JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(35)【今さら聞けない営農情報】第265回 2024年9月14日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介してきました。前回までに土壌診断に必要な基礎知識の紹介が済みましたので、現在、処方箋作成の基礎知識を学んでいます。
土壌中に残存する肥料成分は、圃場回りの環境条件やそれまでの施肥・作付け状況によって様々であり、圃場の土壌の状態に合わせた必要資材やその量、施用方法などを示すのが処方箋です。
前回までに、①pH、②EC、③有効態リン酸、④交換性カリ、⑤遊離酸化鉄、⑥有効態ケイ酸の量の確認、⑦交換性苦土の量の確認、⑧交換性石灰の量を確認、⑨微量要素の量の確認、⑩pHの調整と処方箋を決めるため確認・検討プロセスを一通り紹介しました。
いよいよ、これまでの検討事項を加味して必要資材を決定していきます。
まず、作付地域の施肥基準を入手して、それと土壌分析結果を照らし合わせながら、作付けする作物の標準施肥量を決定します。また、堆肥を施用する場合は、堆肥の施用量に応じて化学肥料の削減量を計算します。
標準施肥量を決まったら、その施肥量になるように前回紹介したプロセスの順番に施肥量を決めていきます。その際に使用する資材は、土壌の状態に合わせて土壌改良資材を選定していきます。
大まかな資材の選び方は次のとおりです。
1.pHの矯正が必要な場合の土壌改良資材の選択
(1)リン酸・苦土・石灰が少ない土壌の場合:①ようりん、②苦土石灰、③炭カル(または消石灰)
(2)リン酸・苦土が少ない土壌の場合:①ようりん、②水マグ
(3)リン酸・石灰が少ない土壌の場合:①ようりん、②炭カル(または消石灰)
(4)リン酸が少ない土壌の場合:①ようりん
(5)苦土・石灰が少ない土壌の場合:①苦土石灰、②水マグ
(6)苦土が少ない土壌の場合:①苦土石灰、②水マグ
(7)石灰が少ない土壌の場合:①炭カル(または消石灰)
2.pHの矯正が不要な場合の土壌改良資材の選択
(1)リン酸・苦土・石灰が少ない土壌の場合:①苦土重焼燐、②硫マグ、③石膏
(2)リン酸・苦土が少ない土壌の場合:①苦土重焼燐、②硫マグ
(3)リン酸・石灰が少ない土壌の場合:①苦土重焼燐(または過石)
(4)リン酸が少ない土壌の場合:①過石
(5)苦土・石灰が少ない土壌の場合:①硫マグ+石膏
(6)苦土が少ない土壌の場合:①硫マグ
(7)石灰が少ない土壌の場合:①石膏
(つづく)
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