JAの活動:負けるな! コロナ禍 今始まる! 持続可能な社会をめざして
JA全中 比嘉政浩専務理事 コロナ禍でのJAの役割と使命を考える【負けるな! コロナ禍 今始まる! 持続可能な社会をめざして】2020年7月9日
分散型社会での食料安保など実現
新型コロナウイルス感染拡大はわれわれの暮らし、経済活動を根本から変えた。JA全中の比嘉政浩専務理事は新しい生活様式に移行しても、リモート技術などの活用に加えて、相手本位で考え人の組織であることを維持し続けることが、JAグループが役割を果たすために大切だと強調する。
持続可能なJA経営基盤を確立
JA全中 比嘉政浩専務理事◆未知のウイルスへの不安と怖さ
新型コロナウイルスは感染力が強く、多くの方が亡くなっています。無症状の感染者がおられ、しかも無症状者からの感染もあります。不安・怖さを感じるのは当然で正しいことと思います。
◆物資不足等の混乱、経済・生活に大きな影響
マスクや医療器具など需要が増大した物資が不足し、加えて関連が乏しいと思われる物資まで不足が伝えられました。このことが多くの人を不安にし、買いだめ等の行動に駆り立てました。生産だけでなく流通の重要性も再認識させられました。リモートではできない仕事は確実にあり、それが社会を支えていることを改めて認識しました。
加えて、政府が緊急事態宣言を出し経済活動を抑制したのですから経済は大打撃を受けています。多くの方の生活を脅かしています。
◆農業にも需要減、労働力不足などの影響
農業でも、外食・インバウンドのウェートが高い和牛などの高級食材やイベントが激減した花きなどが、需要・価格ともに大きく低下しました。
学校休校に伴う生乳需要の減少などが見られ、一方で家庭内需要が増えた食材もありました。外国人実習生の来日が困難となり、労働力不足となった産地もあります。
◆JAグループは食料安定供給・医療・介護に尽力、組合員・役職員は誇り
けれども、今日までの混乱の中で多くの消費者の方々は、「食べるものがない」という根源的な不安までは感じなかったのではないでしょうか。もし食料に関する不安があったら、社会の混乱はもっと大きかったでしょう。
なぜ食料供給に関する根源的な不安、パニックにつながらなかったのでしょうか。政府の尽力、情報発信も大きかったと思います。
しかし、組合員の方々が不安の中でも健康維持に努めながら生産を続けられたこと、JAグループ全体で小売業など他業態と協力しつつ、選果・集出荷など農産物販売事業を継続したことは大きいと思います。
安定供給を使命とし、一定の在庫を持って仕向け先なども複数持っています。いわば、異常時にも対応できる引き出しを日頃から持ち、今般の状況を踏まえ工夫を重ねてきました。もちろん、生産縮小、産地廃棄もありました。けれども、労働力マッチングも含め多くのJAグループ役職員が、「今こそ役割を果たそう」と奔走されました。
また、厚生連では感染症指定医療機関に指定されている病院を中心に、感染拡大当初から感染者を受け入れました。介護事業も含め、役職員は自らの感染リスクを感じながら懸命に努力されています。
◆コロナ禍は社会の有り様を問う、食料安保・分散型社会・相互扶助
新型コロナウイルスの感染拡大は大きな教訓を与えました。1点目は食料安保の重要性の再確認です。マスクを食料に置き換えて多くの方が実感されたでしょう。2点目は都市への集中を是正し、分散型社会を作る必要性です。都市の深刻さは明らかである一方、多くのリモートは分散型社会の可能性を示しました。3点目は相互扶助の大切さです。これこそが多くの現場を救いました。
われわれはJAグループの主張と自らの事業・活動に確信を持つことができます。そして、これらに対する理解が一層広がる土壌ができつつあると感じます。「過去にも同様の契機はあったが日本人は忘れっぽい」と感じられる方もおられるでしょう。けれども、不幸なことに私たちは今後何年も新型コロナウイルスを前提とした社会運営を強いられるでしょう。もとには戻らないのです。一度の契機で全てが変わることはなくても、繰り返されることで大きな変化につながると感じます。
◆感染拡大は事業等の本来の目的や実施具体策を考える機会に
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全中でも既に計画していた事業を想定していた形で実施できないことが多々あります。多くのJA等でも同様と思います。
