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JAの活動:動き出す JA農業経営コンサルタント

【動き出す!JA農業経営コンサルタント】(2)「楽しい稲作」構築支援 新潟・農事組合法人カミハヤ2022年3月18日

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JA農業経営コンサルティングは、JA職員が組合員とともに農業経営を総合的に支援することで組合員の目標や夢を実現することが目的だ。令和2(2020)年度に導入されたこのJA農業経営コンサルタント資格認証制度は、この3月に同制度初となるコンサルタント7人が認証された。今回はその1人、JA新潟中央会の山口知洋さんと、支援先の農事組合法人カミハヤの鷲尾徳昭代表理事に聞いた。

(左から)杉本良介理事、鷲尾徳昭代表理事、坂上雅之理事(左から)杉本良介理事、鷲尾徳昭代表理事、坂上雅之理事

カミハヤは新潟市江南区で稲作農家の後継者3人が平成28(2016)年に設立した。経営の中心は65haの水稲。代表理事の鷲尾さんたち3人は40代初め。集落ではほかに後継者は見込まれず、将来は100haを超える農地が集積することも想定している。

将来に向け3人は共同のライスセンター建設をJAに相談して法人を設立した。これを機にJAグループ新潟担い手サポートセンターで担い手支援を担当していた山口さんが当法人の経営支援を行うことになった。

JA新潟中央会 農業地域対策部農政営農課 山口 知洋さんJA新潟中央会
農業地域対策部農政営農課
山口 知洋さん

鷲尾代表は「法人化したほうがいいといわれても、どうしたらいいのか、株式会社と農事組合法人の違いも自分たちに分かりませんでした」と振り返る。栽培技術などは県の普及センターからアドバイスを受けることができるが「経営」についてはJAに相談するしかない。鷲尾さんは法人立ち上げとともに、地元のJA新潟みらいが実施した「農業経営者育成塾」に参加、そこで財務分析や経営理念づくりなどに取り組んだ。その「農業経営者育成塾」にもオブザーバーとして山口さんが関わる。

経営理念は「安心安全で安い農産物」「楽しんで貰える楽な農業」「地域の農業を守る」の三つ。新潟市民の身近なところで米づくりが行われていることを発信し、安全な米を気軽に買える価格で提供していることや、機械化などの取り組みで、消費者に農業の楽しさを伝えたいという思いがある。「地域の農業を守る」には、地域の田園風景を稲作専業で守っていくとの方針も込められている。

こうした理念を掲げたカミハヤに2020年の秋、山口さんは最近の経営状況や今後の課題などをヒアリングしながら、今回のコンサルティングにつなげた。そのポイントをまとめる。

まず、鷲尾さんら3人は労働力の確保が課題だと感じていた。現在は1人が20haを担当しているが、さらに規模拡大しても、けがや病気になれば農作業が回らなくなる懸念もある。やる気のある次世代を早い段階で育成していきたい、が3人の考えだった。

これを受けて山口さんが提案したのが今後10年を見据えた人材確保・育成計画を策定することと、求人にあたって働く環境を明確化した就業規則を作成しておくこと。3人の働き方は「米の生産期間はしっかり働き、それ以外はしっかり休む」である。経営理念でも「楽しく・楽な農業」を掲げている。

これを実現するためにも、12月から2月の農閑期に休日を集中するとともに、稲作の繁忙期でも月4日以上の休日を取得できる就業規則の作成に取り組んだ。こうした就業規則や給与規定の作成、求人票の作成、労働条件通知書兼雇用契約書の作成、社会保険関係の手続き等について支援を行った。社会保険労務士との相談会では同席、稲作農業と同社の実態について説明し、社会保険労務士から適切なアドバイスを得ることができた。

「就業規則の作成は、自分たちの雇い方の教科書を作ってもらったようなものです」と鷲尾さんは話す。その後、求人も行い今年4月から正社員を1人雇用する。

また、これを機に従来の役員報酬額や、従事分量配当の支払い方を見直すとともに、理事個々人の家の経営承継についても行われることになった。

そのほかコンバインや田植え機などの固定資産の取得についても相談を受けた。決算書を分析した結果から、コンバインの購入は新たな借り入れで有利子負債を増やすのではなく、設立から貯めてきた手元資金で取得し、田植え機については直播(は)等を組み合わせて作業体系を工夫することで既存の機械を有効活用するなどの方針を決めた。また、正社員の雇用にあたって、定着してもらうには労働環境も大事な要素になるのではと山口さんから提案し、休憩スペースやトイレ、シャワーなどの設置も進めることにした。

このようにJA農業コンサルティングは、担い手が抱えている経営上の課題にきめ細かく応えていくことが大事になる。

鷲尾さんは「法人化したら経営者になれるわけではない。経営をしたことのない人間が経営をする。そのときに総合的に相談できるのは安心感がある」と話す。また、今回は経営理念や就業規則の作成を通じて「自分たちがなぜ農業をするのか。どんなライフスタイルをめざすのかを考えされました」と話し、農業経営者の思いやこだわりに寄り添ったコンサルティングに期待したいという。

山口さんは農業経営コンサルティングには、生産者にはなじみのない会計、社会保険、労務管理などの基礎知識も一定程度必要だとしつつも「大切なことは担い手が何をしたいか、困っていることは何かを聴くこと。それに即して提案していくことが大事」と話し、「担い手への対応を担当するJAの中堅層にはぜひJA農業経営コンサルタント資格を取得してほしい」と呼びかける。

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