JAの活動:【2024年新年特集】どうする食料・農業・農村・JA 踏み出せ!持続可能な経済・社会へ
【提言2024】停戦と気候危機阻止に立ち向かおう―他人事ではない 東京大学名誉教授 谷口信和氏2024年1月23日
2023年、世界は地球沸騰化の時代に突入、地上ではロシアのウクライナ侵攻が続き、さらに中東情勢も深刻化、混迷と対立が深まるなかで2024年を迎える。本紙新年号は「踏み出せ! 持続可能な社会へ」をテーマに、世界情勢と日本の未来を見越して、農政をはじめとした政治、政策、そして農業協同組合への提言を幅広く識者に発信してもらう。
東京大学名誉教授 谷口信和氏
これは単なるスローガンではない。実践の指針だ。ガザ戦争では死者が2万人を超え、その4割がこどもだとのニュースが飛び込んできた。こうした中でイスラエルの首相は依然としてハマスのせん滅を叫んでいる。ウクライナ戦争は全くの膠着(こうちゃく)状態に入り、戦争終結の目途はまったく立っていない。一方、JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)が発生し、日本でも年末にかけて九州から北海道までの日本海側が暴風雪・豪雪に見舞われ、生活が脅かされている。気候危機にともなう異常気象の影響だ。
一見すると別にみえる二つの戦争と気候危機はここにきて一体化を始めた。米国・ガルフ(ニューオーリンズ)からの日本へのトウモロコシ輸入はパナマ運河を経由する。しかし、周辺地区の70年来の異常渇水で通常の6割の通行制限となっており、2024年2月には4.5割への縮小が見込まれる。すでにスエズ運河や喜望峰経由ルートへの振替も始まっているが、紅海を通るルートではハマスに連帯し、イランが支援するフーシ派の攻撃を恐れ、12月18日には英石油大手BPがタンカー運航の一時停止を発表した。日本のトウモロコシ輸入も影響を免れない。
新自由主義グローバリゼーションよるサプライチェーンの世界広域化を通じたコストダウン競争は、一方でエネルギー濫費によりCO2排出を極大化して気候危機の最大要因となった。他方で二つの戦争の底流をなし、安定的な物流=食料輸入のリスクを拡大している。二つの戦争はもはや地域戦争・地域における深刻な人道問題の域を超え、大量の爆弾投入によるCO2排出などを通じても気候危機と連動し、地球存続への最大のリスクとなっている。今こそ、地球存続のための停戦の大合唱を草の根から起こすべきときであろう。
農業者や農協は耕畜連携を通じた食料自給率向上(輸入農産物の国産農産物による代替)とみどり戦略への取り組みを通じて気候危機を抑制し、戦争を抑止して、世界的な食料危機の緩和に貢献しよう。
その際、三つの課題のどれかにはチャレンジしたい。一つ目は自らの居住地域にあるか隣接する中山間地域の農地の活用だ。標高400~700mにある農地は北へ1000km以上離れた平地の農地と類似の気象条件となる。「温暖化対応」には自らの地域内にある中山間地域農地の活用が有効である。そこでは耕作放棄地の復旧が重要であり、市民ボランティアに応援を頼もう。二つ目は都市的・平地地域にある耕作放棄水田などの復旧だ。畝を立て湛水機能を復活し(洪水防止)、とにかく市民の参加協力を得て、米だけでなく何でもよいから作物を作ろう。三つ目は学校給食を始めこども食堂支援に取り組もう。NHKニュースでは東京・八王子で朝食の提供を始めたこども食堂が大盛況だと報道された。
消費者・都市住民は何よりも国産農産物を利用しよう。市民農園に応募し、耕作・収穫体験にこどもを連れていこう。そして、農業者・農協の行う上述の活動の支援を行おう。それが、地球存続のための停戦をという大合唱とともに、気候危機阻止への小さな協力となるだろう。
1億人の小さな、小さな一歩が求められている。
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