JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第37回 連作障害を防ぐ2020年1月31日
前回は、連作障害を回避する手段の一つ耕種的防除法について紹介しました。今回は、もう一つの戦略である土壌消毒について紹介します。
1.土壌消毒とは
農作物は、需要者から求められる数量の確保や安定供給のためには、どうしても連作しなければならないことがあります。その場合、短期間で連作障害を回避しなければならないことがしばしばあります。そのような時に行われるのが土壌消毒であり、特に土壌病害虫が原因の連作障害には、高い効果が期待できます。その方法は、太陽熱消毒など熱を使うものや、土壌消毒剤を使うものなどがあり、土壌病害虫の種類によって効果のある方法が異なるので注意する必要があります。以下に、主な土壌消毒法を紹介します。
(1)太陽熱消毒
太陽の熱で、十分な水分を入れ、ビニールなどで被覆した土壌の温度を上昇させることで、中にいる土壌病害虫を熱によって死滅させる方法です。このため、土壌内部の温度をどれだけ上昇させることができるかが鍵となります。連作障害を起こすたいがいの病害虫は、およそ60℃の温度で死滅してしまうため、土壌内部の温度をいかに均一に60℃に到達させることができるかで成否が分かれます。太陽光でこの温度まで上昇させるためには、施設を密閉して十分な太陽光を当てる必要があり、夏場にカンカン照りになる西南暖地などの施設栽培向きの消毒法です。夏場の日射量が少ない地域では、地中温度を60℃に到達させることができない場合もあるので、そのような地域には、次の土壌還元消毒法の方が向いています。
(2)土壌還元消毒法
この方法は、フスマや米ぬかなど、分解されやすい有機物を土壌に混入した上で、土壌を水で満たし、太陽熱による加熱を行うものです。こうすることで、土壌に混入された有機物をエサにして土壌中にいる微生物が活発に増殖することで土壌の酸素を消費して還元状態にし、病原菌を窒息させて死滅させることができます。またその過程で、混入された有機物からは有機酸が発生し、これが病原菌を死滅させる作用を示します。このように、有機物を土壌に入れることで太陽熱消毒よりも低温で効果を示すことができるので、北日本など日照の少ない地域でも利用が可能な方法です。
ただし、十分な効果を得るためには、還元作用により発生する悪臭(どぶ臭)がでてくるまで十分な期間がおく必要があります。この悪臭は、近隣に住居があるようなほ場ではクレームが起こる場合もあるので注意が必要です。
(3)蒸気・熱水消毒
文字通り、土壌に蒸気や熱水を注入し、土壌中の温度を上昇させて消毒する方法です。病害虫を死滅させる原理は太陽熱と同じで、いかに土壌内部深いところまで温度を60℃にまで上昇させるかが鍵です。この方法を実施するには、お湯や蒸気を発生させるためのボイラーや土壌に均一に注入するための設備や装置が必須です。このため、導入のための設備投資と大量に消費する燃料のコストを考慮する必要があるので、個人での導入というより、地域一体となった共同利用といった大掛かりな取り組み向けの技術です。
(4)土壌消毒剤による消毒
効果の安定性やコスト面から考えても、現在の技術で最も一般的なのが土壌消毒剤による土壌消毒です。土壌消毒剤には、揮発性で臭気や刺激性のガスを発生させるものが多いので、使用する場合には、作業者の安全、近隣の安全を十分に考慮し、被覆を行うなど、使用ルールを確実に守ることが重要です。その特性や効果の範囲を別表に整理したので、それらを良く把握した上で、効率よく安全にご使用願います。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
【今さら聞けない営農情報】
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