【海外ニュース】弱い立場の農家が拳 グローバリズムへの反撃世界各地で(2) 農業ジャーナリスト・山田優氏2024年2月28日
【海外ニュース】弱い立場の農家が拳 グローバリズムへの反撃世界各地で(1) 農業ジャーナリスト・山田優氏 より
農業ジャーナリスト
山田優氏
環境規制に 現場を無視
EUが重視している環境規制強化にも農家は反発する。生物多様性や温暖化対策として導入される休耕や植林の義務づけ、家畜頭数の規制、農薬使用量の大幅な削減などに「農業現場を何も知らない官僚が、勝手にルールを押しつけている」という不満だ。
自由貿易を促進し、競争を通じて強い農業をめざすグローバリズムは、各地で弱い立場の農家を弾き飛ばした。その矛盾が今回の世界規模の抗議行動の背景にある。
米国でも反省の弁
世界中でグローバリズムをけん引してきた米国内ですら、「やり過ぎ」を見直す声は広がっている。
米農務省のトム・ビルサック長官は昨年末の声明で「長い間、規模を大きくするか、それとも撤退するかを農家に求め過ぎた。中小農家が役割を果たす地域社会の弱体化をもたらしてしまった」と素直に反省の姿勢を見せた。今年の選挙戦を意識した発言とみられるが、日本の農相にも同様の発言をしてほしいものだ。
大規模農業のイメージの強い米国でも、農家の半分は販売額が日本円で150万円に満たない。大規模経営に比べると国の支援は小さく苦境に直面する農家も多い。
農家の不満をすくい取ろうとしているのが欧州内で存在感を増しているポピュリズム、右派政党だ。移民排斥や国際協力予算の削減などを掲げ、近年選挙で躍進している。今年は各国や欧州議会で重要な選挙が相次ぐ。オランダでは昨年、2回の国政選挙で環境規制に抵抗する農家の支持を受け、右派政党が議席を大きく増やした。
グローバリズムへの反感を強める農家への働きかけを一層強めるものとみられている。
インドでは改革反対
これはドローンの新しい農業利用の一つなのか。インドの警察は、2月に各地で繰り広げられていた農家の抗議行動を阻止するために、上空から催涙弾を落とし始めた。
地元メディアの動画を見ると、ドローンは数十メートルの高さから催涙弾を発射。地上にぶつかる直前から白い煙を周辺にまき散らした。抗議していた農家が慌てて逃げる様子が収録されている。
使われたのはパキスタンなどとの国境警備のための監視用ドローン。こうした抑圧警備に使われたのは全国で初めてだと指摘している。通常の警備では多数の農家を抑えきれないという判断があったようだ。
インドは2020年に改革色の濃い農業関連3法が成立した。規制緩和、販売の自由化を通じて競争を促す内容だが、公的支援を減らされるとして農家は強く反発。1年間、全国で抗議デモが盛り上がり、与党のモディ政権が法律の撤回に追い込まれた。
農業を巡って再び緊張感が高まったのは、政権が改革を諦めていないのではないかという農家側の不信感が高まったからだ。相次ぐ気象災害で農家の経営が悪化していることも拍車を掛けた。一連の激しい抗議行動では死者も出ているが、収束の見通しは立っていない。
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