JAの活動:JA全農創立50年特集 なくてはならない「JA全農」を目指して
「ゆめファーム全農」による営農実証 先端施設で高収益【JA全農創立50年】2022年3月29日
JA全農は、施設園芸における大規模多収栽培技術の確立・普及と人材育成を目的とした「ゆめファーム全農プロジェクト」に取り組んでいる。、2014年に栃木県、17年に高知県、19年に佐賀県で、施設園芸先進国であるオランダの技術を取り入れた施設を設置し、栽培技術や施設運営、経営管理の実証・開発を重ねている。キュウリの栽培で全国平均の約4倍もの収量をあげた「ゆめファーム全農SAGA」の取り組みに施設園芸の未来をみる。
軒高5mのハウス連棟
「ゆめファーム全農SAGA」は、佐賀市の中心から4kmほど北にある。水田が広がるなかで、軒高5mの連棟ハウスは遠くからも目に入る。東側には、ゆめファームに排熱と二酸化炭素を供給する佐賀市の清掃工場が隣接する。施設面積は1万176平方m(約1ha)。栽培面積は8650平方mあり、間口8m、奥行き84mの温室が14棟連らなっている。実証テーマの一つである土耕とロックウール養液栽培を比較するため、2区画に分かれている。
ゆめファームは、清掃工場の排熱と二酸化炭素の利用、最新の天窓材やカーテンの駆動装置、それに環境・潅水制御装置の導入などの特徴があるが、その一例を紹介する。
換気では、被覆部の両面全面が開き、通常よりも開口部面積が大きくなる天窓システムを採用することで効率を大きく高めた。加えて、適切な潅水管理を行うことによる植物の最適化とそれに伴う蒸散量の改善、ミスト装置の活用で、外気温よりも温室内の温度を低くすることができた。機能面だけでなく、オランダから輸入した天窓システムは、開閉に必要な駆動装置が少ないため、コスト面でもメリットがある。
ロックウール養液栽培のキュウリ
また収量に直結する採光性も最適な環境を目指した。採光性に優れた硬質フィルムを採用し、それを支える骨材(垂木)のピッチは133cm幅と広く、使用本数を通常の半分ほどに抑え、太陽光を遮る面積を減らした。カーテンも光を遮らないよう、小さく畳めるようになっている。「キュウリにとって最高の環境を徹底的に追求した」と、全農高度施設園芸推進室の知識秀裕室長代理は強調する。
栽培管理は環境管理、かん水管理、作業管理の三つが基本で、これらを組み合わせることで栽培環境、さらには植物状態の最適化を実現することができる。このため温度、光、風、CO2、かん水(EC、pH、量、回数)、排液リサイクル、適時の作業実施などがポイントになる。これらの栽培条件をすべて数値で管理するのが特徴。またロックウール養液栽培では「ハイワイヤーつるおろし栽培」を採用して作業性を高めるなど、効率的な労務管理にも取り組んでいる。
この成果は収量に現れている。栽培初年度、養液区で10a当たり56・2t、土耕区で54.7tの収量をあげ、目標としたそれぞれ50t、45tを大きく上回った。栽培を担当した全農の職員にとってキュウリの栽培は初めてで、キュウリ栽培の経験豊富な篤農家の指導はあるものの、これだけの成績をあげることができたのは、数値に基づく栽培管理を実践したことが大きい。
運営管理に関する基本的な考え方はゆめファーム全農とちぎ(トマト)、ゆめファーム全農こうち(ナス)においても同様であり、国内収量を大幅に上回る目標収量を達成している。また、「ゆめファーム全農SAGA」では、佐賀県の担い手が、今秋よりゆめファーム全農パッケージを導入して営農を始めている。
ゆめファーム全農のプロジェクトリーダーであり、全農耕種総合対策部高度施設園芸推進室の吉田征司室長は「高機能施設を設置し、植物状況に応じた栽培管理をデータに基づいて実践することで高収量を達成できた。今後は高収益につながる運営実証を各圃場で突き詰めるとともに、それを支える労務管理などの技術の開発に注力する。また、実証してきた高収量実現のための施設・資材・栽培技術を各種セミナーや講演会、視察の受け入れ、展示会などで発信し、担い手の手取り最大化に貢献したい」と今後の展望について力を込める。
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