JAの活動:農協時論
【農協時論】第一次産業革命運動による地域再生に期待して JAみやぎ登米元組合長・阿部長壽2021年9月9日
8月25日に発表された2020年度の食料自給率は37.17%と史上最低を更新した。今回の農協時論で阿部長壽JAみやぎ登米元組合長は「亡穀は亡国の道」だと強調、食料だけでなく再生可能エネルギーも含めた自給に向けて農協運動を展開すべきときにあると主張する。
JAみやぎ登米元組合長・阿部長壽氏
第一次産業の現状について、気になっていることを述べてみたいと思います。戦後、平和憲法の下で日本経済は飛躍的な発展をしてきましたが、今日では都市集中、地域過疎という国家構造・経済問題の顕在化です。「人(少子・高齢化問題)・食(食料・農業問題)・環境(原発・地球温暖化問題)」等をめぐる問題です。
「人」の一番の問題は少子高齢化です。その背景は『地域の過疎化』の問題であり、特に子どもの減少は農村地域の「廃校」に象徴されます。また、高齢化が進み耕作放棄地が激増して空き家も増えて、農村地域社会は崩壊しつつあります。地域農業がはぐくんできた食文化も失われてきています。農業・農村の危機は国家存亡の危機でもあります。安全な国産食料ばかりか多面的機能までもが損なわれかねない、都市住民も無関心ではいられないと思います。国家存亡にも視点を据えた第一次産業論議が『農協運動の今日的課題』として活発化することを期待したいと思います。
また、「食」の問題であります。国の発表によれば食料自給率は37%でありますが学者・研究者は、現状の農業崩壊がすすめば限りなく食料自給率は低下し食料の他国依存国になりかねないと警告しています。農業・農地は日本国民の共同資源であり、国家・地域社会が成り立つための基盤であることは言うまでもないと思います。「亡穀は亡国の道」と言われます。食料自給を主体にエネルギー自給問題など第一次産業政策運動を重視する農協運動の展開を求めるものであります。
次に、「環境問題」です。福島原発事故以来、わが国の電力はどのようなエネルギーでまかなうべきか、国民的な課題になっています。菅義偉首相は2020年までに温室効果ガスの排出をゼロにすカーボンニュートラル宣言(脱炭素)と同時に原発利用継続宣言をしました。「食の安全・安心を守り、環境を保全」する原発廃止の国民運動が問われています。ドイツのメルケル政権は、福島原発事故直後に原発廃止を決め、2022年までに再生可能エネルギーに切り替えることを決定しました。日本もドイツと共に脱原発をするべきであるという世論が高まっています。再生可能エネルギー資源は農山漁村の第一次産業資源であり、その活用は国の産業構成に直結し、地球温暖化対策や地域経済の活性化にもつながり、日本は脱原発を決めて再生可能エネルギー生産に取り組むべきであります。
食料自給資源も再生可能エネルギー資源も第一次産業資源であり、農協運動を基軸として「食料自給と再生可能エネルギー自給」を目指す、生産者・消費者の「産消提携活動(協同組合間共同活動)」による『第一次産業革命』運動の展開を提案するものです。
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