JAの活動:プレミアムトーク・人生一路
地域を守る闘いに誇り 元農林中金副理事長 上山 信一氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月1日
2025年は国連が提唱する「国際協同組合年」であり、戦後80年となる。JAグループも激動の時代を乗り越えるべく農業協同組合運動に奮闘している。そこで今日に至る足跡を踏まえ、運動へのきっかけ、意見、期待などを率直に語ってもらった。第1回の今回は、元農林中央金庫副理事長の上山信一氏。聞き手は文芸アナリストの大金義昭氏。
元農林中金副理事長 上山 信一氏
■中金の「蹉跌(さてつ)」については?
無理な思いがアダ
協同組合の利用原則の一つに「市価主義」があります。何であれ「市価」より高くしたら事業は成り立たない。中金は無理をしてゼロ金利になっても高い金利で農協貯金を預かってきた。農協は高利回りでノーリスクの中金預金に資産を集中した。市価を超えた利回りで預かった資金は中金の経営を圧迫、農協には自力がつかず、中金も運用に無理が出た。2兆円と言われる常識では考えられない巨額の損失には驚きました。
「蹉跌」の原因となった海外投資はもともと金利が上がると破綻するスキームです。農水省の「有識者検証会」が報告書をとりまとめていますが、指摘の次元が異なる! スキームを根っこから直さないといけません。
■農業関連事業への投融資に力を注ぐべきだと?
農業や地域が急速に疲弊して衰退していく中で、その流れを変えるために中金や農協が正組合員や准組合員、地域住民に何が出来るのか、どのように貢献するか。スキームを組み立て直すことが重要です。
関連産業との取り組みもその一環で、中金も古くから積極的に取り組んできましたが当初は規制が厳しく、「中金は農業以外に融資できない」と縛られていて、その規制を外しながら実現していくのに大変苦しみました。今はどの企業にも自由に融資できるようになって中金も積極的に取り組んでいますが、これからは農協も地域の担い手として、地域の関連産業との取り組みを一層強化していくときだと思います。
■ヤマト運輸創業者の小倉昌男さんが役所と闘って規制を乗り越え、「宅急便」事業を立ち上げていく経緯が思い出される。
中金時代の前半は「規制との闘い」で、不条理な規制を外すために奮闘しました。中金や農協は農業や地域の活性化のために自信と誇りをもって頑張ってほしい!
■鳥取出身の石破茂首相とは?
文芸アナリスト 大金義昭氏
父親の(石破)二朗さん(鳥取県知事・自治大臣などを歴任)にコキ使われました(笑)。熱いハートの持ち主でした。茂さんも若い頃から良く知っていますが、清廉潔白で自説をきちんと持っています。
■上山さんは今もお忙しいですね!
米をはじめ地域の産品の販売など、農協のお手伝いもしながら、故郷鳥取の「地方創生」のお役に立てないかと思って仕事をしています。また、日本に古くから伝わる伝統的文化・しきたりなどを、次代に引き継ぎたいと考えて「暮らしの歳時記」のカレンダーを発行し、その売上代金の一部を恵まれない子どもたちのためにと「育英会」に寄付しています。
■趣味の登山や読書は?
山友達は多いですね。読書は乱読で、漱石など古い作品が好きです。(笑)
■漱石は私も大好きです。「生涯現役」で初心を貫いておられるお姿に励まされました!
【略歴】
うえやま・しんいち 昭和3(1928)年5月21日鳥取県生まれ。東京大学農学部卒業。農林中央金庫資金部長、秘書役を歴任して昭和56(1981)年常務理事、昭和59(84)年専務理事、平成2(90)年副理事長、平成7(95)年退任。
【余談閑話】
御年97歳。どこかにユーモアが漂う廉潔の老紳士である。自在な精神があふれ出す若々しい物語に引きつけられた。細雪が舞ったこの日も、恩師の近藤康男さんのように、蝙蝠(こうもり)傘を手に電車を利用して登場された。折りも折り、会話は雪の「桜田門外の変」から始まったが、遠い日の古里の話が生き生きとした風景と共によみがえった。
農協に寄せる志は「筋金入り」だ。海上の小さな島国の自然や社会を愛(め)で、清貧に生きてきた古き良き時代の伝統や文化を至極当然のように継承して節度ある物腰からは、「稔(みの)るほど頭を垂れる稲穂かな」という格言が柔らかにかつ鋭く迫って来た。
(大金)
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