JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(16)【今さら聞けない営農情報】第246回2024年4月20日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介しています。
前回までに、ひと通り土壌診断項目をご紹介しましたので、今回から改良方法の基礎知識をご紹介します。まず最初は、pHの改良方法です。
pHは作物の生育に大きな影響を与え、肥料成分によってはpHの高低によって吸収が過剰になったり不足したりしますので、適正なpHに保つことが健全な作物の生育に重要なポイントになります。
まず、pHが低い、つまり酸性に傾いている場合には、アルカリ性の石灰質資材を施用します。
具体的には、炭カル(炭酸カルシウム)や苦土炭カル(苦土炭酸カルシウム)、消石灰といった石灰質資材を施用しますが、施用量は圃場の土壌の種類と石灰質肥料の種類によって異なりますので、事前に必要量を確認して施用します。例えば、pH5.8の土壌pHを1つ上げてpH6.8にする場合の石灰質資材の必要量は、土壌が黒ボク土の場合、炭カルなら300~400kg/10a、苦土炭カルなら280~380kg/10a、消石灰なら240~320kg/10aになります。
反対に、pHが高い、つまりアルカリ性に傾いている場合には、硫黄華などのpHを下げる効果のある資材や生理的酸性肥料を使用します。硫黄華を使用する場合、土壌pHを1つ下げる場合には、砂土であれば土壌100kgあたり55g、埴土であれば同80gといった具合に土性に合わせて使用量を調整します。一方、生理的酸性肥料とは、硫安や塩安、硫酸加里、塩化加里といった肥料成分が吸収された後に酸性物質である硫酸イオンや塩素イオンが副成分として残る資材のことをいいます。これらをpHの調整に使用する場合は、もともとが窒素質肥料ですので、必要な窒素量を考慮して基肥で使用します。
その他、pHの改良幅が小さい場合は、深耕を行って土壌内の成分を希釈するだけでpHが改良できる場合もありますので、土壌診断の測定値に合わせて改良方法を検討するようにします。
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