史、風土、文化をもち、以前から会津畜産センター、会津広域アスパラ選果場、会津地区組合長会など「会津はひとつ」の合言葉の下に協同にとりくんできた
合併前の4JAとも名前の頭に「会津」「あいづ」をつけていた。とくに米については、10年ほど前から「会津米」のブランドでエコ米を80%にする取り組みがあった(実際には59%まで)。
他方で、管内には17市町村があり、盆地から県境中山間地域まで地域差も大きくなかなか踏み切れなかった。そこで「合併に関しては県域の合併に歩調を合わせた感が強い」(JA会津よつばの回答書、以下同様)ということになる。要するに大震災がきっかけになった。合併のイニシアティブをとったのは会津地域の組合長会だった。
◆支店統廃合
調整が必要な不良債権をかかえたJAはなかったが、資産格差はあった。その点は、旧JA会津いいで地区(喜多方市など)とJA会津みどり地区(会津坂下町など)向けの各6億円の施設整備準備金を目的積立金として持ち込むことにした。関連施設(支店建て替えと集荷場)は既に建設済みである。
本店はスペースの関係で2カ所に分かれた。旧JAあいづ本店を管理・信用部門、旧会津みどり本店を営農経済・共済部門の本店とした。本店間は車で20分程度だが、稟議書の決裁には1か月かかることもあるので、次期3か年計画で統合することとしている。
出資金1口当たり金額は、旧3JAが1口5,000円、1JAが10,000円であり、低くすると出資金の流出を招く恐れがあるという反対があったが、組合員増加のために1口1,000円とした。
職員の基本給はJA間に差があったが、合併前に調整せず、全県的に2019年度から役割等級制を導入することとしている。ボーナスは合併後の経営状態に応じた一律の支給率としたので、旧JA職員間で損得が分れた感がある。週休2日制については1JAが4週7日制だったが、週休2日に統一した。
賦課金は、面積割と戸数割の併用と戸数割のみのところがあったが、戸数割1,000円に統一した。手数料は、独禁法との関係で事前調整はできず、組合員に合併に賛成してもらうために、園芸手数料については合併後に低い方に合わせて3%とした。
出資配当率は0.5~3.0%の幅があったが、1%とした。2017年度の剰余金処分では、出資配当は全体の12%を占めるが、「組合員に対する最低限の約束」として実施している。
事業利用分量配当はJA会津いいでが合併2年前から米について行っていたが、合併後は何を基準にするか結論が出ず、やらないこととした。またJA会津いいでは総合ポイント制をとり、座談会出席にまでポイントをつけていたが、ポイント制を全域に導入すると費用が大きくなるということや、現在の仕組みは直売所に対応していないということで、検討中である。准組合員割合が38%と低く、打って出るには総合ポイント制も検討対象になる。
支店は合併後3年間は統廃合しない約束である。
◆地域バランス優先の理事会制
県中央会からの要請で経営管理委員会制も検討した。賛成論もあったが、県内では必ずしも成功していない、理事会制に戻したケースもある、理事会との二重構造ととられる、今までのやり方を継続したほうが混乱が少ない、といった理由で理事会制のままとした。
関心はむしろ理事数とその選出方法にあった。管内には17市町村があり、そこから1人も理事が出ないのは困る、代表権をもつ者は4地区から平等にでるべきという組合員感情が強い、定数は各地区均等ではなく事業分量割にすべきといった意見に応えるため、定数は46名(組織代表42名)と多くなった。各地区からの組織代表4名が、組合長、専務ポスト3に就くことになり、各地区からの現職学経理事など職員経験者4名が事業別専任常務ポストに座った。
代表権をもつトップに組織代表を置き、職員経験者の学経を実務担当役員に充てるのは、理事会制と経営管理委員会制をミックスした巧妙な配置でもある。
総代は、集落(「農事組合」の名称が多い)が全部で1,054あり、そこから1名と言うことで定数1,000名にした。うち女性10%を目標としている。
理事定数の事業分量割合別の地区配分、旧4JA(地区)からの常勤役員4名体制、総代数≒農事組合数というのがJA会津よつばの特徴である。
◆3年限定の地区本部
会津の合併事務局は地区本部制を採ると旧JAの権限が強くなるとして、本店直轄制の意向だったが、中央会から地区本部制を提案され、旧JAから新JAへのソフトランディングにも配慮して、3年という期限付きで、旧JAごとの4地区本部制を採用した。
役員が地区本部長に就くと組合長(旧農協)と同じになってしまうとして、職員を配置した。地区本部(長)は信用・共済事業上の権限をもたず(同事業は本店-支店直結)、営農指導事業の一部について権限を持つが、分荷権ももたない。地区のイベントや行政対応が主で、「形式的地区本部」とも評されたが、結論的には、いきなり37支店を本店が統括することは難しく、地区ごとの相違が残る間は地区本部が地区内のとりまとめをするうえで有効だと現在は評価されている。地区本部長は理事会の臨席メンバーとして地区の事情説明や要望をとどける立場にいる。行政との関係は、地区本部長が行政の事務方との間に入り、地区出身の常勤理事と調整しながら連携している。地区の宛て職にはその性格に応じて地元理事もしくは地区本部長がトップの席に着くことにしている
地区本部は簡素型と大所帯型に分かれる。前者は4~5人体制で、地域支援課しかもたない、あいづ地区本部(会津若松市など)、みなみ地区本部(南会津町など)である。
後者は20~30人体制で、地域農業振興課ももつ、みどり地区本部、いいで地区本部である。
地区本部のあり方の相違の背景には、例えばみどり地区本部は7町村もかかえるといった管内自治体数や、営農経済センターの配置の違いがあったものと思われる(次回に続く)。
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