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強力な国策なくして自給率のアップなし 萬代宣雄 JAしまね元代表理事組合長2020年8月24日
新型コロナウイルスは世界を恐慌の渦に巻き込み、先の見えない不安定な社会を形成させた。100年ほど前には「スペイン風邪」をいわれるさらに強大な病気が流行し、全世界で感染者6億人、1700万人から5000万人(推定)が死亡したと伝えられている。
今時の新型コロナは現在進行中であり、最終的にどの程度の数字になるのか未知数です。このような状況の中、「食料の自給率」45%に高めると時の政府は掲げているが、一向に改善の兆し、気配は見えない。63%を輸入で賄うこの日本にあって不安でならない。
今回のコロナ騒ぎで15品目がすでに食料等の輸出禁止処置をとっている。また、人の移動を見ても世界中が人の移動を禁止している。食料安保の面からも自給率37%で日本国民の食料供給は心配ないのか。こうした有事の状況に鑑み、大きな不安と疑問を感ぜずにはいられない。コロナ問題を契機に、掲げている食料自給率45%に向けての実効性のある施策を熱望する次第である。
自給率は1965年の73%以降、55年間、下がりっぱなしである。元来、日本の農業は国土の70%が中山間地であることを考えてもわかるように、農家1戸当たりの耕作面積は1.8ha。EUは16.9ha(9倍)、アメリカ118ha(646倍)、オーストラリア3409ha(1862倍)と、生産性から考えて太刀打ちできる状況ではないことは言うまでもない。
歴史の中でスイスは、隣国との戦争に巻き込まれ、輸入に頼っていた食料供給ができない状況を経験し、以後、自国の食料は自国で生産するという基本に返り、食料の安定供給に向けて努力したと聞く。国費を多額に投入し、生産拡大対策、食料自給率100%をめざす必要性を全国民に国策としてアピール。学校の教育現場でも有事の際の状況を二度と繰り返さないため、自国の農家がつくった食料を多少高くてもを買おうと国民運動として取り組んだと聞く。強力な国策なくして自給率のアップはできないということである。
将来にわたって安全・安心な食料が継続的に安定供給できる国家にしなければならない。多少、生活は苦しくても温もりのある地域・社会で、苦楽を共有し、
助け合いのまちづくりが必要である。「夢はでっかく、望みは高く、暮らしは少し控えめに」。若者が進んで地域に住み着き、協同の力で地域を守り育てる。コロナ問題を契機にそんなまちを造ろうではないか。
JAの役割がさらに重要性を増す中、JA全中体制をはじめ、全国連役員改選で新しい役員での3か年がスタートする。衆議院改選風が吹く中、国に対して勇気と自信をもって、我々の「JAグループ魂」を強力に伝えていただきたいと願う次第である。
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