JAの活動:第40回農協人文化賞-わが体験と抱負
【一般文化部門受賞】「人材は宝」モットーに 菅野 幸雄・JAえひめ中央 経営管理委員会会長2018年7月20日
昭和43年に温泉青果農協に入組し、市場、経理、電算、販売、営農部門と主に農家の生産から出荷、販売、精算に関する仕事に携わってきました。平成11年に愛媛県中予地区の3市8町1村の12JAが合併し「JAえひめ中央」が誕生。合併後は販売・営農部門の責任者を担当。22年からは代表理事理事長に、28年からは経営管理委員会会長に就任し現在に至っています。
営農販売事業では営農振興は勿論、農産物販売事業に力を注ぎ常に生産者の所得向上に繋がる施策に取り組んできました。
現在では、荷受から販売、また生産者への精算の業務はオンライン化し、スムーズな精算が当たり前となりましたが、入組当時は手作業での業務でした。昭和51年には電子計算機によるオンライン化を達成。精算業務の正確さとスピード化を図りました。その後、柑橘類の複雑な評価計算体系に対応した農協独自の販売システムを構築し、現在ではこれを基本とした最新の販売システムへと進化しています。 管内では、昭和52年頃からキウイフルーツが植栽され始め、急激に栽培が拡大しました。導入当初は、消費者にとって食べ頃が分かりにくい果実でしたが、試験を繰り返し追熟技術の確立を図り、食べ頃のものを届けることで、市場や消費者から信頼を得て、量・質ともに国内トップクラスの産地となっています。
全国生産量が23万トンを超えJAの主力品種であった宮内伊予柑は、平成4年頃から販売が徐々に低迷。その対策として園地を選定し、味を厳選した手選別による宮内伊予柑を農家の倉庫(蔵)から消費者に届けたいとの思いで「蔵出しいよかん」と名付けたこだわり商品を11年に生み出し、市場の相場に左右されない価格を設定しました。
また、13年産からは、1月に収穫した紅が濃く味の良い宮内伊代柑を「弥生紅」として、宮内伊予柑の品質が低下してくる3月に良食味の品が店頭に並ぶよう努めました。現在も市場の評価が高く、こだわり商品のブランド化を図ることで、生産農家の安定生産と所得向上に繋がっています。
23年には第3次営農振興計画、28年には第4次営農振興計画に携わり、特にJAの主力である柑橘で、せとか、カラマンダリンや愛媛県オリジナル品種の紅まどんなや甘平を積極的に拡大し、それぞれのブランド化を図りながら、高品質で消費者から信頼される産地づくりに努力するとともに、JA産果実を消費地に周年供給できる栽培体系を確立しました。 15年にはJA農産物直販所「太陽市」をオープン。広域合併JAの特徴を生かし管内全域から新鮮な農産物を集めるとともに、旬の農産物を使った試食宣伝、食育活動、学校給食への食材供給など、地産地消を基本に産直市の多面的機能を発揮し、消費者と生産者、地域とJAを結び、農業への理解と農産物の消費拡大に寄与しています。また25年には道後温泉近くに「アンテナショップひなた」を開設し、農産物や加工品の販売を通じて、県内外の観光客にアピールしています。
職員の事業への取り組みに対する意識改革・情報の共有化・事業伸長を目的に、24年度から中央会が推奨する「経営管理高度化事業」に全国に先駆けて取り組み、PDCAの実践を通じて、事業進捗と行動管理を徹底。また管理表を作成し進捗状況を経営会議や地区経営会議などで検討し、事業の伸長に繋げています。
25年には本所事業部管理体制から、地域密着型の事業展開を目指し地域事業部制を導入しました。支所・事業所は、組合員や地域住民とのふれあい、農業やJAの事業活動の理解などに繋がる場所です。地域のイベントなどへの積極的な参加により地域貢献にも努めています。
第2次中期ビジョンでは、10年後の夢と希望が持てる地域農業の実現と、JAえひめ中央のあるべき姿を設定し、その実現に向けて地域農業の振興と農家所得の向上、地域貢献、経営基盤の強化に力を注いでいます。特に次世代の担い手支援として「新規就農研修センター」を設置し、JAが経営する研修園を新規就農者や後継者の実習園地として活用しています。
