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JAの活動:負けるな! コロナ禍 今始まる! 持続可能な社会をめざして

農林中金総合研究所 平澤明彦取締役基礎研究部長 食料安全保障とコロナ禍の世界の食料事情【負けるな! コロナ禍 今始まる! 持続可能な社会をめざして】2020年7月1日

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新型コロナウイルスによる影響が広がるなか、国民生活に不可欠な食料について現時点で日本では大きな問題は発生していないが、感染の長期化による生産、流通への影響などわが国の食料供給を脅かす新たなリスクとなっている。国民の関心も高まるなか、現在の情勢について農林中金総研の平澤明彦取締役基礎研究部長に分析してもらった。

平澤明彦取締役基礎研究部長平澤明彦取締役基礎研究部長

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のもたらした混乱により、食料の安定供給(食料安全保障)への関心が高まっている。予期しない形で食料供給の不安定化が生じたためである。欧米を中心に情勢を整理し、今回の動きの特徴や注意点を述べたい。

 
米国における農産物価格の下落

今年、世界全体としてみれば穀物を中心とする主要農産物の供給は緩和基調にあり、穀物の国際価格は落ち着いていた。そこにCOVID-19が流行した結果、米国では様々な農産物の価格が下落した。これまで、食料供給に関する懸念が取り沙汰される際は穀物等の需給ひっ迫と価格高騰が通例であり、今回とは様相が対照的である。

例えばトウモロコシについてみると、近年、米国ではその4割がバイオ燃料(エタノール)の原料向けに用いられてきた。しかし、人の移動規制によって交通燃料の需要が減少、ガソリンの需要が半減する中で原油価格が下落するとともに、ガソリンに混和されるエタノールの価格も下落し、バイオエタノール工場が生産を縮小・停止せざるを得なくなった。トウモロコシのCBOT先物価格は2020年4月終盤には1ブッシェル当たり3ドル3セントと、2016年8月末や2009年9月に並ぶ安値を記録した。その後、ガソリン需要は経済活動の再開により回復しつつあり、トウモロコシ価格も2020年6月8日には3ドル33セントまで持ち直した。

トウモロコシだけでなく、米国では新型コロナウィルスによる食肉処理工場の閉鎖(後述)や外食・ホテルの閉鎖等により、各種農産物の価格が下落した(図1)。多くの品目は4月後半ないし5月以降ある程度持ち直したものの、豚と牛(生体)は年初の8割を下回る水準が続いている。その一方、チーズ向け生乳(クラスIII)は経済再開による需要の回復を受けて流行前を上回る価格水準となっている。

米国における 農産物等の先物価格の下落
 
特徴的な影響

それではなぜ、食料安全保障が問題とされているのか。それは新型コロナウイルスの世界的な流行により、これまでとは異なる形で食料供給の不安定化が生じたためである。需要の変化とフードサプライチェーンの変調が広範に生じた結果、世界的な需給は逼迫していないにも関わらず、局所的な物の不足が生じたり、川上側では農産物の廃棄が生じた。また、世界各地でそうした変化や問題が同時多発的に生じたことも、これまでにない事態である。その結果、複数の国が食料の輸出規制を実施した。

(1)需要の変容

感染の拡大を防ぐために世界各国で実施された消費者の外出規制と企業の営業規制、それに人の移動の規制によって、食料需要の場所と中身が急速に変化し、供給側の適応が容易ではない状況となった。
外食やホテル向け、および高級品の需要縮小は各国共通である。欧州では日持ちのする必需品へと需要が移り、ワインやフランスのチーズ、英国では高級ステーキ肉などが過剰となった。消費者による買いだめも日本に限らず、米国や欧州でも同様であり、一部の食品やトイレットペーパーの品薄も報じられた。

