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【海外ニュース】弱い立場の農家が拳 グローバリズムへの反撃世界各地で(1) 農業ジャーナリスト・山田優氏2024年2月28日

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欧州でのトラクターデモなどの報道が最近目に付くようになってきた。降りかかる火の粉は自分で振り払う欧米人気質などもあるようだか、背景には何があるのか。世界の農業情勢に詳しい農業ジャーナリストの山田優氏に「世界に広がる農家の抗議活動」として寄稿してもらった。

欧州各地に広がるトラクターデモ欧州各地に広がるトラクターデモ

農家の反乱――。抗議活動の波が欧州を始めとする世界各地で広がる。買いたたかれる農産物、市場開放、官僚主義、環境規制の無理強い。怒りの対象はさまざまだが、効率や競争を強いるグローバリズムに対する反撃という点では共通している。

欧州に広がるトラクターデモ

米国ワシントンで発刊されるフォーリン・ポリシー誌(電子版)に興味深い記事が掲載されている。同誌は外相時代の岸田文雄首相が投稿したこともある権威ある雑誌だ。それによると欧州で農家の抗議活動が行われていないのは「オーストリア、デンマーク、フィンランド、スウェーデンのわずか四つ」だそうだ。EU加盟国だけでも27ある欧州のほとんどの国で農家が街頭に繰り出して声を上げていることになる。

数十台から場合によっては数百台のトラクターが大都市に繰り出す。高速道路いっぱいに広がる車列で、一帯は激しい交通渋滞に陥る。家畜ふん尿をまき散らしたり、タイヤや麦わらを燃やしたりするなどの手荒い活動もある。

市民の移動や輸送はもちろん、広範な社会生活に打撃となるが、「私たちの声を聞いてくれ」という農家の叫びは、一般市民からの大きな反発を受けていないように見える。

抗議活動が先鋭的なフランスは、怒れる市民が武器を取って王政をひっくり返した革命の歴史のある国。日本のようにストライキやデモを「迷惑だ」ととらえず、路上での抗議を市民の権利として受け止める風潮がある。欧州各国のメディアは農家の声を詳しく紹介し、背景にある苦境を解説する。

世界各地で広がる農家の抗議活動

英国の首相 農家励ます

「私たちはあなたたちの味方だ。できる限りのことをする」

英国のリシ・スナク首相は2月23日、地方の保守党の会合周辺で抗議活動をしていた農家代表と面談し、支持を約束した。野党労働党の農業政策を意識した文脈での発言だが、農家による抗議活動を堂々と励ます姿からは成熟した民主主義を感じる。

経営の苦しさ訴える

欧州の農家が共通して訴えているのは、経営の苦しさと、一層の支援の必要性だ。

EUのヤヌシュ・ヴォイチェホフスキ農業担当欧州委員(農相)によると、2020年の農家戸数は900万戸で、2010年から300万戸減った。欧州は手厚い農家支援で知られるが、共通農業政策の柱は農地面積に応じた補助金。規模が小さい農家ほど恩恵が及ばず、離農するところが相次ぐ。

一方でブラジル、アルゼンチンなど農業大国が加盟する南米南部共同市場(メルコスル)とEUとの自由貿易協定交渉は、フランス政府などが難色を示しているものの、協議は継続中だ。合意されれば南米からの安価な農産物輸入に道を開くとして農家は強く反対している。

欧州東部ではウクライナから流れ込む安価な穀類への怒りが大きい。EUはウクライナ支援の立場から、東欧を通過して欧州外などに運ぶことを前提とした穀類輸出を進めている。ところが、ウクライナのジャーナリストによると、悪徳業者によってポーランドなどで一部が横流しされ、現地の農産物価格を大きく押し下げているという。

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