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特集:飛躍する「くまもと農業」

2019.01.16 
【熊本特集(5)JA菊池】「くまもと畜産」を牽引 素牛確保で一貫経営確立一覧へ

 青果物・米に次いで、熊本県のもう一つの柱に畜産がある。その中心となっているのは、畜産物の取り扱いが全国でも有数な畜産地帯である、特にJA菊池で、平成29年9月に建設したキャトルブリーディングステーション(CBS)は、全国でもトップクラスの肥育素牛の生産施設。JA全農、県経済連などと連携した、最新技術を駆使して年間最大500頭の肥育素牛の供給をめざす。また堆肥の交換を通じて稲作や園芸農家と連携した耕畜連携及び広域流通に取り組み、県内はもちろん県外にも拡大している。

 熊本県内の繁殖経営における子取り用雌牛(18か月齢以上)の飼育頭数は黒毛・褐毛合わせて約3万7500頭。うち菊池地域は8750頭で約4分の1を占める。この数年、子牛価格の高騰で素牛の確保が難しくなっているなかで、同地域は5年前に比べ、1000頭近く増えている。

 

肥育用の素牛
確保が困難に

肉用牛経営の拠点「キャトルブリーディングステーション」育成舎の素牛

(写真)肉用牛経営の拠点「キャトルブリーディングステーション」(左)と育成舎の素牛

 

 子牛の販売高も順調に拡大し、JAの一貫繁殖牛部会の販売高で、平成24年度までに比べ、10億円以上増え、29年度は販売頭数約3000頭で20億円を超えた。同部会は昨年12月、20億円突破記念大会を開き、経営安定のため自家生産牛による更新率を高めることを意思確認した。
 もともと熊本県では、肉用牛は褐毛和種(赤牛)が中心だったが、平成5、6年から菊池地域でも黒毛和種を導入する農家が出てきた。これに合わせて、JAは平成8年から、和牛の繁殖事業に本格参入し、チームをつくって飼育管理試験等、本格的な取り組みを始めた。3年後の11年には一貫繁殖牛部会を発足させ、繁殖牛1000頭飼育計画を立て、その後、今回大会の5次計画までに、部会員99人で4500頭の繁殖牛飼育頭数となった。
 一方、この数年、全国的な肥育素牛の不足から、必要な肥育素牛(黒毛和種)の確保が難しくなってきた。JA菊池は以前から素牛の不足に対応するため、繁殖基盤の強化に努め、当初0頭だった繁殖牛を4500頭まで増やしてきた。しかし繁殖牛農家個人の規模拡大にも限界があること等から、CBSの建設となった。
 CBSは国の畜産クラスター事業で建設し、最大で850頭の飼養規模になる。乳用牛育成舎、和牛繁殖母牛舎、分娩舍、馴致舍、子牛ケージ、哺育舍などが整備されている。JA所有の繁殖母牛のほか、酪農家から預託の乳用育成牛、酪農家で構成する(株)アドバンスの育成牧場との連携により酪農家で生まれた子牛を買い取り、年間500頭の供給を目指す。販売先は管内の畜産農家に限定し、地域一貫体制による肉用牛の安定生産をめざす。

 

後継者育成へ
研修用施設も

 また後継者や新規就農者のための研修施設も併設しており、旧青年就農給付金の「農業次世代人材投資事業・準備型」の準備研修機関認定に係る研修施設として活動を開始。また農場HACCP認証取得にも挑戦し、今年度中の取得を目指している。JA自らがHACCP認証取得することによって、部会でもその機運が高まることに期待している。
 CBSが稼働してからまだ1年余り。フル稼働は2年半後になるが、この研修棟について「基本は地域の畜産後継者を育成することであり、併せて和牛繁殖、肥育、酪農についてデスクワークも含め、牛関係の研修が受けられる。その意味でも地域の畜産の拠点施設として、これからに期待する」(同JA畜産部)と言う。

 

県域越えて耕畜連携
たい肥と稲わら交換

 和牛・酪農だけでなく豚も含め、JA菊池の畜産は多くの家畜排せつ物を排出する。同JAは、循環型農業の確立を目指し、早くからこの問題に取り組んできた。この分野で拠点となっているのが「きくちのまんま有機支援センター」だ。
 平成16年11月に家畜排せつ物法の本格施行をきっかけに建設した。堆肥の水分含有率55%程度に処理された完熟堆肥を野菜や耕種農家へ、県外を含め広範囲でJA間も含め広域流通を実現している。
 肉牛約1万頭、素牛5000頭、肉豚4万頭、それに生乳8万tを生産する乳牛と、JA菊池の畜産からは多くの家畜廃棄物が発生する。有機支援センターは3か所にあり、管内の畜産農家で発生した一部の糞尿で、水分含有率60%程度に一次処理された堆肥を、持ち込み量1t当たり500円で約1万4000t受け入れる。
 これを堆肥にして、バラあるいは袋詰めして販売する。販売先は広範囲で、JA熊本市の果樹、JAやつしろの野菜、福岡県のJA及び八女のお茶等の農家、あるいは玉名市や佐賀県などへ広域に販売している。八代など県内の取引先と連携し、堆肥のストックヤードも設けた。
 畜産農家からはもっと引き取ってほしいとの希望があるが、現在の施設では処理能力に限界があるという。堆肥生産量は約7000tで、価格はバラが1t当たり3600円。依頼に応じて圃場散布(散布料別)も行う。熊本県の堆肥共励会の作物部門で最優秀賞である熊本県中央会長賞を受けており、「品質には自信をもって販売している」(同JA畜産部)。
 堆肥によるJA間の広域流通はまだ例が少なく課題も多い。同JA畜産部は(1)散布機械の充実、(2)圃場への進入口の整備、(3)耕種地帯との連携強化、(4)稲わらの安定確保、(5)組織間連携をマッチングする県域を越えた組織づくりなどを、これからの課題として挙げる。

きくちのまんま有機支援センターで作られたたい肥を圃場に有機支援センターで作られたたい肥を撒いた圃場で育てたWCS(写真)畜産たい肥を投入(上)し、WCS稲を収穫

 

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