JAの活動:第44回農協人文化賞
【第44回農協人文化賞】現実を直視し一歩前へ 一般文化部門 神奈川県・宮永均JAはだの組合長2023年12月15日
多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第44回農協人文化賞の表彰式が11月30日に開かれました。
JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載します。
一般文化部門
宮永均JAはだの組合長
この度は、栄誉ある第44回農協人文化賞をいただき大変光栄に存じます。
この栄誉は、私ひとりの力で受賞できたのではなく、組織を挙げて取り組んできたことが評価され、受賞につながったと感謝しております。
私は協同組合らしさを追求し続ける歴代組合長の後ろ姿から、農業協同組合運営を学んできました。JAのミッションはJA綱領で示すとおり「地域農業と地域社会に根ざした組織としての社会的責任を誠実に果たす」ことです。すなわち地域農業と組合員の農業経営を支え、地域づくりに貢献する役割を誠実に果たすために、食と農を実践主体として地域になくてはならないJAとして位置づけられるようにしなければならない訳です。そのため総合JAのリーダーは、常にメンバー全員の持つ総合力をどう結集し、発揮させていくかを配慮しておく必要があります。
また、変貌する環境変化の下で地域になくてはならないJAとして生き残るために、現実を直視し一歩を踏み出せるよう「ピンチを作り出しているのは環境ではなく、現実に目を向けない自分自身である」ということを教訓としています。
これまでの取り組みを示させていただき、特筆すべき一部をご紹介申し上げます。
日本農村医学会表彰式(2021年10月)
1.組合員増加運動・女性の運営参画
2000年に企画部署にいた私は組織基盤強化をはかるため、当時、6693人の組合員を女性組合員増加を含め1万人にする組合員増加運動を企画しました。
1999年6月に「男女共同参画基本法」、7月に「食料・農業・農村基本法(第26条:男女が社会の対等な構成員としてあらゆる活動に参画する機会を確保...)」が公布。またJA全中で、2003年末までに女性の占める割合を全国平均で25%以上、総代の10%以上、合併JAにおいては女性理事を2人以上登用することが目標設定されました。このため、私は組織問題審議会を設置して、正組合員の25%を女性、女性理事を2人以上、すべての委員会に女性2人を構成員とすることを提言し理事会で決定しました。結果、組合員は、10年に1万1517人となり目標を達成できました。その後、組合員世帯1万戸の目標を掲げ、現在世帯数1万1882戸、組合員数1万4315人、組合員の女性割合37%と女性を含む組合員増加がすすみました。
2.組合員教育事業と准組合員等の意思反映方策
当JAは昭和40年代に打ち出した協同組合らしいJAづくりを追求するため、組合員教育事業を実施し現在に至っています。組合員増加運動によって加入した組合員に、既存組合員と同様に協同組合運動についての理解・認識を深めてもらい「我がJA」への帰属意識の高揚につなげるため、特に准組合員のための「組合員基礎講座」を設けて受講してもらっています。
また増加した組合員への意見交換の場として、春・秋の座談会に新規加入組合員をはじめ准組合員との意見交換を積極的に行うため、既存の会場に加えて本所に土曜日開催の会場を設置しました。現在も組合員の学びや対話を絶やすことなく組織に根付いています。
3.都市農業振興と新たな農業の担い手発掘
秦野市、秦野市農業委員会、JAはだのは2005年10月、神奈川県都市農業推進条例が公布されたことを受け、同年12月に「はだの都市農業支援センター」を本所に設置しました。目指すところは持続可能な農業の実現と、三者の専門性と連携を生かした農業者への相談・指導の充実、地域住民への「農」の理解促進、遊休農地の解消、新規就農者の発掘など、「農」に関わる様々なニーズに対応するための体制をつくることです。
当時の松下組合長が秦野市長との調整、私は市担当部署と調整し、粘り強い協議を重ねた結果、4年の歳月をかけて同センターの設置を実現しました。そして同年には、秦野市長を塾長、JA組合長を副塾長とする「はだの市民農業塾」を設置しました。塾では、新規就農コース、基礎セミナーコース、農産加工セミナーコースを開講し、様々な学習機会を提供しています。新規就農コースでは修了者100人のうち85人が就農、うち66人が農家以外の人たちであり、高い成果を上げています。
また、新たな都市農業振興の取り組みとして、秦野市とJAで、はだの都市農地保全活用推進協議会を設置し、組合員が運営する体験型農園を設置しました。丹沢山系の伏流水に恵まれた秦野の地勢を生かし、組合員が運営する「名水湧く湧く農園」を立ち上げ、現在では約100人が利用する農園になっています。
4.組合員の命と健康を守る活動
JAはだのは組合員の病気・けがの予防と食による健康管理活動を続けています。健康診断・人間ドックの受診向上、食による健康促進、農作業事故未然防止・労災補償の確立に努めています。その取り組みと成果に対して、2021年農村医学会より「金井賞」、22年に日本農業労災学会より「実践賞」を受賞しました。また、時代の変化に合った協同組合のあり方や安全安心な食の供給を模索し、パルシステム神奈川との包括連携協定による生活購買事業の刷新などに取り組んでいます。
この受賞を機に、なお一層協同組合運動に邁進していきたいと思います。
【略歴】
みやなが・ひとし 1958年神奈川県秦野市生まれ。早稲田大学卒業。2009年秦野市農協参事。15年専務理事。21年代表理事組合長就任、現在に至る。 日本農業労災学会(副会長)、早稲田大学人間科学学術院人間科学会に所属。
【推薦の言葉】
協同組合らしさの追求
JAはだのの歴代組合長は、昭和40(1965)年代に打ち出した協同組合らしいJAづくりを一貫して追求し、現在に至っている。①毎月定例日を決めた職員による組合員訪問活動と広報誌の配付②地域の生産組合によるボトムアップの意思反映と協同活動③組合員リーダー育成にむけた協同組合講座「組合員大学」の開講──などは、JAはだのの長きにわたる取り組みが評価され、全国のJAに広がっていったものである。
宮永氏は、入組以来、協同組合らしさを追求し続ける歴代組合長の後ろ姿から学ぶとともに、時代の変化にあった協同組合のあり方を模索し続けている。組合員増加運動では、目標を超える組合員数を達成し、女性のJA運営参画でも成果をあげている。秦野市と一体となった「はだの都市農業支援センター」や「ファーマーズマーケットじばさんず」の設置を実現。農民の健康管理活動、農作業事故防止・労災補償の確立と実践に対し、日本農村医学会「金井賞」や日本農業労災学会「実践賞」が授与されている。
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