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2019.03.04 
【下小野田 寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長】人財立国日本を創る一覧へ

 TPP11、日欧EPAが発効し、日米FTA交渉開始が迫るという日本農業にとって風雲急を告げる状況のなかで、第28回JA全国大会が開催される。これからの日本農業とJAグループは何をめざしていくのか? いまこそその真価が問われているといえる。JA鹿児島きもつきの下小野田寛組合長は、JAグループに「イノベーションが必要だ」と考え実践してきた。そのなかから「日本を支えていくのは、いままでもそしてこれからも人、人財」であり、それは農業・農村においても同様だと、「人財立国日本を創る」ことを提起している。

1.No.1きもつき 起こそうイノベーション!

人財立国日本を創る【下小野田 寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長】(写真)下小野田 寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長

 

 昨年12月30日にTPP11、今年2月1日には日欧EPAがそれぞれ発効し、日本は新たな自由貿易経済圏に大きく踏み出した。さらにこの4月には日米貿易協定交渉が始まる見込みである。まさに日本農業にとって風雲急を告げる状況である。産地として外国産に負けられないという想いを強くする。私たち産地としては未来永劫にわたり安心・安全でおいしい農畜産物を国民の皆様に広く送り届ける責務があると思っている。そのことが国の繁栄・安定につながり、国民の幸せにつながると固く信じる。
 そのためには私たちにもイノベーションが必要である。もしかして、多くの方々が、「農業の世界、農村ひいてはJAにおいてイノベーションは無縁であり、イノベーションは起こらない!」と思っておられないだろうか!? 私は4年前の組合長就任時に、「No.1きもつき 起こそうイノベーション!」を掲げて、役職員・組合員・地域に広く訴えた。イノベーションは何も産業界・企業の世界の話ではなく、農業・農村においてもJAにおいても必要であり、私たちにとってイノベーションは身近な課題であることをわかっていただきたいという想いであった。
 イノベーションを起こすには、まず笑顔からということで、スマイルイノベーションを進め、次に私たちの心、発想、組織をもっともっと外に開き、いろいろな人・部署・組織ともっと自由に結びつき、コラボレーションを進めようということでオープンイノベーションを掲げた。そして大きな成果を得るには、個の力だけではどうしても限界があり、もっとチームの力を信じようということで、「チームきもつきをみんなで創り、そしてみんなで幸せに!」を掲げ、様々なことに挑戦してきた。
 その大きな成果として、象徴的なこととして、一昨年宮城県で開催された第11回全国和牛能力共進会での鹿児島県総合優勝に私たちが大きく貢献できたことがあげられる。5年に1回開催され、和牛オリンピックとも称され、昨今の和牛ブームもあり、宮城大会は国内外から広く注目され、たいへん盛り上がった。和牛の大産地である私どもにとって負けられない戦いであったが、私どもの管内の黒牛・農家・技術員が見事にがんばってくれた。まさに私たちはチームきもつきでイノベーションを起こした。私たちJAにとって大きな自信につながった。

 

2.地方創生は支所創生

 いま、国が地方創生を掲げて様々な施策を進めている。それでも東京一極集中の流れは止まず、私ども地方にとっては悩みが尽きない。国が進める地方創生を私どもJAに置き換えれば、それは支所創生だ。私どものJAにおいても大型広域合併を進めた結果として、本所集中の中央集権的な事業運営になりがちであった。職員の住まいも同様である。私たちはいまこそ、支所創生に転換すべきだと思う。それぞれの支所に組合員がいて、農業生産があり、暮らしがある。その支所を創生してこそ、私たちの幸せが実現する。
 昨年の総代会に、ネクスト10(10年構想)を議案として提案し、承認された。ネクスト10とは、これからの10年間のJAの様々な挑戦を組合員にわかっていただき、その挑戦をともに実現しようというものであり、現在の販売額300億円を10年後には、400億円にして、その結果、組合員の財産としてのJA貯金高が現在の1000億円から10年後は、2000億円に増え、組合員の豊かさと地域の豊かさを実現するという構想である。かなり大胆で挑戦的な試みではあるが、私たちの強い想いがあれば必ず実現できると信じる。そのために私たちは支所創生を進めたい。国も政府もぜひ、考えてほしい。地方創生と大きく掲げてもらうのは結構なことだが、そこには人がいるということ、地方創生の地方に人がいることを常に忘れないでほしい。私たちも支所に組合員がいることを常に忘れないで、支所創生をこれから進めていく。その時に私たちにとって最も大事なことが人財育成である。

 

