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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第89回 中山間地域、とりわけ棚田地帯を生かす和牛の放牧をいかに推進し実践すべきか(第4回)2019年6月29日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

1. 牛の"舌刈り"に一石三鳥の意義

 九州本土で最も標高の高い九重山の山麓にある朝地町温見(ぬくみ)の温見畜産振興会をかつて30年程前になるが訪ねたことがある。
 その代表をしていた小野大蔵さんが「うちの牛は一言で言えば"した刈り"させているんだ」と言った。
 私は「牛に下刈りさせるとはどういうことか」と質問したら「牛の舌で刈らせている。舌刈りだ」と言われて、なるほどと手をたたいて理解できたことが、今でも忘れられない。
 その「舌刈り」という言葉の中に、繁茂して困り果てている野草という未利用資源をいかに牛の飼料として生かすか、また伸び放題になって環境破壊という困りものになっている野草を美しい状態に保全し、美しい景観を作りだしていることにも九重山を遠望しながら胸を打った。

 

2. クヌギの伐採期も早め質も高める

 牛の放牧の意義はそれだけではない。
 小野さんたちは、野草の中へ牛を放すだけではなく、クヌギ林はるいは7~8年生までのスギやヒノキの林にも牛を4月から11月あるいは雪の降る12月まで放牧していた。
 もちろん、バラ線で牧区を切ってあり、順序良く草を食べるように回しており、子牛は放牧場の入り口に丸太を組んだトタン屋根の非常に安価に見える小舎につないであり、親牛は乳を飲ませに定期的に戻ってきていた。その折に親牛の健康状態などの観察をきちんとしていると言っていた。後はすべて牛まかせである。
 クヌギの木は椎茸栽培のホダギとしてはもっともすぐれているが、それにヤマイモのつるなどが巻きつくと、シイタケの原木としては非常に価値が落ちてしまう。
 ところが、逆に牛はヤマイモのつるなどが大好物で全部引きずり落して食べてくれるという。さらに木の回りの雑草など下草もきちんと食べてくれるだけではなく、ひずめで回りの土も適当に耕してくれるばかりか糞尿も肥料としてすべて還してくれるという。
 そういうわけで、クヌギの育ちも放牧前より良くなり、クヌギの通常の伐期は13~14年だが放牧地では8~10年になっているという。それだけではなくクヌギの品質も放牧前より良くなったと小野さんは言っていた。

 

3. 棚田にも放牧

 小野さんたちの放牧地の入り口には棚田が広がっていた。そこにも牛たちは水呑みに来るだけでなく、昔の水田に播かれたレンゲや色々の牧草を食べにやって来ていた。
 「もともとは、ここは貴重な水田だったので水稲をきちんと作っていたが、米の生産調整が厳しくなってきたので、稲の作付けはやめて、牛の放牧地にしたんだ。石積みの棚田だが、一切手は加えずに水口を切って、小川には水が流れていて、牛の水呑み場にはなっているよ。牛は利口なもので、石積みなどうまく越えて自由に動き回っているよ」と言っていた。さらに、昔の棚田はやはり地力が高いので、草もよく茂るし、牧草の種をまけばよく成長してくれて、野草の草原地帯ともよく補い合っているんだ、とも小野さんは話していた。

 

4. モウソウ竹をいかに退治するか

 関西以西の中山間地帯、中国、四国はもちろん九州ではモウソウ竹の猛威に、いま困り果てている。竹粉や竹炭などへの活用法なども開発されてはいるが、モウソウ竹の繁茂の猛威の前には焼け石に水という状況である。
 このモウソウ竹の退治には和牛放牧しかないのではないかと私は考えている。
 春先のタケノコの出る時季に、牛を放せばものすごい勢いでタケノコを食べてくれる姿をこれまで、各地で観察してきた。
モウソウ竹は杉や桧の美林にもどんどん侵入するだけではなく、荒廃しつつある棚田地帯やさらに山村の居住地域にも侵入し止まるところを知らない状況である。いまや、西日本、九州の中山間地域対策の大きな政策課題としてこのモウソウ竹対策が浮び上がってきているが、和牛の放牧という手法をさらに磨き、広めることによってしか、打つ手はないのではないか、とまで私は考えている。
 皆さんのご意見を広く頂きたいと思う。

 

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