JAの活動:JA全国女性大会特集2016
【現地ルポ】女性が元気で地域が元気 活動の基盤は支部活動に2016年1月21日
サークル参加で会員拡大
JA紀の里かがやき部会
「組織づくりは、まず声を掛け、何がやりたいかを聞く。そしてそれを身近なところから確実に実行して、少しづつ参加することで女性が変わる」と、和歌山県のJA紀の里のJA女性組織「かがやき部会」の脇田保美部長。同部会はこうして活動を広げ、会員を増やしてきた。そのもとになっているのが旧町村(地区)ごとにある6つの支部であり、その中にあるさまざまなサークルが、女性組織の活動を底辺から支えている。
◆女性の力大きい 園芸・果樹地帯
JA紀の里は和歌山県北部の紀の川市と岩出市からなり、北部は大消費地大阪に接し、関西空港にも近い。気候温暖で、紀ノ川の豊かな水と有機質に富んだ土壌を生かした果樹、野菜、花卉の栽培が盛んな農業地帯。
多彩な作目が栽培されていることが同JAの特徴の一つで、水稲のような土地利用型農業と異なり、生産・出荷のさまざまな分野で女性が重要な役割を果たしている。
同JAのファーマーズマーケット「めっけもん広場」は、ファーマーズマーケットとして全国のモデル的な存在だが、その出荷の大半を支えているのもこうした女性だ。こうした農業女性が部会の活動の中心になっている。
「かがやき部会」が発足したのは平成4年。広域合併で5つの農協が合併したJA紀の里が誕生して半年後だった。旧JA婦人部を一本化した。管内は年間を通じてさまざまな作目があるため繁忙期にばらつきがあり、一緒に活動しにくいという事情があったが、JAの合併に合わせて女性の活動も大きくしたいとの思いを込めて、名称を「かがやき部会」とした。
その活動範囲は幅広い。平成27年度の活動でみると、野菜の共同購入、健康診断支援、ゴミゼロ運動、ラッキョウやショウガの共同購入、親睦研修、家の光料理講習会、JAふれあい研修会、JA役職員との懇談会、かがやきの集い、家の光感謝の集いなど多彩だ。
◆気の合った者で やりたいことを
これらは「かがやき部会」本部の取り組みのだがこのほか各支部の農産物加工やスコップ三味線などの活動加えると、その範囲はさらに広がる。リレーダンスなど県段階のJA女性組織連絡会で取り組む活動にも積極的に参加している。
「かがやき部会」の活動の基盤について、部長の脇田保美さんは支部の自主的な活動を挙げる。「支部は『ご近所の会』のようなものです。それぞれがやりたいことを出しあい、気のあった人が集まってサークルをつくり、それを支部でまとめ、支援します」という。その仕組みがしっかりしていることが大きな原動力になっている。
部会には旧町村ごとに那賀、粉河、打田、桃山、貴志川、岩出の6つの支部があり、それぞれ支部長を含め7人の役員がいる。6支部は合わせて106の地区からなり、その地区にサークルがある。つまり「かがやき部会」はサークルを基盤とし、地区・支部・本部という仕組みだ。必要に応じて各段階ごとにそれぞれ活動を行う。
脇田さんの属する那賀支部は21の地区からなり、部員は421人(平成27年2月現在)。新舞踊、ストレッチ体操、アレンジフラワー、ハンドメイド、クラフトテープ、スコップ三味線、フラダンスの7つのサークルを持つ。
◆大震災の支援で 交流の輪広がる
支部の活動はそれだけではない。JA支所の2階を使った月1回の「よみきかせ教室」を開いているが、そこで絵本の読み聞かせや紙芝居のボランティア活動も行っている。絵本の朗読の時は、案内のチラシを作るが、子どもたちの「おたより帳(連絡帳)に挟んでもらうのでなく、門前で直接子どもたちに手渡すようにしています。そのほうが子どもたちの印象に残り、迎えの保護者対しても、部会の活動だけでなく、JAのアピールになります」という。
紙芝居は「素人の朗読でも、騒いでいた子どがさっと集まってきて、目をきらきら輝やかせて聞いています」と脇田さん。サークル活動で行っているスコップ三味線とフラダンスの披露は、特に老人ホームの訪問で評判がよい。三味線は耳に、フラダンスは目に訴えることで、お年寄りによい刺激になり、喜ばれている。
JA内だけでなく、外部に向かっても積極的に活動を行い、発信している。その一つが岩手県のJAいわて花巻の女性部との交流。「3・11」東日本大震災のとき、カイロやおむつ、トイレットペーパーなど、女性の目からみた必要物資を送り、被災地で喜ばれた。これを契機につながりが一層強くなった。
また県のフレッシュミズ組織が取り組んだリレーダンスでは、JA紀の里の「めっけもん広場」を舞台にして直売所をPR。このリレーダンスは県内の代表的な観光地を舞台に、それぞれの地区のフレッシュミズが「「YAPPA紀州」の曲に合わせて踊るもので、動画をユーチューブで公開している。
◆女性理事が6人 全員が地区選出
こうした内に外にと、積極的な活動が会員の輪を広げている。全国的には女性部員の減少で、活動の低下を招いているところが多いなかで、「かがやき部会」の会員数は右肩上がりだ。現在部員2041人で、合併時に比べ800人以上増えた。
さらにサークル活動は平成25年度に8サークルが誕生し、現在41サークル。会員が増えた理由の一つに、脇田部長は「声掛け」を挙げる。「組織づくりは『なにかやらないか』と声を掛けることが重要です。そして身近なところから確実に実行する。できることを少しずつ達成していくことで、消極的な人も変わります」という。
そしてイベントは、「みんな一緒に楽しめるような内容にすることが重要」という。これは運動会などの種目選びにも反映。豆拾いなどのように、見物する人に見えないものはふさわしくないというわけだ。
こうしたオープンな姿勢は「かがやき部会」やフレッシュミズの「スマイル」など、女性の活動に対する地域の理解度を高めることにもつながる。「若いお嫁さんはなかなか外に出にくいこともあるが、有線放送などで活動をPRするので、今では姑から『行ってきなさい』といわれるようになってきた」と脇田さんは、地域の人の、女性会、スマイルの活動をみる目の変化を感じている。
それが女性のJAの経営参画につながり、現在6人の女性理事がいる。それも女性枠ではなく、地区選出で6地区すべてから1人ずつ選出されている。このほか正・准合わせて女性組合員は6286人で全体の33.4%、総代は172人で全体の29.3%を占める。「かがやき部会」の地道な活動が実を結んでいる。
◆かがやき続けて JAへの参画を
同JAの山田泰行組合長は、「JAへの女性参画は単に数値目標の達成だけでなく、JAを活性化させる重要な方策として、女性の力がますます必要視されている。かがやき続けながらさらなる飛躍とJA運動への参画をお願いする」と、平成25年の「かがやき部会20周年記念」でエールを送っている。
脇田部長は「TPP問題、農産物の価格低下、担い手不足など、いま農業を取りまく環境は厳しい。しかしそんな状況だからこそ、私たち女性が手を取り合い、助け合いながら進んでいかなければなりません。女性の元気な地域はJAが元気になります。私たち女性がJAに集い、地域や農業を盛り上げていきたい」と、これからの取り組みに意欲を示した。
(写真)「めっけもん広場」の前で踊る「スマイル」のメンバー、「かがやき部会」の脇田保美部長、施設訪問などで人気のスコップ三味線、サークル活動発表会で全員が勢ぞろい
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