JAの活動:JAアクセラレーターがめざすもの
「見える化」で生産者応援 テラスマイル 生駒祐一代表取締役【JAアクセラレーターがめざすもの】2020年8月24日
農業新時代を拓くキーワードは生産・販売に関わるデータの「見える化」で生産者が「連携」を強め産地として生産力の底上げを図っていくことだ。
今回は農業に特化した情報基盤を生産者に提供しているテラスマイル(株)の生駒祐一代表取締役に同社がめざす日本農業の未来を聞いた。
テラスマイル 生駒祐一代表取締役
―事業の概要からお聞かせください
創業は2014年ですが、実際に走り出したのは2017年です。全ての営農者を豊かにし、国家を守ることを創造する、を理念としています。とくに若手の生産者を支援するための農業に特化したデジタルとアナログの情報基盤を提供しています。
具体的にはデータはたくさんあっても、それを1つにまとめて分析して示すことが農業の現場では非常に大きな課題になっていることから、私たちは「RightARM」という農業情報基盤を作りました。これによって情報を一元管理し、さらに分析する方法なども提供することで、営農支援をよりデジタルにしていこうというのが私たちの狙いです。
喜ばれている点は3つあって、1つ目は「見せるためのデータを作る時間が不要になった」というもの。説得力のあるデータを作るためには様々な元データを集計・加工する時間が必要ですが、それが「RightARM」の導入で要らなくなったということです。
2点目は、これまではデータを集計・加工するだけで疲れてしまい、その分析までとなると大変だったのが、「RightARM」のおかげで分析に特化してより説得力のある資料が作成でき、営農指導にも余裕ができると喜ばれています。
3点目は、今後は補助金を活用して経営拡大するためには根拠のあるデータが必要です。「RightARM」があれば説得力のある根拠データを簡単に示すことが可能だと現場から評価してもらっています。
ただし、根拠を示すための元データを集める作業はユーザーにやってもらわないといけません。栽培管理システムや、温度管理センサー、収穫ロボットで集めた様々なデータを整理し見える化するツールと分析のノウハウが「RightARM」だと考えていただければと思います。
―具体的な活用事例をお願いします。
かつて日本一を誇った宮崎のピーマンですが、茨城や高知に抜かれ、若手生産者の間に「再度、産地をナンバーワンにしたい」という思いがあり、西都市の生産者グループから私たちに声をかけていただきました。
やったことはまずヒアリングをしながらみんなのビジョンを明確にし、それにあわせてデータを分析しながら、月1回農業者が主体となって集まっている勉強会に参加し、分析した知見を紹介したということです。毎週、各自の圃場を回る産地巡回も行われていました。その結果、10人の平均収量が2015年に10トンだったのが、15・8トンまで上げることができました。今年は過去最高の人が反収25トンとなり、おそらく日本でトップクラスの収穫量の多い土耕冬春ピーマン農家集団に成長していると聞いています。
そこに到達するために私たちが何をしたかというと、ハウスに設置した各種センサーのデータと選果場のデータなどをデジタル化し、サイズ別の売り上げ実績や時系列での出荷実績などを見える化して、どの時期に出荷すればいいかなどを検討する素材を準備しました。
市況データも組み合わせながらどの時期に市場に出せばいちばん儲かるかなどもデータを準備し、皆で検討しました。その結果、厳寒期にも栽培、出荷できるようにすることが高収益への近道であることがわかり、県普及センターの指導のもとでCO2発生装置をみんなが導入し、土づくりもマニュアル化して共有しました。
また、11月の雨の時期の管理をきちんとやれば1、2月の収穫量が上がるということがわかったので、みんなでその時期にほ場巡回し、管理を徹底しました。その結果、全員の収量を上げることに成功したと分析しています。私たちは、裏方となってデータを見える化し、分析手法に基づき知見を提供しました。
現在、この営農モデルは県内11か所、南九州15か所で取り組まれています。品目も施設園芸だけでなく、露地野菜、施設果樹、茶へと広がりました。また、昨年は隣県のJAナス部会のメンバーが視察に来てこのモデルを学び、ナスでも厳寒期に栽培、出荷できることを農業者が検討し始めるなど拡がりが出ています。
このように「RightARM」はこれまで現場のみなさんがやりたくてもやれなかったことを、やれるようにするために必要な根拠データをわかりやすく提供することができると思っています。つまり、これまでモヤモヤしていた部分を明確にして解決できるようにするということです。まさに、農業者の右腕、RightARMの目指すところです。
―JAアクセラレーターとしてはどんな提案をしていますか。
1つはスマート農業の実証事業に関するパッケージをつくりたいということです。国ではスマート農業に関する実証事業を推進していますが、通常は、申請方法やKPI(重要業績評価指数)の示し方など、手を挙げたくてもどうしたらよいか分からないという産地もあるようです。そこで、私たちが申請を手助けするパッケージを提供することによって、本当に力があるのに申請できていなかったJAや産地が実証事業を活用できるようになって欲しいという思いです。
もう1つは若手の生産者に各種センサーのデータの活用や分析をしたいという人が出てきていますから、それに必要なスキルを教育できるようなオンラインの教育プログラムづくりなどを提案しています。
―これからの日本農業についてはどんな思いをお持ちですか。
実は私は「次はJAの部会の時代だ」だと思っています。私自身も経営者ですし、農業者の中にも"農業経営者"の志向を持つ方がどんどん出てきました。現場にいると大規模な法人経営が地域の農業を引っ張っていっているだけでなく、がんばって生き残ってきた若手生産部会もあって、これからは「個」ではなく「群」の部会から日本の農業が伸びていくというストーリーがはじまったらおもしろいと思っています。小さいけれどパワフルな生産部会が大きく発展していく、そんな世界を創っていく手伝いをしたいと考えています。
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