JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:緊急寄稿-平成の農協合併を考える

【田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授】

2018.08.03 
「地域ぐるみ農業」と農家組合再編 JAいわて花巻(2)【田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授】一覧へ

◆農家組合を再編

 JAは一貫して「地域ぐるみ農業」をめざしてきた。高齢化や離農が進むなかで農業・農地を維持していくには、一方で担い手に農地集積しつつ、他方では集落営農や高齢者が取り組める「人手のかかる作目」(花卉園芸作など)の導入で少しでも多くの者を農業にとどめようとするものである。 そのため、JAは二つのことを目指してきた。一つは営農やJA運動の基礎を農家組合におく、もう一つは自治体との連携である。
 前者から見ていくと、それにふさわしい農家組合の再編をはかってきた。花巻地域では、1989年の合併時に農家組合を200組合から154組合に再編した。2008年のJAいわて花巻への合併と前後して、遠野地域は200→100組合に、北上地域と西和賀地域は2012年までにそれぞれ263→82組合、60→32組合に再編した。JA合併と農家組合再編の合わせ技がJAいわて花巻の特徴である。
 古い歴史のある農業集落(むら)は簡単に再編できるものではないが、あくまで営農やJA運動の土台としての農家組合を再編しようとするものである。具体的には、農地集積や集落営農化のためには、従来の10~30戸程度の農家組合では狭すぎ、70~100戸に再編しようとする。単純に言えば「2つを1つにする」、あるいは「むら」(農業集落)単位から「大字」(藩政村)単位への再編である。

 

◆農家組合を支援

 正組合員戸当たり(2016年度からは農家組合活動に協力する准組合員を含む)4500円の助成を総額9000万円計上している。農家組合は営農部と生活部からなり、営農部は集落営農ビジョンの策定、農地水環境対策、土地利用調整、生産資材の取りまとめ、生活部はJA農業まつり(4地域単位)、ふれあいプラン(支店まつり)、さなぶり等のイベント、健康管理等に取り組む。また全職員に「1人1農家組合」を担当させている。
 東日本大震災に際しては農家組合長を通じて農家に白米一升の救援米を依頼し、46㌧を集めている。生産資材のとりまとめは、肥料93%、農薬88%に及ぶ。また米の集荷対策費として1kg2円が農家組合に支払われる(目標達成の場合にはさらに1kg3円)。JAは「米集荷200万袋運動」を展開しているが、17年は天候不順もあり164万袋にとどまった。
 JAは、カントリーエレベーター(CE)を自主運営する利用組合法人4つの設立を支援した。JAが出資・運営すると農協依存になってしまうので、敷地は農協が借地確保し、事業費は「強い農業づくり交付金」で5割、自治体とJAが各1割、残り3割を地元が設立した利用組合法人で負担し、独立採算で運営している。自分たちで運営するため利用率が高まり、80~100%に達している。農家組合や集落営農がCE利用組合法人の受け皿になる。

 

◆行政とのワンフロア化

 21世紀の農政は農地集積や生産調整で地域任せの傾向にある。それに対応するため、07~08年に市農政課(次いで市農林水産部全体)、JA営農振興課、農業改革推進室がJA敷地内に移り、ワンフロア化を実現し、08年に農業委員会も加わった。2014年に花巻農業振興公社(市やJAの出資による農地利用集積円滑化団体)も合流し、農地中間管理事業への取組となった。その実績は次のようである。
 集落営農ビジョン=人・農地プラン:JAは担い手への農地利用集積計画や集落営農のビジョンを支店ごとに説明し、農家組合単位に155の集落営農ビジョンを策定し、市はそれをJA支店単位にとりまとめ、市全域をカバーする16の人・農地プランを策定した。
 集落営農の組織化:JA管内全体で2016年には集落営農法人99、任意組織67(うち意向5)になる。法人化は次に述べる農地中間管理事業との関係で急速に進んだ。うち花巻地区の法人は転作受託組合を前身とし農家組合を基盤とする組織で、かなりの利用権設定をしているが、機械を有する構成員は自分で耕作し、管理作業は出来る限りは地権者戻ししている。
 北上市では、二子中央営農組合のように、JA二子支店をエリアとし、その12農家組合のうち3つが主となり、うち1つは再編された組合である。里いもの特産地としてGI(地理的表示)の申請中で、その連作障害を防ぐためにも法人に利用権設定して、法人の農地として割り当てる必要がある。
 農地中間管理事業の取組:花巻市は同事業により担い手への集積や集落営農の法人化を図るなどして、2015年度には集積協力金4053ha、12.3億円、16年度には1052ha、2億円を取得している。17年度は激減し直接のメリットはなくなったが、圃場整備の地元負担をゼロにするための「促進費」を受けるには地域の集団化率80%等を条件づけられるので、取組は継続されている。担い手集積率は2016年で56%である。
 水田フル活用:2011年に農業再生協議会に統合され、JA組合長が会長を務め、JAが事務局を担うようになっている。2018年にはコメ直接支払交付金がなくなり、9.5億円減になり、それをカバーするには1俵1000円高く売る必要がある。
 そのため、2017年産は米生産調整の深掘り(超過転作)を814ha行ったが、18年産はそれをやめ、備蓄米、飼料用米を減らし加工用米を増やす計画である。具体的には大手酒造メーカーとの契約栽培5000tに取り組む。

 

◆合併10周年

JAいわて花巻の推移 左の表に合併10年の推移を見た。2007年は合併前のJAいわて花巻の数値で、2008年が合併初年度になる。合併でJAのサイズはほぼ倍化した。
 合併前から農業関連事業が一貫して黒字であること、合併後は農業関連事業の黒字で営農指導事業の赤字をカバーできていること、正組合員一人当たり営農指導事業の経常収支の赤字額(どれだけ営農指導に利益をつぎ込んでいるか)は合併後も3.0万円水準を維持していること(全国平均2.5万円)、がまず特筆される。
 しかしながら農産物販売額は、主として米価下落により80%にとどまる(ここ3年は5%ほど伸びている)。生産購買も82%にとどまる。
 経常利益の共済依存度がなお高いが、その共済の長期保有高が大きく落ちている。加えて信連からの還元額の大幅減少が確実に見込まれる。そのなかで、これまでの産地農協体制をどう維持するか。
 正組合員は12%減ったが、准組合員の伸びは6%にとどまった。そのことが貸付の減や共済の保有高減少の一部につながっている可能性があるとすれば、准組合員数とその事業利用の意識的拡大を図る必要がある。農協は広報紙『ポラーノ花巻』を発行しており、准組合員向けになる記事も多いが、配布は支店任せである。直売所「かあちゃんハウスだぁすこ」の50万人弱の来客には准組合員も多かろう。仕掛けは既に作られているので、後は位置づけである。
 JAいわて花巻は10年ごとに合併してきた。そして最後の合併から10年が過ぎた。今や合併とは違う形で産地農協サバイバルの課題にどうチャレンジするかが問われている。

(上の表をクリックするとPDFファイルが開きます。)

 

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