JAの活動:より近く より深く より前へ JA全農3カ年計画がめざすもの
元気な地域づくりを全力で支援(上) 全農生活リテール部 加藤武部長2016年8月31日
組合員との接点強化する生活事業
JA全農はこの28年度からの「3か年計画」を決めた。その内容は「より近く より深く より前へ」を合言葉に、生産・流通・販売面のいままで以上に深化・拡充した重点事業施策を実行することで「農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化」を実現していこうというものだ。
そこで、実際に事業を推進する各部の部長に、取組みの重点課題を聞いた。今回は加藤武生活リテール部長にインタビューした。
◆くらしの支援と販売拠点の活性化
――生活リテール部の今期3か年計画の柱はなんでしょうか。
第27回JA全国大会では「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」が決議されましたが、これは地域で安心できるくらしがあってこそ実現できるものです。そうした観点から生活リテール事業の中心的な課題は、もう一つの基本目標である「地域の活性化」です。
全農の3か年計画でも、この3つの重点事業施策に取組んでいきますが、生活リテール事業の重点施策は「地域の活性化」に向けた「元気な地域づくりへの支援」です。そのため、①地域のくらしの支援に資する生活事業の展開、②販売拠点の活性化と国産農畜産物を主原料とした加工品販売の拡大、を実施具体対策の2本柱としました。
改正農協法が施行され、5年後に准組合員利用規定を見直すこととなっており、JAでは准組合員・地域住民にも評価される事業・活動を展開し、組合員との接点、メンバーシップを強化することが急務となっています。これは「新たなJA生活事業実践運動」がめざす方向とも一致しますので、多くのJAで取組んでいただきたいと考えています。
◆メンバーシップ強化生活事業実践運動
――「新たなJA生活事業実践運動」には平成23年度から取組まれていますが、現在の到達点は...。
27年度に新たに40JAが取組みを始めましたので、合計で140JAでの取組みとなっています。取組みの内容は、生活専任渉外の導入が11JA、商品見本市・エーコープマーク品を中心とした利用者懇談会の実施が20JA、JAくらしの宅配便の導入が28JA、食材宅配事業の改革が9JA、移動購買車導入が9JAで14台などとなっています。
この「実践運動」では、JAごとの事業内容、保有施設、組合員や地域住民の要望などを踏まえて、JAの生活事業に求められるものを見極めて、それぞれにあったメニューを提案するので、多様な取組みがされることになるわけです。
――そのメニュー提案はどのように作成されるのですか。
JA生活事業に関わる商品、サービス・推進体制・組合員の意思反映状況などを組合員アンケートなどで調査するのが第一段階です。第二段階はその調査結果を分析して改革案を提案します。第三段階は、それぞれの課題に応じた今後のJA生活事業の将来方向をJAと全農でともに検討し「マスタープラン」を策定します。そして第四段階はその実践です。
――取組まれている多くのJAが第三、第四段階にあるのですか。
全140JAのうち第四段階に入ったのはまだ70JAと半数にとどまっています。なかには個別事業の改善にとどまっているJAも見られますので、より実効性のある取組みとするために、重点JAを設定して優良な取組み事例を積み重ね、他のJAへ水平展開していきます。重点JAは今年度10JA、30年度までに30JAとする予定です。
◆地域のくらし守るライフライン機能
――「買い物弱者」の増加など地域のくらしを守るライフライン機能の発揮がJAに求められていますが...。
地域のくらしを守るJAにとって、ライフライン機能の一層の発揮は大変に重要な課題ですので、次のような取組みを進めています。
地域の食やくらしを維持するために、存続が必要な生活店舗を「ライフライン店舗」と位置づけて、店舗の規模や地域のニーズに応じて、JAらしさ、Aコープらしさを残しながら、運営や物流基盤などを持つ企業と連携して低コスト化、効率化、売場の魅力アップを進めています。
現時点では、必要最小限の食品を取り扱う小規模なJA購買店舗は山崎製パンと連携した「Yショップ型」、生鮮品の取扱い希望が強い中小型店舗は全日食と提携した「身近なミニスーパー型」、一定の交通量があり新たな需要も見込める店舗はファミリーマートと提携した「直売所+Aコープ+コンビニスタイル型」の3つの基本フォーマットがあり、こうした選択肢から、地域や店舗の状況に応じた提案をしています。
――それぞれ何店舗あるのですか?
今年4月末のデータですが、「Yショップ型」は全国で87店舗、全日食とは仕入提携が48店舗、運営提携が20店舗、ファミリーマートとは提携店が5店舗ですが、30年度までに全体で250店舗にしたいと考えています。
このなかでも、昨年島根県に開店した「ファミリーマート+Aコープこうぶ店」は、従来の農産物直売コーナーやエーコープマーク品コーナー、生鮮コーナーに加えて、28席という大型のイートインコーナーやカラオケルームを設置し、地域コミュニティーの拠点としての機能を果たすとともに、移動購買車が集落ごとに週2~3回巡回していますし、さらに弁当も宅配するなど、ライフライン機能をより高めたモデル店舗として注目を集めています。
(続く)
(写真)
ファミリーマート+Aコープこうぶ店(島根県松江市)
「カラオケルーム」「イートイン」「高齢者弁当宅配」「移動車販売」を追加
・元気な地域づくりを全力で支援 (上) (下)
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