JAの活動:変革の時代 地方創生の主役は農業協同組合
集落営農と法人化を推進 藤尾東泉・JAいわて中央(岩手県)組合長2015年1月13日
・米価の下落が打撃
・水稲・園芸・畜産で
・食育で地域と接点
・法人の意見反映へ
米の大産地である岩手県JAいわて中央。米だけに頼らず、農家の所得を上げるため、早くから園芸、畜産と組み合わせた複合経営を地域農業の柱として取り組んできた。特に集落営農の法人化に力を入れ、高齢化が進む中で、農業を軸とした地域社会の維持を模索する。同JAの藤尾東泉組合長にその取り組みを聞いた。
農業を軸とする地域社会へ
――この10年、20年、農業の変化をどうみますか。
藤尾 まず地域に若い人がいなくなりました。若い人が地域の中で食べていけないのだから都会に行かざるを得ない。農業が好きで、大々的に畜産や水稲をやっている若い人はいますが、ほんの一部です。農業はだめなのだという意識が強いのでしょうか。
JAいわて中央管内は稲作が中心で、JAの販売額の50?60%を占めます。水田への愛着が強かったのですが、米の価格がここまで下がり、農業の先行きが不透明となっています。その中で集落営農の法人化が進みつつあるというのが現状です。
(写真)
藤尾東泉組合長
◆米価の下落が打撃
米の直接支払い交付金が半額の7500円になったことは農家に大きな影響を与えています。農業振興においては、特に集落営農の法人化に力を入れています。米の価格が暴落していますが、こういうときのために「ナラシ」(米・畑作物の収入減少影響緩和対策)に加入する必要があります。27年産からは対象要件が認定農業者や集落営農組織となっており、国の支援を得るためにも、JAでも集落営農や一定の条件を充たした認定農業者を育成する必要があります。
水稲もそうですが、園芸や畜産にもっと力を入れ、品目のバランスがとれた複合経営でないと、これからの農業はやっていけないのではないでしょうか。その複合経営についても最近、農水省は何も言わなくなったように感じています。その一方で、農家の所得対策が追いつかないまま、国はどんどん自由化をおし進めてようとしており、このままではさらに農産物の輸入が増えるでしょう。いま、日本農業は厳しい局面を迎えていると感じています。
◆水稲・園芸・畜産で
――複合経営の可能性をどのように考えますか。
藤尾 長い目で見た取り組みが必要だと思っています。JAでは園芸作物拡大のため、昨年からパイプハウス導入の助成に取り組んでいます。主要品目である果菜類、花卉に重点を置き、助成総額は2800万円。購入金額の2分の1を助成するものです。園芸を振興のため、できれば複数年の事業にしたいと思っており、高品質な農産物を長期間出荷できる生産環境を整えていきたいと考えています。
和牛は、国の補助金制度が多くあります。それを使って、全体の底上げが必要です。このような園芸や和牛を中心とする畜産を水稲に組み合わすことで、ある程度複合経営を進めることができると思っています。管内では、1haのキャベツ栽培を始めた集落営農も出てきました。平成25年8月に見舞われた集中豪雨では苗が流され、種を播き直しての取り組みでした。このような取り組みからも、園芸振興への意欲が見られます。
――営農と生活はJAの両輪ですが、生活面ではどのような活動がありますか。
藤尾 我々が幼少の時は、小学校の同級生が120人くらいいましたが、いまはわずか5、6人。本当に若い人や子どもが少なくなりました。それだけに、将来の地域活動を若い人や子どもへ働きかけることが大切です。
JA女性部と青年部が中心となって開催している「ちゃぐりんスクール」では、春の田植え、野菜の収穫、秋の稲刈りと年3回、収穫の喜びを教えています。一緒に参加するお父さん、お母さんにも好評で、野菜の収穫では、その場で採りたてのトマトでピザを焼いたり、そば打ちをしたりしています。
また、秋の稲刈り時には女性部員の協力をいただき、地元食材による昼ごはんを手づくりしていただいています。
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集落営農の法人化が進む
◆食育で地域と接点
――地域でJAの存在感を示していますね。規制改革会議は、JAに対して、農業生産だけやっていればよいと言っていますが。
