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特集:日本農業の未来を創る元気な生産者

2013.01.10 
【特集・日本農業の未来を創る元気な生産者】 第1回 自分にふさわしい農業を創りだす一覧へ

・伝統野菜の復活めざす「未熟者」集団
・米どころ新潟で高級トマトのブランド化めざす
・民間企業からUターンし農産物を輸出

 農村は高齢社会の典型で農業を引き継ぐ後継者もいない、そのため耕作放棄地が年々増え、中山間地から農村は荒廃していくなど、日本の社会から農業が農村が消えていくかのように語る人たちがいる。しかし、農村へ行けば元気に農業を営んでいる人たちがたくさんいる。野菜など園芸産地にいけば20歳代から30歳代の若い人たちにたくさん会うことができる。そうしたなかから今回、それぞれ異なる特徴をもつ3つのグループを取材した。そこには、自らの力で立ち、考え、行動することで、自分たちにふさわしい農業を創りだしていこうとする元気な姿をみることができた。
 次回から各グループの取り組みを紹介していく。(この特集は全5回で掲載します)

10年後に豊かであることをめざして

農業は“かっこいい”と思われるように

積極的に挑戦する若い生産者たち

曽我農園の「金筋トマト」、士別の「まさかり岩男」、松本農園の「ニンジン」

(左から)曽我農園の「金筋トマト」、士別の「まさかり岩男」、松本農園の「ニンジン」


◆伝統野菜の復活めざす「未熟者」集団

 北海道の旭川からJR北海道の列車に乗って特急でさらに北へ約1時間、士別市に向かう。旭川駅の待合室のテレビで女性アナウンサーが「明日の最低気温はマイナス10度、最高気温はマイナス4度で、小雪が舞うでしょう」といっていたが、車窓から見える景色は白一色、空は灰色の雲に覆われ、雪がチラホラと舞い降りている。
 午後6時、士別市農業青年者団体「Blue Seeds」の例会会場である上川農業改良センター士別支所に仕事を終えたメンバーが三々五々集まってくる。
 「Blue Seeds」とは直訳すれば「青い種」だが、佐藤さんは「自分たちはまだまだ勉強しなければいけないことがたくさんある」ので、「未熟者」という意味で使っているという。
 現在のメンバーは13名。全員士別市内で経営の責任者や後継者として農業を営んでいる20歳代から30歳代の青年農業者だ。メンバーのうち8名は稲作+麦・大豆や馬鈴薯、トマトなどの複合経営で、稲作を行っていないメンバーは大豆・小麦、ビート、馬鈴薯、ブロッコリー、アスパラなどの畑作農業だという。
 だが、彼らが「Blue Seeds」(以下、BS)に集まってくるのは、そうした本業の農業経営のためではない。まだなにもない北海道開拓時代に入植した人びとの「命を支えてきた」が、その後、皮が硬く調理しづらいと敬遠され、姿を消してしまった「まさかりカボチャ」の復活をめざした活動のためだ。

◆米どころ新潟で高級トマトのブランド化めざす

 二人目の主人公は米どころ新潟県で2月から施設栽培のトマトを出荷している株式会社曽我農園の代表取締役・曽我新一さんだ。
 曽我さんが農園を営む新潟市新崎は、JR新潟駅から白新線で3つ目、阿賀野川を渡ったところにある。この地域は新潟市の中心部へ交通の便が良いために早くからサラリーマン家庭と農業者の「混住地域」となった。曽我さんは子どものときに、サラリーマン家庭の子弟から「百姓の子」といじめられたことがトラウマとなり、農業を継ぐことにためらいがあったという。
 そのため24歳の時に種苗会社の農業研修生として米国に1年間渡り、広大な農場で米などを生産する農業を目の当たりする。その後、海外青年協力隊の農業指導員として、雨期にあたる7〜9月にピーナッツを生産しヨーロッパなどに輸出している西アフリカのセネガルに行く。だが、床(地面)の上で直に煮炊きし煙が家中に満ちてしまうので、石を積んでカマドをつくることを教えるなど、「農業指導より生活改善指導が主体」という状態だったという。その後、コートジボアールに行くが内戦が始まりフランスに、そして27歳の時に新潟に帰り「実家のトマト生産」を継ぐ決心をする。いま曽我さんは「贈答用に売れている」という1個300円〜400円という高級トマトを中心に、JAや地元の直売所などで販売している。

◆民間企業からUターンし農産物を輸出

 三人目は、九州の中心部に位置する熊本県は阿蘇の麓に広がる田園地帯・益城町を拠点とする有限会社松本農園(代表取締役は松本篤氏)の松本武さんだ。
 松本さんは農家の生まれだが「農業を継ぐ気はまったくなく」大学を卒業したら「上場企業に就職する」ことを目標にし、その通りに旭化成に就職。医薬品部門の営業としてトップクラスの実績を上げていたが、父親の博美氏から「松本農園の営業をする人間がいないので戻って営業をして欲しい」といわれUターンする。農業の経験がなかったので「初めの3年は畑にでてとにかく汗」をかき農業生産現場を知るとともに、松本農園を新たな生産農場に生まれ変わらせるために後述するようにさまざまな取組みを行う。
 松本農園は現在、従業員30名で、延べ50haの畑でニンジン、ネギ、ゴボウ、サトイモ、ダイコンなどの農産物を生産すると同時に、切干大根や乾燥ゴボウなどの加工品も生産している。
 ニンジンなどの野菜は香港へ、切干大根はEUへ輸出も行い、国内だけではなく海外マーケットを視野に入れた販売活動をしていることが大きな特徴だ。
 まず世界を視野に入れた松本武さんの取り組みを次回から紹介していく。

第2回はこちらから

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