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JAの活動:農業復興元年

【農業復興元年】農業新時代の扉を開けよう 「危険水域」の食料問題に決然と JA沖縄中央会 普天間朝重会長2023年7月14日

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生産資材の高騰や農業者の減少など生産現場はかつてなく厳しい状況にあり、食料自給率が38%のわが国は大きな方針転換に迫られている。こうした流れを踏まえて食料・農業・農村基本法の見直しに向けた議論が進んでいる。こうした状況にJAグループや産地はどう向き合うべきか。農業協同組合新聞と「JAcom」は、「農業復興元年・JAの新たな挑戦」として、先駆的な挑戦を続ける産地の取り組みや各地のJAのトップ、専門家からの提言などを特集として展開する。今回は、JA沖縄中央会の普天間朝重代表理事会長の提言を紹介する。

沖縄県農業協同組合代表理事理事長 普天間朝重氏JA沖縄中央会 普天間朝重代表理事会長

適正な価格形成を 離農にも直結

2022年に入り、食品やエネルギーの相次ぐ値上げで物価が高騰しており、この動きは本年に入ってもなお続いている。特に食品の値上げは消費者にとっては日々の暮らしを直撃する切実な問題であり、生産者や流通業者にとっては増加するコストを価格転嫁できなければ事業継続を難しくする。こうした生産と消費という利害が相対立する中で「公正な価格」とは何か、が問われている。

適正な価格形成というが、現実は真逆の動きをしている。子牛の生産現場では、飼料価格が高騰しているのに子牛の価格は急落している。青果物についても肥料価格が高騰しているのに販売価格は横ばいだ。それは多くの取引がセリ市場を通して価格が決まるので、コストの上昇とは関係なく、需給によって価格が形成されるからである。また、同じ食料品でも加工食品については相次いで値上げしているが、それは保存がきくからである。値上げして需要の動向を見ながら在庫を調整していけばいいのだが、農産物では子牛は生後数か月以内という基準があり、青果物についても収穫したら直ちに販売しなければならないという販売側の弱みがある。生産調整や在庫調整がきかないのだ。酪農においては価格交渉の結果、いくらかの値上げは実現しているものの、コスト上昇分を賄うにはほど遠く、離農が拡大している。本県でも昨年から4戸の農家が離農している。

遠い消費と生産の距離 仏のエガリム法も途上

現在では消費と生産との距離があまりにも遠くなっている。消費者の立場で言うと、安全で高品質なものを購入できるのは当たりまえ、農産物の生産過程と必要なコストには関心がなく、関心があるのは値段だけ、という状態になっている。農家の苦悩はどこ吹く風だ。とはいえ、この問題は離農に直結するだけに対策は待ったなしだ。

この適正価格の問題ではフランスのエガリム法を参考にすべしという議論があるが、エガリム法も2018年に制定されたが実際にはうまくいかず、21年にエガリム法の改訂版となるエガリムⅡ法が制定されている。すなわち農業者の所得改善と食料安保という社会の課題に対し、効果が限定的であったエガリム法を強化するという目的でエガリムⅡ法を制定したのであるが、エガリムⅡ法もまた制定したばかりで目的の達成にはさらなる取り組みと検証が必要であり、これがうまく機能するかどうかはもうしばらく様子を見る必要があるだろう。

沖縄県でも卵の取引においてスーパーと価格交渉をしたら、取引を打ち切られたケースがある。改めて双方のトップ同士の交渉で何とか取引を再開できたものの、スーパーでは卵の特売をすると億円単位で赤字が出るという主張をしており、生産者側の要求を満たすことは実際にはかなり厳しいとの指摘を受けた。そうであれば農家に直接何らかの支援を行えばいいのではないかとの考えもあるが、EUでは農家への直接支払いが実施されていて、農業者の所得がある程度は保証されているが、それでも十分ではないからエガリム法のような法律が必要となっているのである。そうした取り組みを行っているEUでさえ農業者は依然として苦しい状況に置かれているとなると、いったい農業者を支えるための政策をどう考えたらいいのだろうか。

