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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2018.10.13 
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第65回 牛の"舌刈り"で資源を活かし、牛を殖やし、環境を保全する一覧へ

 九州の本土では最も高い九重山の山麓にある大分県朝地町温見(ぬくみ)の温見畜産振興会をかつて訪ねたことがある。
その代表をされていた小野大蔵さんが、「うちの牛は一言で言えば"した刈り"をさせて肥らせているんだ」と言った。
 私は、牛に「『下刈り』をさせているとはどういうことか」と聞いたら、「牛の舌で刈らせている。『舌刈り』だ」と言われて、なるほどと手をたたいて理解できたことが、今でも忘れられない。
 その"舌刈り"という言葉の中に、広々と茂っている未利用資源をいかに活用しつつ牛を肥らせているか、さらに環境保全に寄与しているか一石三鳥とも言える意義に胸を打たれたことが、今でも忘れられない。

 

◆牛がクヌギを育ててくれる

 さらに具体的に小野大蔵さんたちの実践を紹介すると、山麓の草原はもちろん、クヌギ林あるいは、7~8年生までのスギやヒノキの林にも牛を4月から11月頃まで放牧していると言う。もちろん、バラ線で牧区を切ってあり、順序よく草を食べるように回しており、仔牛は山の入り口に丸太を組んだトタン屋根の非常に安価に見える小屋につないであり、親牛は乳を飲ませに定期的に戻ってきているようであった。その折に、親牛についても健康状態をきちんと観察していると言っていた。後はすべて牛まかせで手は掛からないと言っていた。もちろん牛の飲む水は小川を簡単に石を積んでせき止めて牛の水飲み場を作ってあった。
 クヌギの木はシイタケ栽培のホダギとして最もすぐれているが、それにヤマイモのツルなどが巻きつくと、シイタケの原木としては非常に価値が落ちてしまうと言う。
 ところが、逆に牛はそういうツル草などがもっとも好物で、全部引きずり落して食べてくれるという。さらにクヌギの周りの雑草の下草などもきちんと食べてくれるだけでなくひずめで木の周りの土を適当に耕してくれるばかりでなく、糞尿も肥料としてすべて還してくれるという。

 

◆クヌギの伐期が早まった

 そういうわけで、クヌギの育ちも放牧前よりも非常によくなり、品質も向上してきたという。
 この辺りでは、クヌギは、その伐期が通常は平均して13~14年だが、牛を放牧したクヌギ林は成育がよくなり、伐期が短縮されて、10年になっていると小野さんは言っていた。
 さらに、この地域周辺でもモウソウ竹が猛威をふるって繁茂してきていたが、牛はモウソウ竹のタケノコが大変な好物で、春のタケノコの出る時期に放すとものすごい勢いで食べてくれるという。
 関西以西の地域はどこでも、とりわけ九州ではモウソウ竹のものすごい繁茂に悩まされているが、牛の放牧により退治する以外に私は手段が無いのではないかと考えている。
 タケノコの出る頃、さらに若竹の頃に放牧すればタケノコは退治できるのではなかろうか。読者の皆さんの意見を聞きたい。

 

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