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JAの活動:消滅の危機!持続可能な農業・農村の実現と農業協同組合

協同のつながりを未来の糧に 日本労働者協同組合連合会 古村伸宏理事長2023年10月16日

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労働者協同組合法が施行され1年が経つ。日本労働者協同組合連合会理事長の古村伸宏氏に「新自由主義がもたらした貧困・格差の拡大と農業・農村・農業協同組合の役割」として提言をもらった。古村氏は協同組合の連携とコミュニティー群の創出の重要性を指摘している。

生存条件を培うコミュニティー

日本労働者協同組合連合会理事長 古村伸宏氏

日本労働者協同組合連合会 古村伸宏理事長

新自由主義とは、極言すれば「私」を絶対的に重視する思想である。それは、マネーとこれにひもづく資産を徹底して個人に帰属させるものである。その意味で「公共(みんな)」とは対極にある価値観によって支えられ、またそうした価値観を極大させるシステムともいえる。

また戦争は、即時に「私たち」を強要し、得るものが一部・少数の人々の共通の利益であっても、それを覆い隠し「公共」性を装飾する。その動機となったのは食べ物であり、資源だったが、国家による戦争によって、「みんな」が潤うという事実は存在しただろうか。そこには再び格差や対立が生じ、それを封じこめる役割も戦争は担ってきた面があるのではないだろうか。

今を覆う様々な危機を前にして、個別の課題ではなくすべての局面とテーマを覆う危機の本質は、ここから生まれ、これを見つめ直すこと抜きに、危機から全滅へのシナリオは回避できないように思う。絶滅はもはや「私」も覆い込み、種の存続がついえることを意味する。

その意味で、「公共とは何か」を問うことが、今の危機を打開する入り口であり、ここに協同組合の存在意義を見出すことが求められているように思う。テーマは「共益」から「公益」へ、その連続性と融合であり、「私から私たちへ」「私たちからみんなへ」の体験を積み上げていく、組合員・市民の「協同の実践」とその性質的融合と考える。これこそが、未来志向的な協同組合の連携の根本命題だといえる。

「食」を出発点に今日の危機を掘り下げていけば、略奪や支配を伴う「戦い」の歴史に行きつく。その「戦い」は様々な局面で対立関係を常に引き起こす。しかもこの関係は、人間同士にとどまらず、様々な種や生命の対立・支配関係も強化してきた。動植物の生態やその連鎖・循環にも人為的に介入し、人間にとって都合のよい「生命コントロール」を施してきた。自然や他の動植物への支配的態度は、人間社会における優劣や差別の温床となってきたのではないだろうか。

今日の食料をはじめ、気候・環境・生物多様性や、貧困・格差・分断・対立といった危機の複合的・総体的な深刻化は、人間という生きものの営為が、「私」とその「利益」に突き進んできた結果と捉えることができる。その温床となってきたのが分断と対立の構図を意図的に描き出す為政者たちだった。これに対抗するのが、草の根の「私たち=共益」と「みんな=公益」がタッグを組む戦略である。

資本主義が登場し、「私」と「利益」の欲望が暴走したときに、これを食い止め対抗するために生まれた知恵が「協同組合」であり、これは本来人類がその歩みの中で生存戦略として編み出してきた「協同」の組織化でありシステム化といえる。原初人間の社会は、コミュニティーを形成し、「ともに食べ、ともに育てる」という原理を持っていたといわれる。しかもコミュニティーは、その構成員のコミュニケーションを重視しつつも、自然界の変化や外敵から守り合うという、外にも目を向ける集団的自衛機能だった。集団的自衛とは、本来自然の脅威を前にした人間社会の機能である。

こうしたコミュニティーという機能の必要性は、人間が「弱い存在」だったから生じたともいわれる。弱さゆえの協同というすべは、人間が支配力を高めたと錯覚した現在においてもなお、日常の中に存在する多くの人々の生き方や精神の根底に息づいているように思う。

