JAの活動:農協時論
【農協時論】JAと広報―日頃の信頼醸成 経営戦略の礎に JA茨城県中央会 萩谷茂氏2026年3月10日
「農協時論」は、新たな社会と日本農業を切り拓くため「いま何を考えるべきか」を、生産現場で働く人々や農協のトップなどに論じてもらうコーナー。今回はJA茨城県中央会農業政策アドバイザーの萩谷茂氏に、JAにとっての広報の重要性と日頃からの信頼醸成の必要性について寄稿してもらった。
JA茨城県中央会農業政策アドバイザー 萩谷茂氏
令和の米騒動でJAは真っ先に悪者と扱われた。JAが出荷を絞っている、JAが価格を操作している、そんな疑念が国民感情を揺り動かし、既存メディアやSNSで拡散された。さらに政府も概算金を無くせ、農機具はリースにと世間の矛先をJAへと誘導した。
米流通の中心にいるJAにとっても、予想を超えた事態だった。幸いにも時間とともに農家の経営実態が可視化され、日本農業の構造的問題が浮き彫りになるにつれ、JAの役割も再評価された。今後の日本農業をどうするかを消費者と共に考える空気へと、一旦は収まっていった。
さて、これで誤解は解けて問題は解決したのだろうか?
私は前職で経営戦略を専門にしていた。経営戦略に欠かせないのが広報と考えているので、ここで前向きな広報活用を提案したい。
まず「広報」とは「組織と社会との良好な関係構築」を行うことで、「宣伝」とは大きく違う。自分たちの持つ製品やサービスを魅力的に伝え、利用を促すのが「宣伝」、一方で「広報」は組織が大切にしている価値観や社会に対して果たすべき役割をわかりやすく伝え、社会との信頼関係を築くことが重要になる。つまり、自分たちはどういう風に農業を考え、農家や消費者にどんな価値を提供しているのかを日常でわかりやすく語り続けることが「広報」の核となる。
では今回、なぜJAはあれほど早く「悪者」にされたのか。根本には「広報不在」という構造がある。JAの情報発信は長年、組合員(農家)向けに設計されてきた。一般消費者やメディアに「JAとは何か・何をしているか」を日常的に語りかける習慣がなかったのだ。
「広報」の定義に照らせば、JAに欠けていたのは「価値観と役割を社会へ語り続ける日常的な活動」そのものだった。危機が起きてから説明しようとしても、受け取る土台がなければ声は届かない。信頼とは平時に積み上げる「貯金」であり、JAはその貯金なしに嵐に飛び込んだ。
ではこのケースを題材に広報戦略を考えてみよう。
まず1点目「平時の信頼醸成」、日常での語りを始めることだ。
米はなぜ今の値段なのか。JAはどんな仕組みで農家を支えているのか。こうした「当たり前」を、消費者目線のわかりやすい言葉でWebやSNSに継続発信する。発信の主役は数字とデータではなく、農家の顔と言葉でいい。「食べてくれる人に農業の現実を知ってもらう」という姿勢が、長期的な信頼の土台になる。
次に2点目は「危機時の即応」、有事の際は72時間以内に声を出すことが基本だ。
危機が起きたとき、完璧な情報は要らない。「現状はこうです、原因はこう分析しています、こう対応します」と誠実に声を出すだけで、消費者の受け取り方は根本から変わる。広報窓口の一元化とスポークスパーソンの指定、そしてSNSを正式チャネルとして位置づけることが、次の有事への最低限の備えである。
3点目は「事後の透明性」、騒動の後を生かすことだ。
今回の騒動を「一旦収まった」で終わらせてはいけない。「何が起きたか、JAはどう動いたか、何が足りなかったか」を消費者向けに公表することが、次の信頼の土台になる。失敗そのものより「失敗への向き合い方」を社会は長く記憶する。騒動を広報の出発点に変えることが、JAにとっての本当の再評価につながる。
以上が米騒動に関する広報対応の例だ。これを今後はJA全体でやっていく仕組みを考える必要がある。経営戦略としてどんな価値を社会に提供できる組織かを言語化し、トップは常に組織に語り掛け、同時に外への発信を意識することが重要だと思う。
最後にこの文章はアンソロピック社のClaudeと会話して書いた。AIを味方にすることは効率につながるはずだ。
【略歴】
1958年生まれ。現役時代は大手企業に勤務し、事業企画、経営企画を担当 。63歳からJA茨城県中央会で広報、現在は農業政策アドバイザー。
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