29年秋に第72回国民体育大会が愛媛県で開催されましたが、若い人の活力は本当に素晴らしく、力強さを感じました。しかし農業の現場では若い人は少なく、農作業姿を見ることは稀です。日本の農業は、農地条件を活かした小規模な家族経営で、戦後の復興を支えてきました。しかし、ここ20年で生産農家、生産量は大きく減少し、地域社会の崩壊も進んでいます。地域農業の活性化は、歴史認識と相互扶助の精神が大切です。また、地域に若い人が集まらなくては、農業の活性化はできないと思います。そのためにも若い人が集う環境整備にも積極的に取り組みたいと考えています。
人材は宝です。農協の総合事業を通じて、それぞれの人材育成に努め、農家に必要とされ、地域の皆さんに愛される組織になりたいと思います。
(写真)賑わいをみせる「太陽(おひさま)市」
【略歴】
かんの・ゆきお
昭和24年生まれ。昭和43年松山商科大短期大学部卒、温泉青果農協(平成11年合併でえひめ中央農協)入組、12年販売部長、17年営農部長、19年経済事業本部常務理事、22年代表理事理事長、28年経営管理委員会会長。JA全農経営管理委員会副会長、同愛媛県本部運営委員会会長等兼任。
本特集の記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
第40回農協人文化賞-わが体験と抱負
最新の記事
-
兄姉の仕事だった子守り【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第267回2023年11月30日
-
これまでのIPEFの交渉経過を振り返る【近藤康男・TPPから見える風景】2023年11月30日
-
花市場開設100周年【花づくりの現場から 宇田明】第23回2023年11月30日
-
昔懐かしの"ぱんぱん菓子"で特産物PR JA晴れの国岡山2023年11月30日
-
「運動嫌い」2割以上 小中学生の運動に関する意識調査 JA共済連2023年11月30日
-
豊橋産農産物が大集合「愛知 豊橋どうまいフェア」開催 ドン・キホーテで12月1日から2023年11月30日
-
地域農業の未来設計「第15回やまなし農業・農村シンポジウム」開催 山梨県2023年11月30日
-
ラジコン草刈機カルゾーシリーズにハイスピード4輪モデル「LM550」追加 SUNGA2023年11月30日
-
『イシイのおべんとクンミートボール』50周年記念「イシイの福袋2024」12月1日から予約開始 石井食品2023年11月30日
-
「茨城を食べよう」連携第6弾「お米コッペ いばらキッス&マーガリン」など新発売 フジパン2023年11月30日
-
鳥インフル 米テキサス州、オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2023年11月30日
-
鳥インフル ニューメキシコ州、サウスダコタ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2023年11月30日
-
「フードコツ」プロジェクト「食品ロス削減月間」アクション数が87万件を突破 クラダシ2023年11月30日
-
オリジナル雑煮レシピコンテスト「第2回Z‐1グランプリ」全国の小・中学、高校生から募集2023年11月30日
-
第24回グリーン購入大賞で「大賞・環境大臣賞」をダブル受賞 日本生協連2023年11月30日
-
千葉市と「SDGs推進に向けた包括連携協定」28日に締結 コープみらい2023年11月30日
-
自家受精進化の謎を解明 新たな植物種の交配など栽培植物の育種の応用へ 横浜市立大など研究グループ2023年11月30日
-
愛媛県産ブランド柑きつ「紅まどんな」のパフェ 数量限定で登場 銀座コージーコーナー2023年11月30日
-
バイカル地域での現生人類の拡散時期と要因を解明 森林総合研究所2023年11月30日
-
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どもの食 応援ボックス」に協賛 日本生協連2023年11月30日