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【点検・衆院選農業論戦】コメ与野党激突 食と農「未来図」競え 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年10月21日

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31日の衆院選投開票を前に、米価維持など農業問題でも与野党の論争が激しさを増す。課題は需給対応にとどまらない。官邸主導による自民党農政の検証が欠かせない。農業論争を〈点検〉する。(敬称略)

■既存路線の自民

やや言い方は厳しいが、自民党は集票の甘い餌をまきながら決して車線変更をしない安全運転を心がけているようだ。当面の農業問題に応じながらも、根幹は変えるつもりはない。

19日の公示当日、新聞に「自民党は、地域で頑張る農家の皆さんを全力で支援します」との全面広告を出した。コメ需給では「市場隔離効果を持つ新たな特別枠を設ける」とし、収入減少に対しては「無利子融資を行う」と明記した。
産地の長期的な販売を支援する「米穀周年供給・需要拡大支援事業」を柔軟に対応する。対象の15万トンを当面は販売しないため、米価浮揚への市場シグナルにはなる。ただ、これは問題の〈先送り〉に過ぎないとの指摘が強い。無利子融資にしても、結局は借金だ。

■緊急手当てが外科手術か

これで稲作農家の不安解消はできるのか。要は傷口の止血、包帯の緊急手当てか仕組みの見直しを含む外科的手術が必要かである。
「政権選択」である衆院選でこそ、農政の在り方を議論し、今後の政策指針への国民、地方、農業者の声を聞くべき時だろう。

全国農政連の各党質問への回答を見たい。

◎各党に聞く農政課題
・自民党
水田フル活用予算を恒久的に確保。コロナ禍需要減は市場隔離効果を持つ特別枠。
規制改革は地域や現場の声を十分踏まえて対応

・立憲民主党
過剰在庫を政府備蓄米の枠を拡充し市場隔離し需要促進。農業者戸別所得補償制度を復活し、収入保険と一体的に実施。生産調整は政府主導に戻す。
この間の官邸農政による農林漁業改革を再度検証
※自民、立憲2大政党のみで主にコメ、規制改革部分

自民、立憲の二つの政党だけを取り上げても、与野党の争点が浮き彫りとなる。

野党はコロナ禍コメ過剰分の完全隔離を求めている。むろん、自民党が主張するように現行備蓄米制度に需給調整機能はない。それを適正在庫水準見直しも含め、コロナ禍の緊急措置として求めているのだ。

次に注目するのは、9年近い安倍、菅政権で現場軽視の官邸農政による規制改革の対応だ。岸田文雄首相は当初、規制改革推進会議の改組などにも含みを持たせていたが、自民内部の改革派の巻き返しもありトーンダウンしている。野党側は官邸農政の検証、抜本見直しを求めている。

コメの生産調整を再び政府主導とするかも再検討すべきだ。このままでは、実効性のある転作はますます難しくなりかねない

■市場隔離の是非

むろん需給実態無視の安易なコメ市場隔離は、かえって過剰を招き膨大な財政負担も生じかねない。過去の反省も踏まえ農水省が最も警戒する点だ。

だが、コロナ禍の緊急事態を直視すれば話は別だとの論理も成り立つ。

コメ需給問題に詳しい冬木勝仁東北大学大学院教授は「飼料用米などコメで生産調整を行うのは限界に近い」とした上で、「コロナ禍という異常事態への緊急的な措置として、国による数年間棚上げ備蓄が必要だ」と見る。

問題はコロナ禍を除いても、毎年、10万トン程度のコメの需要減に歯止めがかからないことだ。出来秋の作柄で一喜一憂していたのでは米価維持は難しい。一定程度、市場隔離しながら、水田農業の将来をどうするのか。与野党で論争を深めることが欠かせない。

■産地危機感受け農相に直談判

コメ概算金引き下げに伴う産地の危機感を受け、自民党内でも一段踏み込んだ需給対策強化を求める動きが出ている。

遠藤利明、鈴木憲和ら山形県選出の農林議員はコメ対策で金子原二郎農相に直談判した。要請書には政府備蓄米買い入れ枠拡大を含めた運用改善、ナラシ対策未加入農家への救済措置、コロナ禍の影響を受ける稲作農家らへの「特別給付金」創設も盛り込んだ。問題意識は野党とほぼ同じだ。遠藤は、今回の衆院選責任者の党選対本部長を務め、これまでの一連の国政選挙で野党が勝利した「東北の乱」に至る現場生産者の不満を受け止めたとも見られる。

■食の社会的貢献

岸田政権は新自由主義からの転換を打ち出した。行き過ぎた競争と規制緩和は、格差と分断を生み出したとの反省からだ。

これを農業、特にコメ問題に当てはめ、課題解決の手法を探れないか。

市場から隔離する特別枠15万トンは、中食・外食事業者の新メニュー開発、子ども食堂での麺からご飯に切り替える際に提供するなど、新規需要への充当を条件付け、既存市場への影響回避も行う。子ども食堂へのコメ保管料は全額補助する。

これを契機に、コメをはじめとした食の社会的貢献と安定供給先としての事業モデル構築し、フードバンクを制度化し支援できないか。

子ども食堂などは小口で分散し、寄付など社会貢献活動の一部にとどまっているのが現状だ。農水省の助成事業もあるが、コメで数十トン規模に過ぎない。大量のコメを保管する場所もなく、数量が限定されるからだ。一方で経済格差は広がり、食の提供は命をつなぐ活動になりつつある。ここにコメを安定的に提供できる仕組み構築を進めることができれば、チャンスロスを少なくし、需要拡大にもつながる。

米卸などがストックポイントを持ち定期的に広域な子ども食堂に提供し、保管料は全額補助する。「社会貢献米」などの形で、数万トン規模の需要が確保できれば、需給改善にも役立つ。手軽に食せるように助成対象にパックご飯も加える。

当面の市場隔離も重要だが、緊急装置に過ぎない。最も必要なのは安定的な供給先確保だろう。衆院選を通じ、各党がコメ需要拡大の提案も競う論争を行うべきだ。

■経済安保に食料を

膨脹主義を強める中国に対応する形で、経済安全保障も論議となっている。ここに食料問題を組み込むべきだ。食料安保は食料国内自給率向上と表裏一体の関係にある。

10月7日のJA全中理事会後の会見で中家徹会長は衆院選に関連し「コメ需給問題も大切だが、これからの食と農をどうするのかの視点でもっと議論を深めるべきだ」と指摘した。

自給率37%と過去最低水準まで落ち込んだ日本の食と農をどうするのか。

立憲は選挙公約で「経済安全保障・食の安全保障」を一体的に明記した。経済安保に食と農を位置づける視点も、今後の与野党論争では必要だろう。

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