3.人財を輩出するJAに

 技術立国日本といわれて久しい。だが、いまや技術立国も危ぶまれている。21世紀に入り、日本人のノーベル賞受賞者が数多く出て、私も日本人として誇らしく思う。その受賞者の皆さんが異口同音に訴えるのは、日本は基礎研究の予算・取組みが足らないということだ。いまの受賞者の基礎研究はすべて昭和の時代のものであり、平成に入ってから国・企業の基礎研究への予算が著しく減ってきている。今年は平成から年号が変わり、新しい時代に入る。この新しい時代、私たちは人財立国日本を目指すべきではないか。そして私たちは人財立国日本に大きく貢献するJAを目指すべきではないか。日本を支えていくのは、いままでもそしてこれからも人、人財である。農業・農村においても同様である。その人財を輩出するJAに私たちはなりたい。
 私は組合長として自分の力に限りがあることを自覚している。私一人だけですべての組合員に対応することは無理だとわかっている。しかし、私どもJAの600人の職員が組合員にしっかり向き合い、組合員といっしょに仕事をしていけば、もの凄いことができると私は信じている。目の前にいる職員がいるからがんばれると言ってくださる組合員、組合員がそう言ってくださるからさらにがんばれる職員、そのような温かい人間関係のなかで人は育ち、人財となる。私の役目は、人が育ち、人財となるJAをみんなで創ることである。
 平成27年度から毎年1000万円を教育研修積立金として積み立てて、農家組合員と職員の研修に使っている。特に組合員、職員がいっしょに行く海外研修に活用している。新しい時代の人財を育てるためには、広く海外を見ることが大事だ。おかげさまで私どもJAにおいて職員の離職率が大きく下がってきた。特に若い世代が辞めなくなった。昨日まで対応してくれた職員が次々に辞めていくと組合員は不安を感じてしまう。「JAは大丈夫か!?俺たちの対応は誰がやってくれる!?」と言いたくなる。まさにJAへの信頼が揺らぐことになる。若い世代の離職率が下がったことで、正職員の3割強が10代、20代の職員であり、特に若い女性が多い。この世代の職員が大きく育つことが、組合員の元気につながり、JAの成長に大きく貢献する。だから、私たちは人財を育てることに全力を尽くしたい。

 

4.農業生産力が人財育成力に

 21世紀を迎え、人類は20世紀とは違う、平和な時代の到来を予感した。しかし、新世紀に入り、20年近く過ぎようとしているが、テロの頻発、経済格差拡大、様々な分断と排他、大きな自然災害の発生等私たちのまわりは、不安だらけである。だから、いまあらためて人々はまわりに、世界に温かさを求めている。温かさを創り出すのは、温かい人財力である。協同組合が、そして和食がユネスコの無形文化遺産に相次いで登録されたのは、単に偶然ではない。協同組合、和食に歴史的使命があるということを示唆している。つまり、温かさを創り出す協同組合、和食を時代が求めているということであり、いまこそ農業・農村、JAの出番である。私たちが取り組む農業・農村、JAを通じた人財育成は、そして人財立国日本に大きく貢献する温かい人財力は、世界の最先端、時代の最先端をいくことになると私は訴えたい。最先端のサイエンスとテクノロジーを生み出すのは、人である。人の可能性のなかに新たなサイエンスとテクノロジーが育つことを忘れてはいけない。
 温かいなかで人は育ち、人財となる。温かい食、温かい人間関係、温かい教育文化など温かい環境と雰囲気のなかで、人は、大いに挑戦し、そして失敗し、またそこから学び、大きく成長する。そういう温かい要素がいっぱいあるのが、農業・農村である。さらにいえば、温かい懐も大事である。持続的に再生産できないところに、残念ながら人財を育てる余裕はない、国も企業もそして都会ももっとそのことに目を向けるべきであり、地方に、農業・農村にお金と人財を投入することが日本の国際競争力低下につながると思っている人がいたら、農業生産力が人財育成力につながるという時代の大きな流れを見失っている。
 日本農業は決して守られてきたのではない。日本人の食生活の大きな変化、様々な気象条件そして世界一厳しい消費者ニーズに対応して、日本農業は常に進化し、生産性と品質を同時に高めることに挑戦してきた。これからも増え続ける地球人口に対応するために、安心・安全でおいしい食の安定的確保は人類にとって必要不可欠なことであり、農業の現場には、私たちの生命をつなぐ最前線がある。その最前線に日本はもっともっとヒト・モノ・カネを投入して、安心・安全でおいしい食の安定的確保という地球的課題解決に貢献する覚悟を決める必要がある。
 私たちは農業の分野だけで活躍する人財を育てようとは思っていない。いろいろな分野・産業界で、都会で、海外で活躍できる人財を育てたいと思う。農業・農村、JAには日本の良さとしての包容力があり、人財立国日本に大きく貢献できると思う。一方私たちだけでは限界があることも自覚している。私たちは常にオープンであり、謙虚であり、いろいろな皆さんとコラボレーションする姿勢を忘れてはいけない。

 
 
5.がんばろう!JAグループ日本

 所変われば品変わると昔から言われているが、日本にはすばらしい地方があり、そこにとっても素敵な人たちがいて、世界一おいしい産品がたくさんある。このことを活かさない手はない。これからそれぞれの地方のすばらしいがんばりがもっと広く世界に発信され、農業はクールでカッコイイ、農村はキモチイイ!と若者に、世界の人たちに言ってもらえるように、お互いがんばることが、これからのJAグループ日本の使命である。JAグループ日本の皆さん、これからも自信と誇りをもってお互いがんばっていきましょう!

 

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