JAの活動:第67回JA全国女性大会特集
【第67回JA全国女性大会特集】私たちJA育ち 地域ともに道筋描く(2)広島県 隅田 清子さん 食農を通じ情操育む2022年1月24日
JA全国女性大会が開かれた。そこで女性部活動をけん引してきた秋田県仁賀保町農協(当時)元職員の渡辺広子さんと広島県安佐町農協の元職員の隅田清子さんの”大先輩”に話を聞いた。テーマは「私たちJA育ち」で、JCA(日本協同組合連携機構)の根岸久子客員研究員がインタビューしてまとめてくれた。
1.JA退職後にスタートした地域での多彩な活動
隅田 清子さん
(1)次々に広がる小学校での活動
隅田清子さんは1968年に広島県安佐町農協に生活指導員として就職。その後はJAが建てた町民文化センター館長(農協の生活文化活動が広がるなかで地域住民の活動拠点となる)、支店長、生活文化部長を経て、52歳で退職した。
退職してから1年後(1997年)、PTA会長の推薦で地元小学校の図書館ボランティアとして1年間活動し、翌年には学校長の推薦で不登校児童の悩みに対応する「ふれあい委員」に就任し、8年間努めた(1997~2003年)。
さらに、1999年には、同年スタートの総合学習教科の担当も依頼されている(県教育委、特別非常勤講師)。隅田さんか総合学習に伴う事業を担うに必要な資格を有していたからで(中学校技術家庭科、生活改良普及員の資格をもつ)、小学3年と5年を担当することになった。
(2)小学5年生には「米づくり」を指導
5年生は「地域の特性を生かした取り組み」として米づくりをテーマに、田植え、稲刈り、もちつきを指導。任期は2年だったが、学校の要請でその後も引き続き担当してきたが、米づくりのプロセスを身を持って教えるのは肉体的にも大変で、見かねた老人クラブのメンバーが応援を買ってでてくれたので、8年間でリタイア。今は老人クラブのほか婦人部やフレッシュのメンバーが引き継いでいるという。
(3)小学3年生は「蚕を育てる」と「広島菜漬け」
小学3年生の担当は今も継続中で、「蚕を育てる」と「広島菜」の授業を行っている。「蚕を育てる」授業がスタートした時には校内に桑を植えることから始めたが、現在は6月に卵の孵化(教室)⇒1週間後に各自の箱で育て始める(土日は各児童は桑の葉を持って帰り、家で育てる)⇒3週間過ぎ、繭はり準備のため各自"まぶし"を作る⇒30日で繭を取り出し冷蔵保管する⇒11月に繭から糸を引き、生糸を取る実習⇒翌年1月には絹糸で作られた絹織物の展示(反物、着物、帯、スカーフ等)という工程で、最後は隅田さん所蔵の着物(男女の正装)を生徒や先生に着付けて終える。
地元特産の広島菜を教材とする授業では、種まきと広島菜漬けの実習を指導をしているが、こうした授業に刺激を受けた家庭科の先生の依頼でソバづくりやお茶づくり等の指導もしてきたという。総合学習の番外編とも言えよう。
(4)子どもたちから贈り物ー感動、そして似顔絵も
学年修了時には3年生から隅田さんに、授業のなかで心に残ったこと、楽しかったこと、感謝の気持ちを綴ったメッセージ集「カイコマスターすみ田先生へ」が贈られる。そこにはカイコや広島菜、隅田さんの似顔絵等も書かれているが、そのなかからいくつか紹介しよう。
「着物を触ったとき。これが本当にカイコの糸からできたんだ」「一つの繭からいっぱい糸が出てきてびっくり」「あれから桑の葉を見るとカイコを思い出します。教わったことは家族にも話しました」「カイコの命で作った着物や布。あの小さな命でこんな綺麗なものができるのかと」「カイコはかわいいけど、命を落として悲しかったです」等々。多かったのは「カイコ」のことで、孵化から着付けまでの「生き物」学習と体験が強く印象に残ったようである。
隅田さんは「最高のプレゼント」と。そして「子どもたちは上級生や兄弟からいろいろ聞いているので、毎年楽しみに授業をしています。とても素直に育っている姿を見る時、この子どもたちが大きくなつた時、戦争のない国であって欲しいと、つくづく思います」と語る。
子どもたちとそばづくりする隅田さん
2.JA時代―女性部活動活性化に一直線
(1)女性部員と向き合いつつ多様な活動とグループづくり
隅田さんがJAに就職したのは高度経済成長時代で、農業も農家の暮らしも大きく変わってきた時であり、しかも生活指導員という新たな分野の仕事。何をすべきか探るため女性の会合にはすすんで出席し、女性たちが求めていることや地域の状況を肌で感じ取ってきたという。
そうしたなかで声が上がった料理講習会に取り組み、それを機に手芸講習、美容講習会、生花教室等が次々とスタートした。こうしたボトムアップ型の活動は部員の創意工夫や自主性を引き出し、グループづくりも広がっていった。
(2)部員の声に応えるためのスキルアップ
部員のニーズに応えるための努力も惜しまなかった。例えば料理講習会を開くにあたっては、移動購買車に乗り食品の売れ具合を調べ、食生活の実態を把握しながら、暮らしに役立つ料理講習に努めたという。
また、「料理専門コースを設けて欲しい」との声に応え「料理専攻科」を開催したものの、自らの勉強不足に自信喪失し業務終了後に広島市内の料理学校へ通ったり、多くの人との関わりを持つようになり種々の相談を受けるようになったものの、乏しい体験では対応できないとカウンセリングスクールに入学している。
最後にーJAで培った財産を今、地域活動に生かす
隅田さんは、かつて「婦人部活動は自主活動なのだから、創意工夫をする芽を育てることが大切」あるいは「地区の特徴をいかに伸ばすか」と語っていた。そしてその通りに女性部員の暮らしや思いに真摯(しんし)に向き合い、そこで発せられるニーズを自らの力で実現させるための道筋を描き、協同の力で進めてきたように思われる。
こうしたプロセスのなかで隅田さんが培ってきた多様な能力や地域の人々や組織等とのつながり、信頼関係が今、地域で求められ、生かされているいるのではなかろうか。
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