食料自給率向上についてはイギリスを参考にすべしという意見がある。イギリスでは1966年に45%だった自給率が96年には79%に達し、現在でも概ね70%台を維持している。つまり、「島国であるイギリスで食料自給率を向上できたのだから、同じ島国である日本が自給率を上げられないのはおかしい。イギリスのやり方を見習うべきだ」ということだ。だが、イギリスはパンが主食で小麦の実需が確実にあり、小麦の生産奨励がそのまま自給率向上につながったわけだが、日本では米が主食であり、米の生産奨励に力を入れて生産量を増やせば数字上の自給率を上げることはできるが、米の消費が急速に落ち込んでいる中では米の余剰に拍車をかけるだけだ。そうであれば輸出で対応すればいいという意見もあるが、2008年に食料危機が生じ、世界的に食料輸出国が輸出規制を行ったときに我が国の総理大臣が同年6月にローマで開催された世界食糧サミットで各国に食料の輸出規制を撤廃するよう求めたが、各国では「自国民が優先である」として相手にされなかったという。そういう苦い経験があるにもかかわらず、「いざとなったら輸出を国内に振り向ければいい」というのは勝手すぎないか。

人手不足の深刻化 多様な人材確保の必要

さらに心配されるのは人手不足である。沖縄県では(全国でもそうだが)人手不足で海外からの研修制度を活用して農業現場に派遣しているが、コロナ禍で世界的に人の移動が制限されたことから、海外研修生が来日できず、農家はやむなく規模を縮小してしのいだという実態がある。製糖工場においても次年度から季節工の残業規制が導入されることから、従来の2交代制から3交代制に変更せざるを得ないが、そうすると季節工の人数が1.5倍必要になる。短期間で多くの収入を得ようとする季節工が残業手当が激減する中で、果たして来てくれるか不安である。そうした中で、本県離島では人口の減少が止まらない。沖縄県の農業産出額の上位を占めるサトウキビは8割が離島であり、肉用牛でも離島が7割を占める。JAおきなわでは離島に6つの製糖工場があり、家畜市場も6つある。製糖工場の安定操業のためには最低限のサトウキビ原料が必要なことから、JAおきなわでは農業経営規程を変更して製糖工場のある離島においてJA自らサトウキビ生産ができるようにした。担い手の確保という最善のものを期待する一方で、最悪の事態にも備えておかなければならないからだ。

現行基本法制定直後の2000年に240万人いた基幹的農業従事者は、22年に123万人まで半減しているが、農水省ではさらに今後20年で30万人に激減すると見通している。農業人口が大きく減少する中で今回、基本法見直し論議において新たに「多様な農業人材の育成」を打ち出したことには意義がある。都市から農村に移住し農業と別の仕事を組み合わせた「半農半X」の取り組みが全国で広がっている状況を参考に、本県でも離島を観光資源と位置づけて新たな雇用の場を創出するとともに、行政の責任で住居を建設して定住社会の構築を図り、JAでも離島において畜産振興をさらに進め耕畜連携によりサトウキビの単収を上げるなど、関係者が一体となって多様な農業人材の確保に取り組まなければならない。

危険水域の食料問題に決然と

また、現在沖縄県では耕作放棄地の解消に取り組んでいる。この4月から施行された「改正農業経営基盤強化促進法」に基づいて地域計画の策定と目標地図の作成が義務付けられたことを追い風に、この際、徹底的に耕作放棄地を解消しようとするものである。その場合、解消後の作目の選定をどうするのかということと担い手をどう確保していくのかの問題がある。これまでこの両方の議論は全くリンクしていなかったが、今後は、セットで議論を進める必要がある。同時に、耕作放棄地を再利用可能な農地にするための諸経費に対する支援や農作業受託組織の育成なども必要となろう。

食料問題が危険水域に入っている。だが危険が迫った時逃げ出すようでは駄目だ。かえって危険が2倍になる。決然と立ち向かえば危険は半分に減る。どんな困難な状況にあっても解決策は必ずあるものだ。神は一つの扉を閉めても千の扉を開けている。その中に農業新時代の扉があるとすれば、それを見つけ出し、一歩踏み出そう。その一歩こそ農業復興元年なのだから。

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