自分の人生においても、子どもから大人への成長プロセスは、「私」から「私たち」へと、生きるための大切な存在に気づき、つながりを持ち、敬い尊び合う学びの経験だった。それがコミュニティーであり社会だと考える。なおその精神性は、「八百万の神」と称される自然観にも通じている。

労働者協同組合法が施行され1年が経過した。現在60を超える労働者協同組合が設立されている(うち二つの連合会、9月30日現在)。そのあり様は実に多種多彩である。また、この法人の活用を検討する主体は、自治体の位置づけによって広がりが変化しているが、協同組合陣営の中でも「一つの協同組合」ではなく、「自分たちの協同組合に位置づけ、組合員の主体的な活動を組織化し持続可能にする」ものとして捉える傾向が広がっている。

そもそも日本の協同組合においては、その組合員は単一の協同組合に所属するものではなく、複数の協同組合員であることが多い。その意味では、協同組合という組織が連携する土台に、複数の帰属を持つ組合員の自覚的な協同組合活動や、異なる組合員同士の協同組合活動を育てていくプロジェクトのような性格を醸し出す可能性を、労働者協同組合は有していると感じる。

このことは、居住によって定められる閉ざされた自治会組織においても、同様の検討や実践が始まっている。自治会での問題意識や必要から生まれた事業組織を労働者協同組合化することで、そこで働く人は他のコミュニティーからも参加が可能となり、またその事業は他のコミュニティーへも役割を果たす。閉鎖性を緩め、帰属を複数化することで、「わが集落」だけでなく、「隣の集落」も「他の集落」も、共に持続していくための鎹(かすがい)のような役割を果たす可能性である。これは協同組合全般が持っている開放性とつなぐ機能ではないだろうか。

今日、単一のコミュニティーへの帰属から、複数の帰属に価値をおく考え方が広がりを見せている。一人ひとりは人格が一つであっても多様な側面を持ち、異なる人々と異なる関係性の中で異なる役割を担うという、個の中の多様性という価値観である。協同組合もまた、ある場面では役員や職員の任を担いつつ、他方では違う協同組合における一組合員として活動し、あるいは働くといったマルチなあり方が意味を持つ時代が、既に始まろうとしている。

公共性持つ農業 農協の役割重要

こうしたあり方を農村において考えるとき、「農村とは何か」を農業者独占の問いとせず、そこで働き暮らす全ての人たちとともに考え、そのあり方を新たに編み出していくことが求められる。離農する人々の中には、農作業そのものだけでなく、草刈りや水路の管理ができないことを理由に挙げる人も少なくない。

農家が多数を占める時代においては、地域全体で取り組んでいた「公共の農業」は、農家の減少とともに地域の少数派となり、「私益」とみなされ、地域の人々にとっての農業に対する当事者性が失われている。これを取り戻すのは、「地域の食べ物」から始まり、「地域の環境」「地域の文化」といった、共通・共有する生存条件の当事者意識を農業の中に見出し高めるための、地道で体験的な取り組みの積み重ねであり、その中から垣根を取り払うオープンマインドな自治活動の創造ではないだろうか。

ここでは、お金に支配されるのではなく、お金を使いこなす所作が重要であり、地域の仕事によって得られる経済的・社会的な恩恵を、子どもたちや若者たちが感じることではないだろうか。ここに農業が持つ多面的で文化的価値が存在するように思う。コンビニでバイトするより、同じ時給で地域のための仕事する若者や、現物が支給される子どもたちの経験は、「誰のため」を実感し、将来社会の当事者性を高める「協同の体験」を育むという、真の公共性を学ぶ機会になるに違いない。その基礎が「働く」という行為を公共化し、協同組合とそこで働くこと、そして働くことを協同化する労働者協同組合を、地域と暮らしの中から生み出す契機となるだろう。

農業協同組合は、日本の協同組合を包括的に新しい段階へといざなう重要な使命を果たす段階にある。その際重要なことは、「組織」から出発するのではなく、組合員=人から出発し、人々の協同の実践から地域と暮らし、文化と経済をマルチにつなぎ育むことであり、ここに協同組合の未来的価値を感じ、共に地域で考え実践を起こしていきたい、

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