JAの活動:農協時論
【農協時論】食料政策の貧困 現場知らず空虚 日本の飢餓眼前 農業・歌人 時田則雄2022年6月17日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は農業を営む歌人の時田則雄氏に寄稿してもらった。
ニッポンの食の現今憂ひつつ野坂昭如死せり 厳冬
 農業・歌人 時田則雄
農業・歌人 時田則雄
飢餓体験者・焼跡闇市派、作家の野坂昭如が亡くなって、はや8年近い歳月が流れた。掲出歌のごとく、生前、彼は「ニッポン」の希薄かつ近視眼的な食料政策を嘆き続けた。
先月の27日、政府は2021年度の食料・農業・農村白書を閣議決定。新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵略戦争で、食料の安定的供給が危ぶまれると強調しているが、「何をいまさら」だ。野坂が生きていたならば、同様に思うことだろう。
私はいままでに何度も地元紙などに、「食料輸出国が凶作に見舞われた場合、自国民の胃袋を満たすことを優先し、輸入国の国民の胃袋は空っぽになる」と書いた。「紛争などに巻き込まれて海港や空港がその機能を失うと、食料の輸出は途絶える」とも書いた。現にいま、ウクライナは海港が戦禍にさらされ、小麦の輸出が停止し、中東やアフリカ諸国の人々は飢餓に直面している。
2020年度の「ニッポン」の食料自給率はカロリーベースで37%。先進国のなかでは最低である。白書によると、30年までに自給率を45%に引き上げるとしているが、1%引き上げるだけでも容易ではないのに、たった8年で8%も引き上げるのは到底無理というもの。まして具体的な方策を示していないのだからなおさら。誰かがいっていたが、「ニッポン」においては「食料自給」という言葉は死語といっても過言ではない。かつてフランスのドゴール大統領は、「食料を自給できない国は独立国といえない」といったが、同感である。いまの「ニッポン」は独立国ではない。
本紙にも一度書いたが、2015年の「ニッポン」の耕作放棄地は42.3万ha。これはほぼ富山県の面積に匹敵。放棄地には雑草や雑木の幼木が生えており、即耕地として活用するのは困難だと思うが、食料自給率を引き上げる方策のひとつとして、一刻もはやく普通の耕地に戻す必要がある。最近の施政者の大方は炎天下で腰を屈めて草を取ったことはなかろう。農の現場を知らずして、農政は語れない。
―「イギリスは、かつて『世界の工場』といわれて、自由貿易主義のもとで、工業製品をどんどん諸外国に輸出して、食料自給率を下げた国でしたが、それが、今日、小麦についていえば、100%自給、さらに輸出するということで大変注目されています」――。井上和衛著『いま、改めて見直すイギリスの農政転換・農村政策の展開』(筑波書房)より引いた。「ニッポン」の施政者は、こうしたイギリスの農業政策をしっかりと学ぶべきだ。
―「言っておきたい。いざとなったら金でない。食いもののある国が生き残るのだ。よその国などだれも助けちゃくれないぞ。農の営みを自分の眼で確かめることが必要。だが日本の飢餓はもう眼前にある」(野坂昭如著『農を棄てたこの国に明日はない』家の光協会)―。
ウクライナ戦争で肥料も高騰。「ニッポン」の農業は危機的状況にさらされている。農業の危機は国民の胃袋に直結する危機。参議院議員選挙が近づいている。立候補者は百年の計を練り、選挙戦に臨んでもらいたい。
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