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JAの活動:JA全農創立50年特集 なくてはならない「JA全農」を目指して

ヒトを基盤に「第3の道」を 協同組合の理念 ブレずに  宮城大学・三石誠司教授【JA全農創立50年】2022年3月29日

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JA全農が今年創立50周年となる。農業界や全農に詳しい宮城大学教授の三石誠司氏に「JA全農存立の意義と役割」として寄稿してもらった。三石氏は「事業の理念は協同組合にあってこそ」と強調する。

全農創立50周年、おめでとうございます。半世紀にわたる社会の大変化を乗り越えて発展し続けていること、素直に祝福したいと存じます。
私自身は22年を過ごした全農を2006年に離れ、大学人として16年が過ぎました。その間、OBの一人として外から農業と農協、そして全農を見てきましたが、このような機会を与えられたため、少し常日頃考えていることを散文的に記してみたいと思います。厳しい点もあるかとは思いますが、次の半世紀への糧として頂ければ幸いです。

どこへ行くのか?

宮城大学教授 三石誠司氏宮城大学教授 三石誠司氏

端的に言えば、「全農はどこへ行くのか」という一言に尽きる。一般に、組織における目に見える結果は、トップの判断だけでなく無数の人の数えきれないほどの判断と作業の結果であり、それは一枚一枚、紙を積み重ねるようなものだ。

そのため、外から見える結果と組織の内部評価は異なることが多いが、それでも「何で?」と思うときはしっかりと質問をした方が良い。大学でよく学生に話すことは、「何十年夫婦でいてもお互いの考えは、口に出さないとわからない。だからこそ、口に出し、理由をよく聞き、納得するまで議論をすることが必要だ」という点である。

過去半世紀で日本の社会構造は大きく変化し、女性の社会進出も十分に進展した。古いCMではないが「男は黙って」とか「背中で語る」のは単なるコミュニケーション能力不足と判断される時代となった。農協組織も同じである。

回りくどくなったが、要は「外から見た全農」は実にわかりにくい。20年以上内部にいた人間ですらそうであるから、農家や一般の方々にはさらにわかりにくいのではないだろうか。大昔、ある研究者は全農職員の筆者に対し、「全農は最後のブラック・ボックスだ」と言ったが、ある面では正鵠(せいこく)を得ていたのかもしれない。

「ある面では」と述べた理由は、公開会社のように経営に関する具体的な戦略や数字を全て公開せよと主張している訳ではない点を述べておくためである。ここは誤解してはいけない。先の言葉を言われた際、筆者は大先輩に対し「それはご自分で調べるものではないでしょうか」と反論したため、かなり生意気な若造と思われたに違いない。

世の中には非公開会社などいくらでもある。事実、穀物メジャーの最大手であるカーギル社も非公開会社であるし、日本の一般消費者に身近なところではスターバックス・ジャパンや吉本興業なども非公開会社である。これらについて非公開の是非が問われたことはほとんどない。公開・非公開はあくまで経営上の選択肢の一つである。

では全農との違いは何かと言えば、全農は株式会社ではなく協同組合であり、これが組織の根本的な土台ということを忘れてはならないという点である。内外部を問わずブレるかブレないかの基準はそこにある。

発展の方向:川上から

資本主義か共産主義かというある世代以上が夢中になる議論を横におけば、現代社会ではほとんどの国で株式会社も協同組合も活動している。話をわかりやすくするために株式会社の発展の方向性を考えてみたい。

鍵は「利益の源泉」の存在だ。生産地の近く、いわば上流に利益の源泉がある産業の場合、発展の方向は最初期の「多数乱戦」から「水平的な連携」、そして最後は「垂直統合」という流れになることが多い。

当初は「利益の源泉」に目をつけた多数の人々が参入する。そして競争の中で、いくつかの有力な人や組織が大きくなり、お互いに一定の連携を行う。初期段階では対等な連携だが、じきにその中から「利益の源泉」を統合する組織が登場する。こうした組織がいくつか出てくると業界が寡占化し「安定化」する、という流れである。

興味深い点は、多くの人は独占や寡占を嫌う一方で、実は混乱し乱高下する市場よりは安定した市場を好む傾向が強い点である。
冷めた眼で見ると、全国各地のJA合併はまさに「水平合併」だし、ひところ全国的に行われた組織整備はいわば「垂直統合」組織を意図的に作り出そうとしたものに見える。

