JAの活動:農協時論
【農協時論】人材育成の本質―農家に寄り添う営農生活が基本 仲野隆三・元JA富里市常務理事2022年3月7日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA富里市常務理事の仲野隆三氏に寄稿してもらった。
仲野隆三
元JA富里市常務理事
「将来のJA中核人材が待ち望まれている」とJA全中の戦略型中核人材研修の取り組み記事を見て"そうなんだよな"と思いながら「JA全中人づくり研究会」や「JA総合営農研究会」の取り組みを思い浮かべる。いまは亡き今村奈良臣代表(東京大学名誉教授)の「この研修で学んだことをもち帰りJAで生かしてほしい」が口癖だった。
本紙でJA戦略型人材育成研修会やJA全中の農業コンサルタント認証制度の創設を読み、これからのJAは高度な経営支援が必要だと認識した。
営農活動は組合員のおかれた環境により大きく変わり、これまでの家族型経営体から大規模化した法人経営体まで生まれている。営農種目は米から野菜、花き、果樹、畜産、施設園芸や特用林産物まであり技術、販売資金調達など高度なマネジメントが要求される。
その意味で営農指導員の役割が期待されるのだが、農業経営コンサルタントとなると農業経営の分析も含め高度な知識技量が求めれると考える。JAが大規模化(1県1JAなど)する中で果たして人材育成できるのか、専門性も考慮するなど含みがあるやに思うが本所や事業本部制、支所数など人材育成と張り付けをどうするのか先が見えない。
話しは戻るが、自身の営農指導員経験から「組合員の営農生活にどう向き合うか」であろう。相談がなければ動かないようでは営農指導員の資格はない。組合長から終生「専門職だと命じられ」三つの指令が出され一つは生産技術の平準化、二つが新たな作物導入、三つめが生産など組織育成だ。組合員戸数1400戸で53、54キロ平方の管内をバイク1台の機動力と机1個、電話1台が営農指導員のはじまり。JA営農事業計画策定から土壌診断と施肥設計、病害防除を一人でこなす。毎日机の上に相談依頼が多数貼られほとんど机に座らず心が折れそうになる時もあった。
そんな時「俺たちの仲間だ組合員から言われた」理由は賦課金で営農指導事業が賄われていることによる。また主婦から"職員はいいよネ"「毎月お足が入つてくるから」と。組合員の営農生活は生産換金作物が毎月あるわけではない。多くは年間6品目を組み合わせる12カ月間の中の春作(換金時期は5、7月)秋作(換金時期は10、12月)のパターンが多い。1年365日間の内、農産物売り上げと販売代金振り込み時期は40、50日間と狭い。この間生活費は子どもの教育費やJA引き落とし等で通帳は印字で真っ黒になる。組合員はそんなことお首にも漏らさないが、女性は現実的にどうしたら毎月売り上げが入ってくるか考える。それを機に組合員の経営に対する営農指導方法を変えた。換金性と栽培サイクルだった。併せて作型を長くとれるものと短く早く終わらせるものなど「生産出荷サイクル」見直し、取引応報も卸売市場に限定せず企業契約取引などを取り入れた。同時に家族労働力を補う機械化と出荷規格の簡素化、短期雇用と1人の常雇確保など経営計画を提案することだ。
数値的に組合員に提案するため、本人の了承を得て過去3年の青色申告届けを分析、その数値をわかりやすくロータス1.2.3(表計算ソフト)で作成、経営計画の比較資料に添付して夜家族会議で説明した。父親は卸市場経由販売を望んだが、農業後継者28歳と母親は経営計画提案を選択、後に父親がJAを訪れ新たな提案を取り入れたいとしてきた。
もう30年前の逸話だが、営農指導員はそこまで組合員の経営指導に携わる必要があった。1年に何日も換金時期がない農業は生活費を捻出する主婦にとって「この職業(農業)」はJA役職員に想像出来ないであろう。まして農家に生まれ後を継ぐ後継者はそんな親の背中を見ながら他産業に流れるのだと。
JAが厳しいのではなく「組合員の営農が変化に対応できる経営体となることが」最大の課題であり農業経営コンサルタント=営農指導員の役割ではなかろうか。
最後に「頭でっかちにならず、現場を歩き家族全員の声を聴く」これがJA役職員に欠けている部分だと思う。
重要な記事
最新の記事
-
産地直送通販サイト「JAタウン」公式アプリダウンロードキャンペーン実施中2025年12月24日 -
焼き芋やスイーツを堪能「三島甘藷祭り」静岡・三島で開催 JAふじ伊豆2025年12月24日 -
愛知県内の全児童養護施設へ新米「あいちのかおり」8トン寄贈 JA愛知信連2025年12月24日 -
あぐラボ「SusHi Tech Tokyo 2026」アンバサダーに就任2025年12月24日 -
松岡昌宏がミルクランド国王に「北海道isミルクランド」始動 新CMも公開 ホクレン2025年12月24日 -
福岡県内3店舗目「カインズ 苅田店」2026年春オープン2025年12月24日 -
東京都日の出町と包括連携協定 健康づくり・地域活性化で官民協働 協同乳業2025年12月24日 -
店舗、宅配ともに前年超え 11月度供給高速報 日本生協連2025年12月24日 -
ベゴニア「バイキングXL」シリーズ 営利生産者向け種子を発売 サカタのタネ2025年12月24日 -
あさぎり牛乳初 人気スイーツ詰め込んだ「新春福袋」発売 朝霧乳業2025年12月24日 -
ヤンマー製作TVアニメ『未ル わたしのみらい』年末年始に全エピソード無料配信2025年12月24日 -
「緑茶飲料の光劣化機構の解明」研究成果が全国清涼飲料連合会賞を受賞 キリンビバレッジ2025年12月24日 -
「日本酒イベントカレンダー2026年1月版」発表 日本酒造組合中央会2025年12月24日 -
震災復興の農業再生へ 福島県浪江町と包括連携協定を締結 フェイガー2025年12月24日 -
山形県・庄内地域の伝統製法 杵つきでつくった「遊佐の丸もち」新登場 生活クラブ2025年12月24日 -
情報提供やDXで厚生連医療を支える 医薬品メーカーは"節度"ある利潤を 日本文化厚生連・東公敏理事長2025年12月23日 -
数字で読む「令和の米騒動」(上) 混乱招いた流通悪者論 集荷後半に"異変"2025年12月23日 -
数字で読む「令和の米騒動」2025 (下) 始まった損切り 小売りにも値下げの動き2025年12月23日 -
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】(4)クリスマスマーケットとホットワイン2025年12月23日 -
神明が先物市場の価格使った契約を生産者に呼びかける【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月23日


