関係者の健康を優先して中止・中断との選択肢もありますが、何とか工夫して実施・継続できないでしょうか。この検討の際、その事業の目的にまで遡って考えることになります。私にとっていい機会でした。この契機がなければ前年踏襲で実施したものもあったでしょう。
◆本来の目的を諦めない、工夫して第2波に備える
新型コロナウイルスに関する情報が少ない時期には、中止せざるを得ない事業等もあったでしょう。
現在は「その事業等により達成しようとした目的を諦めない。工夫して実施する。但し具体策は相当変わることを覚悟する」との頭の整理で臨んでいます。
なぜなら、「第2波は来る。その時にもJAグループ全体で引き続き役割を発揮しなければならない」「経済への打撃は大きく、JAグループへの悪影響もある」と捉えているからです。
◆全中も試行錯誤しています
全中の職場では、就業規則等を変更し非常事態宣言終了後も在宅勤務を行えることとしました。政府のいう「新しい生活様式」の一環でもありますが、業務によっては生産性向上を期待できると考えています。
これに伴い、個人携帯への業務用番号付与も進めます。パソコンは現在でもリモートに相当対応していますが、セキュリティ向上と携帯可能を目的に更新期で順次入れ替えます。
在宅勤務時の管理も念頭に人事管理システムを変更します。既にE-ラーニングを提供開始していましたが拡大します。知識提供型研修は手応えを得ていますが、相互討議型研修も何とか具体策を見出します。重要な意思決定を止めないために、諸会議も少なくとも当面はウェブを主に継続します。
ウェブ会議の運用がうまく行かずお叱りを受けたこともありましたが習熟度をあげます。
会議によってはウェブにして開催頻度を上げ、コミュニケーションの質向上を目指します。今後、本会役員による全県個別協議を初めてウェブで実施します。
農政運動では、非常事態宣言下で予め要請書を届けたうえ、会長から電話で要請したこともあります。農政の集会では、多くの方が直接国政のキーマンから話を聞き、一方でJAグループの広がりも見せることが大事です。ウェブでそれらが実現できないか考えます。
もちろん都心に出勤し続ける以上、感染防止は引き続き重要で時差出勤も制度化し、職場にはビニールと段ボールでできた仕切りを置き始めました。職員が分担でドアノブなどを消毒しています。職員は全員マスク着用です。
◆JAグループの主張、自己改革に確信を持ってやり切る
JAグループは農業者の世代交代期という重要期に、改めて農業者の所得増大を重視し、これを端緒に農業生産の拡大、地域の活性化を図ってきました。新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの方が食料安保や農村地域の重要性に気づきました。
これからも波はありつつ大きな方向は変わらないでしょう。自分たちの主張に一層の自信を深め自己改革を進めます。今回を契機に国民的な理解を広げる取り組みも充実していきます。
また、経済情勢の悪化はJAグループの経営に影響を与えます。既にグループ全体で動き出している、持続可能なJA経営基盤の確立に向けた取り組みを加速しなければなりません。
◆但し具体策は変わる、デジタル化・相手本位・人の組織として
但し、具体的な事業実施策は変わるでしょう。各事業の意義を再確認し、より良い具体策はないか検討する機会にし、第2波も含めた将来の状況変化に対応できる引き出しを増やすことが大事です。
この際、3点に留意したいと思います。1つには、デジタル化で解決可能であれば絶好の機会として躊躇しません。社会全体、組合員の方々もデジタル化を進められます。必然です。役職員が遅れをとれば致命傷になるでしょう。全中もJAグループ全体のデジタル化を積極的に提起します。
次に改めて相手本位で考えます。新型コロナウイルスを恐れ続けることは正しいことです。
3番目は、人の組織であることを諦めません。実面談は減るでしょう。でも、気持ちの距離ができないようにウェブなどの手段に習熟します。そして何度かに一度は実際にお会いします。配慮すれば今後の懇親もできるようにならないものでしょうか。頻度が少なくなるだけ会ったことが嬉しくなるような、そんな組織運営を実現します。
皆さん、これからもお会いし、話し、智恵を交換していきましょう。形は少し変わるかもしれませんが。
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