率直なところ、「垂直統合」は強力な戦略である。畜産の養鶏分野ではインテグレーションがはるか昔から実施されているし、全農本体で筆者が関わった分野で言えば、米国中西部のコーンベルトから飼料穀物を集荷し、CGB・全農グレインを経由して輸入した後に、全国各地のくみあい配合飼料で製品化して畜産農家に供給する仕組みがこれに相当する。この仕組みのポイントは徹底的な合理化である。

なお、協同組合・株式会社にかかわらず「垂直統合」は発展のための有力な一つの選択肢だが、これが全てではないことも理解しておくことが重要である。

発展の方向:川下から

「利益の源泉」が川下あるいは川下に近い場合の戦略は何か。答えは我々の生活の周りにあふれている。

スーパー、ドラッグストア、整骨院、学習塾、美容院、ラーメン店など、最近では実に多くの店舗がこの形態を採用している。最も明確なものはコンビニである。これも全農にいた当時、ある経営者が「フランチャイズこそ最強の仕組みだ」と筆者に力説したことがある。それはその経営者のビジネスがコンビニであり、「利益の源泉」が川下に近い点にあるからこそである。

その意味でコンビニはわかりやすい。消費者は多少の価格よりも利便性(コンビニエンス)を選択する。それが利益の源泉だが、コンビニ本部から見れば個別商品の売買差以上にフランチャイズ・システムから得る安定的なロイヤルティー収入が大きい。つまり、先の「垂直統合」はモノが流れる仕組を一貫化・合理化したものであるのに対し、フランチャイズ・システムは「契約」に基づき、一定のリターンを継続的に得ることが可能な仕組みという訳だ。

あり得ない話だが、仮に全農をJAグループのフランチャイズ本部とすれば、各JAは全農のロゴやノウハウ、商品提供を受けられる代わりにコンビニの各店舗と同様に全農に多額のロイヤルティーを納入することになる。こんなことをしたら全国のJA関係者は怒りまくるであろうが、フランチャイズ・システムとはそもそもそういう「契約」に基づくシステムであるという事だ。見方が変わればこれも有力な選択肢になる。

発展の方向:誰と組むべきか

もうひとつ、重要な点がある。いかなる業界であれ、誰と組むかはその組織の根本に関わる大問題である。ヒトに例えれば結婚に近い。離婚・再婚は人の世の常だが、仕事においてもどのような組織と何のために組むかは慎重に考える必要がある。

全農の事業は極めて幅が広い。筆者個人ですら、名古屋や福岡の小規模な地元の各種商店やメーカーから日本を代表する大手商社や銀行、はては海外の企業まで仕事の内容により実にさまざまな方々と仕事をしてきた。

若い時には、特定業界の仕事のやり方に興味を持つこともあったが、ある程度の経験と修羅場を踏むと、組織の長期的な継続と繁栄のためには、根本の考え方、いわば理念こそが重要な鍵であるということが見えてくる。

どれだけ巨利が見込めても、その理念と異なる行動は、組織形態にかかわらず最終的には長続きしないだけでなく、状況によっては組織に大打撃を与える時代になってきた。困難なときに戻るよりどころとしての判断基準こそが理念だからである。

消費者と共生も

以上を踏まえ、最後に1つ例を出しておきたい。例えば、社会の大きな流れは「生産者から消費者へ」である。自然災害や環境変化などにより振り子が元に戻る可能性はあるが、現代社会では少なくとも消費者を無視して物事は進まない。

全農が生産者の協同組合の全国組織ならば、消費者の協同組合の全国組織は日生協である。現実を見れば、前者が必死に川下に進出し、後者も必死に川上に進出している。慣れない場所で、お互いにいろいろと「内部事情」はあるのだろうが、協同組合としての基本理念を共有する組織同士がしっかりと全組織レベルで提携し、その上で個別の事業戦略レベルでは戦略的提携を含めて「垂直統合」や「フランチャイズ」などの仕組みを活用する、あるいは堂々と「第3の道」を行けば良い。

その基本をしっかりすれば組織はいかなる逆境にも揺らぐことはない。

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