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輸入基準超え米国産牛肉でSG発動 日米首脳会談前に難題 〈ザル法〉を改めて認識 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年3月18日

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日米間に新たな難題だ。米国産牛肉の輸入量がセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)基準を上回り、18日に発動した。期間は4月16日まで。4月前半の日米首脳会談を前に、通商問題の火種となる可能性が高い。

3年半ぶりだが、期間わずか30日間

牛肉SG発動は、2017年8月以来、3年半ぶり。この時は干ばつで豪州産牛肉が高騰したことが要因だ。17年8月から18年3月まで関税率が引き上がった。牛肉SG発動は、ガット・ウルグアイラウンド農業交渉合意に基づき、1995年、96年の2年連続で発動。さらには2003年8月からBSEで牛急減した前年の反動からチルド肉の輸入が増え発動した。今回で5回目となる。

ただ、改めてSG内容を見ると、極めて"ザル法"だと言わざるを得ない。これまでは四半期ごとのチェックで、一定数量を超えれば年度末まで関税が上がり、国内畜産を守る〈防波堤〉の役割を果たしてきた。まさに〈セーフガード〉の名称通りだった。

セーフガードならぬ〈政府ガード〉か

だが、同じSGでも今回は似て非なるもの。基準超えでも高関税適用はわずか1カ月に過ぎない。TPP交渉時、当時の農水省生産局長に「あんなセーフガードの内容なら意味がない」と問うと、「セーフガードを持ち出すだけでも大変だった。米国はそのものに反対した」と苦労話を打ち明けた。これはセーフガードではなく、政権の言い訳に過ぎない〈政府ガード〉ではないかとも思う。

3年半前は畜産部長に官邸叱責

3年半前の17年8月のSG発動時、安倍政権で米国はトランプ政権発足から半年あまり。当時の農水省畜産部長、大野高志から「政権から輸入数量を翌月に分散させSG発動を回避できなかったのか指摘された」と聞いた。

官邸はトランプ大統領との友好関係を最重視し、SG発動で米国を刺激しないか懸念したためだ。官邸がどこを向いているかを象徴する出来事ではないか。国際協定で決まった事項よりも、日米関係の円滑化を優先する姿勢だ。この時の官房長官は言うまでもなく菅義偉。今の首相である。来月の訪米時に農業問題で、どんな妥協案を持っていくのか懸念する見方もある。

干ばつで米豪逆転

米国産牛肉のSG発動は、2月4日のクローズアップで指摘した通りだ。ただ、発動が3月にずれ込んだのは、輸入業者が関税引き上げを憂慮し、買い控えしたと見られる。

日米貿易協定に基づき、発効2年目の2020年度のSG基準数量は24万2000トン。2月末までの米国産牛肉の累計輸入量は23万3112トンで、基準の96%に迫っていた。残り8888トンとなっていた。末広がりの〈八〉が四つも続く数字だが、日本の畜産にとっては全くめでたくない。同協定発効後、米国からの単月の輸入量が1万トンを下回ったことはない。財務省は17日に3月上旬の輸入量を公表し、累計で24万2229トンと、基準量を上回った。

2020年4月以降の牛肉関税率はTPP11、日米、日EUともに25.8%。SG発動で米国産牛肉の関税率は38.5%に引き上がる。

牛肉輸入量を地域別に見るとTPP11の落ち込みが目立つ。特に大産地の豪州は前年対比で1割減。干ばつによる飼料不足で牛肉淘汰が響いた。香港問題を引き金とした豪州は中国との通商対立でも窮地に追い込まれている。

一方で、米国は、千葉・幕張メッセで3月上旬に開いた国際食料・飲料見本市でも米国ブースでは日本への牛肉をはじめ食肉の売り込みが目立った。

TPP11はSG発動困難

こうした中で牛肉SGを巡り一波乱が起きる。4年前にトランプ大統領就任でTPP協定からの米国離脱だ。構成は11カ国によるTPP11となった。だが、TPP全体の牛肉SGの発動水準はすぐには変更できない。

メンバー国全体の合意に基づいた再協議が必要だ。つまり、巨大な牛肉輸出国の米国が抜けても、SG発動基準が変わらないため、この制度は事実上機能しないと同じになった。

日米貿易協議は最も懸念されたコメを除外、乳製品でも想定内の内容に収まった。問題の牛肉はTPPと同様に最終税率は9%にまで下がる。協定締結後すぐにTPP11と同じ税率に下がるため、厳密には関税削減前倒しの「TPP越え」だが、「TPP水準」とも言える内容だ。

どう出るかバイデン政権

今回の発動に伴い、米国産牛肉SG問題は4月前半の菅訪米でも日米農業問題で話題になる可能性が高まってきた。

ルールに従い基準を超えれば関税率を引き上げればよい。だが日米関係だと、そうすんなりいきそうにない。発動基準そのものへの再協議が始まる。元々、日米貿易協議の牛肉SG基準は低いとの見方もあった。国内畜産を守る観点から日本にとっては有利だが、米国が協定妥結を急いだのは米中貿易紛争の最中だった事が大きい。つまり、日米協議どころではなかったのだ。トランプ・安倍の個人的関係が良好な事も幸いした。

一方で現在は政権交代を経て民主党・バイデン政権。過去を振り返ると民主党政権時に日米通商問題は摩擦が大きくなる。バイデン大統領はどう出るのか。対日強硬論再びか。牛肉SG問題の行方は今後の日米通商問題の火種になりかねない。今後の行方に注視が必要だ。

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