JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第59回 「真のJA自己改革にむけたJA経営の今後のあり方を探る」 ―「JA人づくり研究会」第29回研究会の報告・討議の紹介―2018年6月30日
次に第2報告として、JA福岡市専務理事宗欣孝氏の「農協改革、JA経営をめぐる状況認識とJA自己改革の実践と課題、今後の対応方向」を紹介しよう。
まず、JA福岡市は経営理念として「私たちは、人と自然とのかかわりを大切にし、地域に愛されるJA福岡市をめざしています」という理念のうえに立ち、経営方針として「福岡市"食料"農業協同組合をめざす」と掲げているという所信表明を力強く述べた。
そのうえでJA福岡市は「不断の改革」として昔から取り組んできたと力強く語った。
(1)「減農薬米」への取り組み
そのため、昭和56年から全国に先駆けて一貫して減農薬米に取り組み、「安全・安心」が結局組合員農家の手取りの増加につながった。これは、農業改良普及員だった宇根豊さんの指導の賜物だったと言われた。現在も、虫見板やアイガモ農法、ジャンボタニシ農法を駆使して無農薬米を生産・販売しているが、生協のグリーンコープなどと連携し、組合員の所得増加・安定につながっているという。こうした米の生産・販売戦略と合せて資材購買コストの低減、ライス・センターの効率化・コスト低減などにも合せて取り組み成果をあげている。
(2)都市JAの役割
JA福岡市は都市型JAとして、多彩な相談事業も大きな活動の柱となっている。
まず、宅地建物取引業は昭和43年から取り組んでおり、融資総額は2000億円にもなった。また青色申告会の中には法人部会もあり組合員は100人(社)を超えた。さらに、地場の建設業者や不動産業者が加入している共栄会は昭和60年からあり会員は283社。そのための総合相談係が各支店に1人ずつおり、また職員の資格取得も進め、税理士1人、宅地建物取引業免許58人、ファイナンシャル・プランナー1級資格認定者58人と都市農協にふさわしい人材育成につとめている。さらに平成28年10月からは「民事信託」の業務も開始した。これは組合員の認知症対策とも言ってよいもので、多彩な組合員の相続相談にも対応しなければならないからです。
(3)アクティブ・メンバーシップの強化
この推進の要は「支店行動計画」です。支店行動計画は全国のJAに広がりつつあるけれど、他のJAでは1支店1協同活動と言われているが、私は、職員には「金融・共済だけが仕事ではない、支店における協同活動のプロデュース、これが特に支店長の大きな仕事だ」と話し、職員と組合員が一体で進めることで組織の結集軸になるように推進してきている。
そのためには、求められる職員像として、「農を思い、食を考え、協同組合運動を理解する職員」、「組合員・利用者の気持ちを察して行動できる職員」と朝礼ではこれを唱和するようにしています。
(4)准組合員対策について
私どものJAにとっても大事なのが准組合員対策です。平成13年から組合員の加入促進運動を進めてきた。毎年、100人の加入を促進するということで、各支店に目標を配分して取り組んでいる。准組合員は右肩上りで増えている。増えていく准組合員に対して、JA福岡市は、「福岡市"食料"農業協同組合として、地域の皆さまに安定的に食料を供給し続けるとともに、万一食料不足等が起こった場合にも、正組合員農家が丹精込めて生産した米・野菜などを准組合の皆さまに優先的に供給します」と言っています。昨年の秋に「JA report」を作り配布。農業協同組合は食料を提供する協同組合だと伝えるため、「食料」という言葉を入れた。これを職員がくまなく配布して共感を呼んでいる。
(5)JA収支の構成―「循環型総合事業」が重要である
JA福岡市の部門別損益は、信用、共済がプラスで営農と相談事業が赤字。信用・共済の収益を回している。回すことで営農指導事業がしっかりできて、地域に食を提供できるという姿を作っている。こういう「循環型総合事業が大切だということを組合員にも職員にも話しています。そのためにも広報活動、特に広報誌「Jam」に力を入れ、毎月1万3300部発行し、情報誌「JA通信」は年4回、2万3500部を発行・配布している。その他、ラジオ、SNSも活用している。
(6)全組合員調査に向けて
全組合員調査は実施するが、マンションに住む准組合員などはやはり難しい。
「自己改革をやってきたか」と問われればやってきた自負はある。JA福岡市は、今までやってきたことを今後も実直に進めて、それらが組合員にきちんと伝わるようにしていくことが基本だと考え、これまでの路線を更に深めつつ進めていくつもりだ。
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今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】
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