(2)フードサプライチェーンの変調

フードサプライチェーンのいずれかの段階で操業が停止、あるいは稼働率が低下すると物の流れが滞る。問題の源は人の感染症であるため、フードサプライチェーンのどこで生じてもおかしくはない。その結果として感染症に対して弱い構造を有する部門が明らかとなった。

顕著な例は、米国における食肉処理工場の閉鎖である。内陸の穀倉地帯である中西部コーンベルトなどで感染クラスターが発生し、多い例では数百名もの感染者が確認された。大型の工場が多数閉鎖した結果、一時期は食肉の生産量が40%まで低下し、小売価格の上昇や、大手スーパーが食肉の一人当たり購入量を制限したり、一部地域ではファストフードレストランにおける牛肉メニューを取り下げるといった事態となった。その一方で、出荷先を失った家畜の価格は下落し、養豚農場は豚の殺処分に追い込まれた。工場は順次操業を再開しており、処理能力はある程度回復しつつあるが、感染防止対策のため操業度が低下しており、以前の水準に戻す見込みは立っていないようである。

米国やドイツの屠畜場では外国人労働者の待遇の悪さやコロナ対策の不十分さが指摘されており、米国の内陸部では地域の感染の中心地となったり、ドイツでは屠畜場での大量感染により地域が再び閉鎖される例も出ている。さらに米国では農場や野菜・果実包装工場での感染拡大も報じられている。

また、人の移動制限による外国人農業労働力の不足は欧米でも同様であり、米国、ドイツ、英国などはいずれも特例措置を設けて入国を認め、労働力の確保に努めている。しかし、それでも欧州では野菜やワインブドウの栽培・収穫などで人手不足と生産への影響が報じられている。

 
各地の対応

(1)輸出制限、低所得国への影響

ロシアやベトナムなど20か国は、国内の安定供給を確保するため食料の輸出を制限・禁止した。これに対して4月21日に開催された臨時G20農相会議や、FAOは慎重な対応を求めた。最近では6月18日開催のWTO農業委員会でも、食料安全保障の観点から輸出制限を抑制すべきであるとの提案が多くの国からなされた。
輸出制限を課した国には日本の主要な輸入先が含まれておらず、また港湾施設や海運の大きな障害も生じていないため、日本の食料調達には特段の問題は生じていない。
一方、従来から国民が十分な食料を得ていない低所得国の状況については、サプライチェーンの混乱や人の移動の制限が食料不足に直結する懸念があるとしてFAOが警告を発し、農業資材等の支援が必要と訴えている。
コロナ収束の目途は立っておらず、第二波の懸念もある中で先行きの不透明感が強い。サバクトビバッタやアフリカ豚熱といった不安定要因もある。複合的な要因による食料供給の不安定化にも注意が必要である。実際、アフリカではコロナによる移動制限のため、サバクトビバッタが発生しても専門家の現地入りに支障を来しているという。

(2)欧米の農家支援策

世界では50か国がコロナ危機に対応して農業支援策を導入したと報じられている。中でも、米国は農家への直接支払など190億ドルにのぼる大型の農業支援措置を導入し、大きな損失を被った畜産・酪農を中心に補償を行っている。これは2018年から2年続きで実施した貿易戦争の補償を上回る規模であり、WTO農業協定で認められた補助金額の制限枠を超過するのではないかとの指摘もある。
EUは乳製品や食肉、野菜・果実などの市場隔離や生産調整措置を導入したほか、農村振興の補助金残額を農家への補償に活用し、これをWTO協定上の緑の政策であると主張している。さらに、5月27日にはコロナ禍対策の復興予算案を提示した。「緑の復興」を掲げて気候変動や環境保全に適合的な社会経済への移行を促進する方針であり、その一環として農業予算も積み増す。また、フードチェーンの気候・環境対応方針を示した「ファーム・トゥ・フォーク戦略」ではコロナ禍を受けて食料安全保障の確保を課題の一つに掲げ、2021年までに緊急時対応計画を策定する予定である。

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