JAの活動:守ろう都市農地! 指定期限迫る「特定生産緑地」
【現地レポート】JA東京みらい保谷支店 都市農地保全 組合員と地域の期待2021年12月1日
三大都市圏特定市では、1992年導入の生産緑地制度で指定された生産緑地の8割が2022年に指定期限を迎える。急速に指定が解除されれば都市農地は失われJA組織基盤にも大きな影響が生じかねない。そのため2017年に制度改正された特定生産緑地制度による指定促進が大きな課題となっている。この制度は生産緑地の指定から30年を経過した場合、どのような理由があっても期限が過ぎてからの指定は認められない。そのためJAではすべての対象農家に対して徹底した情報の周知が必要になる。指定促進に向けて取り組みを続けている西東京市のJA東京みらい保谷支店の現場を訪ねた。
来年4月に体験農園を開設予定
組合員訪問で説明徹底
保谷支店の管内である西東京市には生産緑地が110haある。
西東京市は2019(令和元)年10月に生産緑地を持つ組合員等に「申出基準日到来通知」を送付した。そこには、生産緑地指定から30年が経過する2022(令和4)年10月が基準日であり、特定生産緑地の指定を受けるには2022年2月までに申請手続きを行う必要があると記されていた。
その後、市は10回ほど説明会を開催、JAはすべての説明会に担当者が手分けをして出席し、JAとして申請に必要な書類作成など正組合員農家(以下、組合員)をどうサポートするかを説明した。
説明会後、JAは約170人の組合員を資産管理課だけでなくLA(ライフアドバイザー=推進担当者)も含めて訪問、制度とJAの支援内容を説明し、特定生産緑地指定の促進へ取り組みを進めた。
大山裕視代表理事組合長は「管内の農地をできるだけ残すことがJAの仕事。漏れなく期限に遅れることがないように取り組みを」と指示した。
具体的な支援策は必要な書類をJAが経費を負担してそろえること。組合員から委任状を提出してもらい、JAが公図と案内図、土地登記簿を取得し申請書類を仕上げていった。
保谷支店の井口敬章資産管理課課長は特定生産緑地として指定することのメリットを組合員に強調したと話す。
とくに特定生産緑地は「10年ごと」の更新であり、前回のように30年ではないことから10年後に再び指定を継続するかどうかを判断できる。
井口課長によると対象となる組合員は二世代目がほとんどで生産緑地制度の知識が少なく、一度指定したら解除できないと考えている組合員も少なくなかったという。
こうした組合員に対し、指定を受ければ固定資産税・都市計画税は引き続き農地評価であることや、相続税納税猶予制度が指定できることなどを説明した。また、今回は自らの営農継続が難しくなった場合、農地を貸借できる制度(都市農地の貸借円滑化法)も利用できることも伝えた。
青木隆夫さん(左)と井口敬章課長
地産地消で農地守る
JAの理事も務める青木隆夫さん(※隆は異体字)は2000m2の生産緑地を持つ。西東京市は農業者をサポートするための営農ボランティアの育成事業を行っているが、青木さんはその営農ボランティアを指導する業務を委託され、青空塾として農地の一部を活用している。また、地元の保育園、幼稚園児の農業体験の場としても農地を使う。
そして自ら育てた旬の野菜は庭先販売をして地産地消の促進に努めている。
「畑の前を通る子どもたちから、おいしい野菜を作ってください、と声がかかることも」と青木さん。農地すべてを特定生産緑地として指定申請する。
特定生産緑地制度について「安心して農業を続けられるガードができた」と評価する。青木さんは来年4月に160m2を6区画に分けて体験農園を開設する予定だ。
「食と農に関心を持つ人が増えていることを肌で感じています。子どもたちをはじめ地域の人が地産地消で地元のものを食べてくれることが都市農地の保全になる。そのことをもっとアピールしていきたい」と力を込める。
青木さんの庭先販売所
10年後も見据え必要なJAに
井口課長によると、意向が未定の組合員は現時点で10人ほど。申請期限の来年2月までを最後の追い込みとして相談活動を進めていく。
今回の取り組みを通じて「誰がどこにどんな農地を持っていて、将来に向けどのような考えを持っているかがよく分かった。組合員とともに共通の課題に取り組めたことが大きい」と話す。
特定生産緑地には貸借も認められたことから2022年以降はJAとして農地の貸借にも力を入れていく方針だ。高齢化で営農継続に不安を抱える組合員も少なくなく、一方で農業に関心が高まって地域内にも農業に関わりたい人が増えている。そうした人たちとマッチングができれば組合員の安心につながる。青木さんも「JAが中心となって都市農地の維持・保全のための計画づくりを」と期待する。
井口課長は「特定生産緑地の指定促進はJAとして絶対にやらなければならないこと。10年後も再び取り組まなければならない問題であり、今回対応をしっかりしておけば必ずJAに相談が来る。やはりJAが必要だと思われることが大事だと思っています」と語った。
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