藤尾 JAが生産だけに携わっていては地域との接点がなくなります。それで本当の地域のJAといえるでしょうか。それは体験農業などの地域活動をやってみるとよく分かります。農業は地域を守りながら農業を続けることが大事です。また農業がなくなったら地域もなくなります。農業と地域の関係はそういうもので、それが地域農業だと思います。
農産物の産直販売も地域での重要な活動です。本所のある紫波町には10か所ほどの直売所がありますが、運営はすべて生産者に任せています。共選出荷をめざして作る野菜や花卉の栽培では、市場で商品にならないすそものも出ますが、それも鮮度がいいので産直ではよく売れます。
ほかにもJAの子会社で7億円程の販売高を誇る大型の直売所もあり、たいへん賑わっています。直売で年間1000万円も売り上げる生産者もあり、大きな励みになっていると聞いています。女性や高齢者だけでなく、若い人からも、「産直が生きがい」という声が聞かれます。生産者は産直が多くあるのでどこへでも出荷できるのですが、複数の直売所に出荷するのは労働力的に大変なので、JAの産直施設への出荷の支援などはこれからの課題です。
産直を伸ばすには、野菜の安定した供給が必要です。このためJAでは行政と一緒に、ハウスの導入を勧めています。特に冬場の気象条件が厳しいこの地域で、品揃えを増やすには、ハウスで多くの作目をできるだけ長期間生産する必要があります。冬期間寒くてでも小松菜やシュンギクなどであれば、生産ができるのではないかと思っています。
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JAいわて中央農業法人連絡協議会
◆法人の意見反映へ
――規制改革会議は、こうした地域活動は不要で、農業生産に専念するため信用・共済事業も切り離すべきだと言っていますが。
藤尾 正組合員1万8000人のうち、准組合員は7000人で、全国のJAのなかでも比較的少ない方ですが、准組合員の利用の多い信用・共済事業が切り離されると、営農の支援ができなくなります。JAいわて中央では、営農指導費に4億5000万円ほどかけていますが、うち賦課金は4100万円ほどです。
今から30年?40年程前は、畜産や野菜の専門農協がありましたが、これらの農協はすべて経営破綻してしまいました。その背景としては、手数料収入だけでは運営が成り立たなかったからです。当時のこれらの専門農協では、営農指導費などの費用の捻出は到底無理な状況でした。
これから先、信用・共済事業が分離されてしまうと、支所も合理化が進む恐れがあります。広い管内で地域ごとにある支所がなくなったら、組合員は大変です。当然、組合員でない人も利用しています。地域の生活に馴染んでいる信用・共済事業です。これを奪い取ると、特に高齢者などは、半日近い時間をかけて出掛けざるを得なくなるでしょう。
金融店舗の統廃合で、7か所の出張所を閉鎖した経緯があります。人員と貯金残高の設置基準をクリアできなかったためですが、コンビニのATMのようなシステムをつくり、少人数でも運営が可能な方法を考える必要があると思っています。
なお、准組合員については、これまで特に手を打ってこなかったこともあり、准組合員、非組合員向けの広報をきちんと展開し、JAの情報を伝える必要があると感じています。また今後、ある程度共益権を持つことも考える必要があるのではないかと考えています。
――JA改革について、JAはいま「自主改革」の取り組みを強めています。特に組合員の意見をどのように汲み上げていますか。
藤尾 管内には17の農業法人があります。昨年の夏、その代表者らで構成する農業法人連絡協議会を設立しました。さっそく「こうした組織をなぜ今までつくらなかったのか」というお叱りを受けました。プロ意識の強い法人だけにいろいろな意見や要望が出ました。
特に農地中間管理機構について、法人の関心の高さが分かりました。
今後、こうした法人や認定農業者に対して、徹底したフォローをしていかないと、農協から離れてしまいます。農協への要望は農家組合からも聞かれますが、米価の暴落、生産資材の高騰など、もっとも大きな影響を受ける大型組織からの意見を聞いてJAの運営に反映していくことは、これから特に大事なことだと思います。
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