JAの活動:JA全国女性大会特集2016
【輝いてフレッシュミズ】食から始まる社会参画2016年1月20日
支えてくれたJAの組織力
JA福井市女性部フレッシュミズの会会長松田三代さん
JA福井市のフレッシュミズ122人を束ねる会長の松田三代さんは結婚前まで稲に触ったこともなかったという。今では調理師の免許を活かし、JAの食のイベントの中心となって活動している。そんな松田さんにインタビューした。
◆リーダー自ら楽しむのが要
昨年9月27日、福井県勝山市で北陸3県(石川・富山・福井)で初の「フレッシュミズのつどい」をJA福井県女性協・フレミズ部会主催で開いた。北陸ブロックでは初の試みとなった「つどい」は快晴に恵まれ、当日は約140人もの人たちが参加したという。「ふくい朝ごはんレシピ試食会」「恐竜おにぎり作り体験」「米の食べ比べ大会」などのイベントが行われた。米の食べ比べ大会では、JAの女性部部長らも参加し、活気に溢れたものになった。「組織リーダーの人たちが本気で楽しんでくれたら、それがメンバー全体に広がっていく」と松田さん。まだフレミズの県組織がない石川県、富山県の関係者らは、当日のにぎわいに驚いていたという。
福井県のフレミズは他にも様々な取り組みを行っている。その一つに、福井市フレミズが、PTA連合会と合同で開く食育イベントがある。PTAは教育に関する研究会、JAは食育の大切さを中心にイベントを行う。昨年11月はその第2回目だった。
参加者のうち、親は研究会に、子どもたちはJAのイベントに参加し、コシヒカリを使った「おにぎらず」を作った。おにぎらずは、ラップの上に海苔やご飯、好きなおかずをのせて、握らずに包む"おにぎり"のこと。
「自分で作る!」「ラップも自分でする!」手を差し伸べようとしても、自らの力ですべてこなそうとする子供たち。研究会参加でそばにいない親のために、作ったおにぎらずをその場で食べずに、大事そうに持って帰ったという。「自分ひとりで作ったおにぎらず、お母さんに一番に見せたいんでしょうね」と松田さん。
「JAは食と農の活動を通じて食べ物を作ったり準備したりすることは得意だけど、PRが不得意。逆に、PTAは話をする発信力があるが、食べ物や何かを作る事は不得意。互いに強いところ、弱いところを補い合って、イベントができたんです」。
今後も続くPTAとの合同イベント。互いが交流し、情報交換をするなかで学びあいながら「次につながるものを考えていきたい」と、松田さんは前向きな姿勢を見せる。
◆食で心が育つきっかけ作り
食にこだわりを持つ松田さん。
PTAとの合同イベント1回目は大豆を使って、豆腐、きなこ、ふわふわとした呉汁、すはま菓子などを作ったという。「一つの豆からこんなにも多くの食感を持つ食べ物に変化する」その楽しさを知ってほしかった。
会場には手製のきなこの香りが漂った。嗅覚を含めた五感で『食』を学ぶことができたのではと語る松田さんは「食が人を育てる」と思っている。イベントでは子どもの味覚が一番鋭かったと振り返り、「子どものうちに味覚を育てていくことが大切」と語った。
「食は、ただおなかを膨らませるだけでなく、心を豊かにする大切な一つの柱。フレミズのつどいは食の大切さを伝える良いイベントになったと思うけど、これは何度も続けていかないと意味がない」。
なぜ続ける必要があるのか。
「イベントで食の大切さに気づいても、日常に戻ると、つい忘れてしまう。繰り返し『大切だ』と気が付く機会を作っていくことが大事」だからだ。
◆奉仕じゃない働いて収入を
松田さんはフレミズの会長以外にも、企業組合「ファームまぁま喜ね舎」の理事、3人の娘の母と、三つの顔を持っている。
紆余曲折を重ねながら、今や平成26年度実績で売上高1億4800万円を誇る加工部門となった「ファームまぁま喜ね舎」。人気のおはぎは夕方になると売り切れる。
松田さんが大切にしている「加工部門を担う上での女性の経済的自立」について聞いた。
個人グループ経営を行っているとき、農村女性向けの研修講義を自主的に受けたことが転機となったと話す。
講義では、「農村女性が家庭を選んだとき、収入源の一つとして加工部門を選ぶ人がこれから増えてくる」という話があり「年収300万円以上を稼げるかが、加工を行う上での1つのライン。60代の人は加工を人生の趣味として行うのも一つだが、30~40代は子どもなどにお金がかかってくるから趣味にするべきでない」と言われたという。そして、加工に取り組んで収入があったとしても、労働時間や収支を意識していないから、それがボランティアの範疇なのかも分かっていない女性も多い、と指摘された。半分ボランティアの状態で続けることができるのか。月にいくら貯めて、子どもにいくら充てるか。6次産業化をするなら、きちんと目標を立てないといけない、と言われた。このことを、松田さんは心に据えているという。
松田さんは「ファームまぁま喜ね舎」の経営に至るまでの間にフレミズ仲間のママさんたちと共に、Aコープでクッキー販売を行ったことがある。主婦としては大きな出費の5万円を販売を行うための資金として投資し、「追い金が必要ならやめよう」と思って始めた。
「この仕事が向いている」「生涯の仕事にできる」そう感じていた松田さんとは反対に、フレミズ仲間だった他のママさんたちは、「子どもが大きくなったので」と別の場所へパート勤めに出るようになっていった。
離れていく仲間たちを見送りながら、「私はここで居場所を見つけていこう」と心に決め「ファームまぁま喜ね舎」の経営に専心していると話す。
◆家族の健康で社会と繋がり
イベントで福井県から出る機会が増えた今、家族が笑顔で「いってらっしゃい」「がんばっておいで」と理解を示してくれることが、うれしいと話す松田さん。
喜ね舎オープンと同時に「タンポポ」名で焼き菓子販売も始めた。「タンポポ」は、当時2歳だった松田さんの娘が決めた名前。「ママにはタンポポみたいなイメージがある」と言ってくれたのだと微笑む松田さん。
「女性の社会参画」について、「バリバリと社会で働く女性、そういう人もいると思います。けれど農家の手伝いをしながら、家事をしている女性もいます。パートをしている人も多い。30~40代のフレミズにとって、家庭の食事を預かることは家族の健康を預かり、未来へつなげていくこと。決して社会の中で目立って活躍しているわけではないけれど、生きていくために、食はかかせません。これが子どもや家庭を選んだ私にとっての、一つの社会参画だと思っています」と語る。
多くのJAのイベントに携わるが、それらが成功に終わるのはたくさんのJAの職員が力を貸してくれるからだと話す。「JAの組織力に助けられているんです」。
これからの活動について「フレミズの活動はあくまでも地域内にとどまってしまう。PTA連合会とコラボしてイベントを行ったり、地元の学校の家庭科室で講義をしてほしいといわれたりして、少しずつ外へ向かっているところ」、「食に携わることで素敵に経験と年齢を重ねていきたい」と笑顔で語った。
(写真)JA福井市女性部 フレッシュミズの会 会長松田 三代さん、明日に向けて料理の下準備をする女性、「ファームまぁま喜ね舎」の商品が置いてある愛菜館、女性部で生産に取り組む生姜を使った「福井生姜あられ」
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