【クローズアップ:「税込み」表示義務化】 米需要減や値下げ圧力も 食品への影響に注視2021年4月1日
4月1日から商品・サービスの値段について、消費税を含めた「総額表示」が義務づけられる。割高感に伴う買い控え、需要減も懸念される。農産物や食品も同様で、場合によっては川上、産地への値下げ圧力も強まる。需給緩和の米への影響も要注意だ。
ユニクロは実質価格下げ
「税込み」義務化に伴い、既に小売り段階ではさまざまな動きが出ている。カジュアル衣料品「ユニクロ」は先手を打った。3月12日から一律9%程度も値下げに踏み切った。これまでは「本体価格+税」で表記してきたが、これまでの本体価格をそのまま税込み価格で販売する。
柳井正代表は30日、民放の経済番組で「税込み価格で販売したら間違いなく売れなくなる。値札改定のコストも膨大となる」と値下げの理由を説いた。過去に手痛い経験があるためだ。以前、原料価格の上昇を反映して値上げし客離れを招いた。コロナ禍による在宅勤務でカジュアル衣料が好調で、一気に攻勢に出た格好だ。
コロナ禍で外食は苦渋の値上げ
コロナ禍で時短営業など苦戦を強いられている外食産業。4月からの「税込み」義務化を機に値上げに踏み切るケースが目立つ。釜揚げうどん「丸亀製麺」は大半の商品で税込み価格を20円から30円引き上げる。来店客が減少している上に、原材料費、人件費、物流コストが上がり、総額表示に伴い価格を見直す。
ただ値上げがさらに客離れを加速する悪循環に陥るリスクもある。それでも、当面の経営維持には「背に腹は代えられない」と、苦渋の切断を迫られるのが実態だ。
キャッシュレス踏まえ
大手コーヒーチェーンは、税込み価格を表示する動きが大半だ。スターバックスは税込み価格を表示する。コーヒー290円(税抜き)は319円に。表示は1円単位で会計時に煩雑にならないかと思うが、スタバ顧客の多くは現金を使わないスマホ決済など、キャッシュレス。キャッシュレス会計が主流となってきた時代を踏まえ、そのまま税込みを表示することにした。
総額表示で価格戦略
総額表示は、経営体力差で企業ごとの価格戦略を反映する。先のユニクロのように実質値下げで「ピンチをチャンスに」と販路拡大を模索する。一方で、体力が続かず値上げに踏み切る外食産業と、明暗分かれる。4月からの「税込み」義務化は、消費者にとって値上げと錯覚する可能性が高い。コロナ禍の消費最前線に異変が顕在化する中で、全体的には消費が一段と冷え込むことも考えられる。
農畜産物消費にどう影響
コロナ禍で、外食や業務需要の落ち込みは、農畜産物の需給に大きな影響を及ぼした。こうした中での総額表示は、農畜産物、食品にさらなる試練を与えるかもしれない。
農水省は30日、コロナ禍で需要減の茶の消費を喚起しようと「日本茶と暮らそうプロジェクト」を始めた。4~6月の新茶シーズンに合わせたものだが、ちょうど「税込み」義務化と同時になった。
総額表示は、ご飯、牛乳・乳製品などコロナ禍で需給問題が深刻になりつつある品目への消費拡大の動きに〈冷水〉を浴びせかねない。
産地へのしわ寄せ警戒
総額表示で、一時的に消費が冷え込めば、次の動きは値下げで需要喚起となる。それではどこのコストを削るのか。ここで警戒しなければならないのは川上、産地への大手量販店などのバイイングパワーを使った値下げ圧力だ。
外食も、値上げで販路が限られれば、コストで食材の原料費を下げる動きも出かねない。
総額表示に伴い末端消費がどうなるのか。ここに注視し、産地しわ寄せの動きが出れば、JAなどに結集して農業者が一致して対応することが有効だ。
特に2020年産の在庫が積み上がっている米への影響が心配だ。総額表示も機に21年産の主食向け以外への転換を確実に進め、出来秋以降の米価を一定水準に維持する対応も正念場を迎えている。
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